利害一致婚の妻に、理外の初恋しました

あっぴー

第1章 入籍への最速コース

第1話 出会ったその日に求婚

俺は谷川颯たにがわはやて

つばめ商事第二支部に入社、同期と研修を受けている22歳だ。

気になる同期は、浅間瑞穂あさまみずほさん。

その理由は、彼女が常に大量のメモを走らせ、的確な質問で上司を唸らせており、働く前から優秀さを漂わせているから


……ではなく。


まったく着崩していない、パリッとした純白のYシャツに漆黒のパンツスーツ姿でもわかる、

スラリと伸びた美脚から急カーブを描く、キュッと上を向いたボリュームのあるヒップ、引き締まったウエスト、そしてYシャツのボタンを今にも突き破って飛び出してきそうな豊かすぎるバスト

……そう、ダイナマイトバディーの持ち主だからだ!


昼休憩。

「ふう、終わった終わった、緊張しましたねえ」

同期のもう一人の女の子、小町さんが大きくノビをした。

栗色のミディアムヘアが愛らしい。

「浅間さん、昼ご飯ご一緒しませんか?」

「なぜ同期は他にもいるのに、私だけ、なのですか?」

「えっ?

 それはもちろん……女の子同士だから……」


「なぜ、女だなんて生まれつきのどうしようもない理由だけで、私だけが、休息をし、英気を養い、余れば読書で自己研磨もできる貴重な時間をあなたに差し出さないといけないのですか?

 本当に同じ席で食べるというだけなら構いませんが、そうではないのでしょう?」

「いや、親睦を深めたいなあと思って……」


これはチャンスだ!

「そうだね、同期と親睦を深めたいなら男も女もないよ。

 浅間さん、僕はあなた自身に興味があります。

 半日見て分かった、あなたは優れているっ!」

「まあ」

浅間さんの能面の表情が、そうでしょう、と得意げなものに変わった。

よし、能力を褒められたと思ってくれたみたいだな

……興味あるのは、他の優れた所なんだけど。

「僕も優れた人の近くで良い影響を受けて、より優れた人間になりたい!

 お話お聞かせ願えますか!」

「そういうことなら」


「まっ、待ってよ!

 あっ、あんな言い方してしまいましたけど、私も浅間さんに興味があるんです!」

「なるほど、では3人で」

なんだこいつ?

このままじゃ俺に浅間さん横取りされたみたいになるから、引っ込みがつかなくなってムキになってんのか?

……ライバル?

それこそ今時、男も女も関係ないもんなあ。


「おっと谷川、両手に花はずるいぞ?

 僕も混ぜてもらおうか」

俺達の研修をしてくれている那須野なすの係長だ。

この人も他の同期も、浅間さんより、可愛らしくて愛想のいい小町さんの方に興味がありそうで助かる。

とはいえ、研修が終わって会社全体に混じったら浅間さん狙いの男が出てくるかもわからないから、俺としては今のうちにリードしておきたいところだ。

「そうですね、3人で4人席を占領するのは合理的ではないし、会社のお話が聞ける点でも、係長もいらした方がいいですね」

なるほど……

浅間さんの行動原理がわかってきたぞ!


「社食、お安いですね。

 ご飯にお惣菜3つで500円前後ですか。

 同じような値段のうどんもあるし、今時ありがたいですね」

ほんと、浅間さんにぴったりで、彼女は絶対毎日にここに来そうだな。

俺も毎日ここにしよう……

しかし、嬉々としてスイーツをつける小町さんと、そっちには全く目もくれない(だからこそこの美ボディなのであろう)浅間さん

……そりゃ、女だからって同一視されても、って思うわな。


「係長、右奥へ」

「こんな所でも上座を意識してるの?

 ほんと、浅間さんは真面目だねえ」

「では、私は係長のお話を聞きたいので」

浅間さんが係長の向かいに座ったので、俺はすかさず彼女の隣を取った。

「こ、この配置はおかしくない?」

「何もおかしくないさ!

 まさか小町さん、この後に及んで性別が〜とか言わないよね?

 令和の時代にそんなこと言ってちゃダメだよ?」

必然的に小町さんが隣になったので、係長も大満足の上機嫌、配置を変えさせないことに必死だった。


うおっ……

隣で見ると尚更、迫力のメリハリボディだぜ……

「浅間さんて、何かスポーツやられてたんですか?」

思わず聞かずにはいられなかった。

「ええ、学生時代は空手を少々、今でも仕事のパフォーマンスをより良くするために、ヨガに通っています」


「素晴らしい!」

気がつくと立ち上がって、浅間さんのワインレッドの四角い眼鏡の向こうの、意志の強そうな瞳をまっすぐ見つめていた。

「まさに素材が良くて、なおかつ努力できる神遺伝子の持ち主っ!

 あなたのような方こそ、若くして結婚し、多くの遺伝子を遺すべきだっ!

 全力で支えますので、僕と盤石な家庭を作りませんか!」

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