無能のMちゃん(2)

【小学生の女の子に恋をしたJK】

「どうもこんにちはぁー。JS(女子小学生)に恋をしているJK(女子高生)です。JSのお兄さんと付き合えることになったので、今日から記録として動画投稿していこうと思います。動画自体初めてなので、口下手なところもあると思うんですけど、ご了承くださーい」


【小学生の女の子に恋をしたJKのvlog】

 私はJSのことが好きなのですが、お兄さんと付き合ってるので、彼氏を口実にJSに会いにいきます。彼氏は、妹と遊んでくれる良い彼女認識なので、何も疑われてないと思います。


【小学生の女の子に恋をしたJKがゲーム実況】

「Mちゃんがね、このゲーム好きなんですよ。本当にね、もうずっと可愛いMちゃん。会うたびに可愛くなってて、他の小学生はみんなただのクソガキに見えるのに、Mちゃんは天使に見える。ゲームのキャラクターでいうなら、この子かなぁ。うん。でもMちゃんの方が全然可愛い」


【小学生の女の子に恋をしたJKが地球グミ食べながら雑談する】

「地球グミね、今度Mちゃんと食べるんですよ。約束してて。もうね、小さいお口に地球グミ入れること考えるだけでお米三食行ける」


【小学生の女の子に恋をしたJKの初配信】

「こんにちはぁ〜。初ツイキャス配信で〜す」


 >気持ち悪い

 >犯罪者

 >お巡りさんここです

 >小学生が恋愛対象ってこと?


「は? なわけないじゃん。違うって。Mちゃんが恋愛対象なの。小学生なんかみんなマセたクソガキじゃん」


【小学生の女の子に恋をしたJK、100の質問】


 >なんでMちゃん好きなんですか?


「一目惚れです! 近所歩いてる時に見つけました〜!」



【チャンネル名変更します】

「Mちゃんが中学生になったのでチャンネル名変えます。この動画もしばらくしたら非公開にするのと、動画の方向性も変わると思います。Mちゃんにバレちゃうので」


【ユウキのASMR】

「耳かき堪能したい人、ゆっくりしていってね」




(*'ω'*)





「……落ち着いた?」

「うん」


 ミイコが泣き腫らした顔を上げた。


「ごめん」

「ううん」

「……」

「ミイ、座ろっか。あ、お茶飲む? ミイコの好きなお茶あるよ」

「え……」

「ミイ出て行ってから寂しくなっちゃって、飲んでたの」


 ミイコが私の顔をじっと見つめてきた。ああ、可愛い。


「はい。熱いから気をつけてね」

「ありがとう……」

「おやつもあるよ。ミイ、チョコレート好きだったでしょ?」

「ありがとう……」

「大丈夫だよ。ゆっくり飲んで良いし、食べて良いからね。ミイのペースでいいからね」


 ああ、可愛い。罪悪感で自分の首を絞めていくミイコが、世界で一番可愛い。


「もうマッチングアプリやっちゃダメだよ?」

「うん……」

「変な男に捕まっちゃダメだからね?」

「ユウちゃん」

「なーに?」

「……やり直したい……」


 うん。わかってた。


「ミイ、嬉しい」


 傷ついたミイコを抱きしめる。


「寂しかった」

「ごめん、ユウちゃん、ごめんね……」

「ううん。ミイが戻ってきてくれて嬉しい」


 ミイコはぽんこつだから、私が守ってあげなくちゃ。


「離れてた分、一緒にいようね」

「うん。……一緒にいる……」


 当たり前だよね。

 私以上のスペックの人間とミイコが出会えるわけないもん。


 高級マンション住みで、働かなくてもお小遣いもらえて、なのに愛してもらえて、家事洗濯掃除何もできない。ここまで無能に育ってしまったミイコが、今更ばりばり動けるわけないよね。右も左も、前も後ろも、私がその道を塞いで隠して、一生懸命、可愛いミイコを子供の頃から大人になるまで、人間として無能に育てたんだから!


 しょうがないよね!

 戻ってくるしかないよね!


 ミイコにとって頼れるの、私しかいないもんね!


「ミイ」


 大切な大切なミイコを、大切に抱きしめる。


「ずっと一緒にいようね」

「……うん」


 無能のミイコが頷く。


「ミイは、ミイのままでいいんだからね」

「……ありがとう。ユウちゃん」


 ミイコが涙を落とした。


「大好き……」


 ああ、幸せだなぁ。


 心から、そう思った。きっと、これからもずっと。



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