テーマ:「敬老」

 おばばのご飯が好きだ。近所のおばあさんが作ってくれる羊羹が好きだ。おじじが偶に作る漢飯おとこめしが好きだ。

 父が作るガトーショコラが好きだ。

 実家を離れて何年になるだろうか。最後に帰ったのはコロナ前で、ソレからもう何年と実家近くにすら寄っていない。

 だから帰ろうと思った。元気なのは知ってる。今や世界に距離はあって無い様なものだから。でも、機械越しにハグはできない。家族が作ってくれるできたてのご飯は食べられない。

 なんとなく、チャイムを鳴らす。出てきた父は驚いた顔をした後、「鍵は?」と訊いてくる。

「ある。でもなんとなく。」

 呆れた様な溜め息の後、「ガトーショコラ、もう出来てるから食え。」と続けられる。でもその前に。

「これ、数年分のプレゼントありがとう。」

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