HIGH SCHOOL 禁欲 DAYS
@nakayosikoyosi
禁欲の神、降臨
翌朝、新聞配達の音で目が覚めた。
……いや、正しくは「起きていた」と言うべきか。
意識はぼんやりしてたけど、男子ってのは寝起きに勝手に目覚めてしまうものなんだ。
色と、な。
今日は高校の入学式。 俺――乾政宗(いぬい まさむね)は、新しい出会いや青春に、ほんの少しだけ期待をしていた。
……が、冷静になって考えると無理ゲーすぎる。
中学の三年間、女子とはろくに喋らず、趣味もない。 そんな俺がまともな高校生活を送れるわけがない。
……いや、でも、俺には"ある賭け"がある。
入学式。 人混みの中、ざわめきと緊張が交差していて、
誰かの肩がぶつかる。笑い声、ため息、誰かの呼び声。 いろんな感情が混ざって、まるで校庭全体が脈打ってるように感じた。
リュックが誰かにぶつかった。
「……っと」
そのとき――
「ごめんなさい…!」
静かな声が喧騒の中に溶け込んで、俺は振り返った。
そこにいたのは、肩までの黒髪を揺らす、
いかにも大人しそうな女の子だった。 控えめな雰囲気に、落ち着いた丸眼鏡。俺はこの一瞬で彼女の虜になってしまった。コレが一目惚れてやつかと思っていると
ほんの少しうつむきながら、申し訳なさそうにこっちを見ている。
「あ、全然大丈夫だよ」
…って、もうちょいマシな返し方なかったか俺。 素っ気ない受け答えしかできない自分のコミュ力の無さが恨めしい。
女の子は気まずそうに一瞬間をおいてから、思い切ったように口を開いた。
「……あの、お名前……教えてくれませんか?」
急に名前聞かれ少しきょどりが出たが、
聞かれたからには答えなきゃならない。
「えっと、乾政宗(いぬいまさむね)。君は?」
女の子は少しだけ笑って、俺を見上げながら言った。
「浅草寺流華(せんそうじ るか)です。よろしくね」
――眼鏡っ子、悪くない。前髪で顔が隠れてるがこれは超可愛いぞ、しかも推定eカップ……いやエf、そんなこと考えてる場合か。
「よろしく」
そう返したあと、コミュ症だから口説けるわけもなく特に何も起こらず、入学式は無事に終わった。
──時は遡って、約1ヶ月前──
ある夜、夢の中に妙な存在が現れた。
神様のような、仏様のような……いや、もはや何かよくわからんモヤっとした存在。
「“禁欲”をせよ……さすれば願いが叶うだろう」
なにこの電波夢。寝る前に変な動画でも見たか?
気にせずスルーしていたら、また別の日にも同じヤツが夢に出てきた。
「“禁欲”を行えば……運命の人に出会えるだろう……」
うさんくせぇ……。
また無視して寝ようとした瞬間、そいつが声を荒げた。
「貴様、無視をするな! 我を誰だと思っておるか!」
「いや、誰すか?」
「ごほん……わしは、かの有名な禁欲の神じゃ」
マイナーすぎて聞いたことねぇよ。
「いいか、お前は今日から禁欲をしてもらう」
そう言われたところでピンとこない俺だったが、
神(仮)が続けて驚きの事実をぶっこんできた。
「こちらの手違いにより、お前の身体は“禁欲”を破ると“死”んでしまう体になったのだ」
はあああ!?
試しに神の前で軽くG行為っぽい動きをしてみると……
バチィィィンッ!!!
「痛っッッ!!? なんだこれぇぇぇ!?」
全身に電撃が走るような衝撃。マジでヤバい。
「すまん、完全にミスじゃ。だがその代わり、“禁欲”を続ければ願いが叶うようにしておいた。使わないければどんどん加算される仕組みじゃ」
「勝手に何してくれてんだよ!!!」
ブチギレながらも、俺の目はふと自分の手元にある“何か”に気づいた。
手の甲に、半透明のゲージのようなバーが浮かんでいた。 説明によると、これが“禁欲ゲージ”。一定まで溜まると願いをひとつ叶えられるらしい。
……そのとき俺は、ひとつの天才的ひらめきを得た。
「これ……エロいことに使えんじゃね?」
というわけで、それ以来、毎日欠かさず行っていた
“ルーティン”を完全封印。
代わりに瞑想や筋トレで気を紛らわせ、入学式の日まで黙々とゲージを溜め続けたのであった。
初めての投稿なのでアドバイスなどがあればください!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます