第5話 勇者パーティ崩壊

 フォボスさんに礼を言って、俺たちは店を出た。

 投銭のおかげで美味しいメシにもありつけたし、リーナの笑顔も見れたし――大満足だ。



 無事に帰宅。

 宿屋へ戻りそのまま部屋へ戻る。そして、装備を外してふかふかのベッドにダイブ。



「う~~~ん、最高」

「わぁ、ベッドがこんなに柔らかいなんて……」


「なんだ、リーナはこういうベッドは初めてか?」

「はい。わたしのいたエルフの里は貧しくて、わらの上で寝ていましたから」



 わ、わら!?


 いくらなんでも文明レベルが低すぎな気が。エルフって、そんなに裕福じゃないのか。でもまてよ……魔法が使えるんだし、そんなに不便はないと思うけどなぁ。


 なぜだろうな。

 リーナの里には呪いでも掛けられていたのだろうか。



「そうだったか。このベッドなら寝心地もいいし、ぐっすりだぞ」

「いい夢が見られそうですっ」



 今日のところは寝よう。

 明日、ダンジョン配信を再開する。



 ◆



 ――次の日。


 目覚めてすぐに宿屋の外で騒音がした。……なんだ、誰かが騒いでいるような。


 起き上がって装備を整えると、リーナも眠たそうに目を擦りながら希少。昨晩はあまり意識していなかったが、パジャマが姿が可愛いな。



「おはよう、リーナ」

「おはようございます、ライさん。どうかしたのですか?」


「ちょっと外を見てくる。ここにていくれ」

「……わかりました」



 宿屋の外へ出ると、そこには見覚えのある顔がいた。あれは、マックスだ。それにレイン。……あと、男プリーストのロズウェル。みんな勇者パーティとして活動し、ダンジョンへ潜っていたんじゃないのか。

 昨日時点では、配信してたように思えるが。



「……あんたのせいよ、マックス!」

「違う。あのバカ勇者のライのせいだ。アイツが俺たちに嫌がらせしたんだ」



 なにか言い合っているようだが、なんでこんなところで。



「……」



 立ち尽くしていると、ロズウェルが俺に気づき「おい、ライだぞ」と言葉少なに反応を見せた。相変わらずテンションが低く声が小さい。



「ライ! あんた、よくも!」

「なんのことだ。てか、レイン。お前たちは勇者である俺を追い出して満足していただろ。今更なんだよ」


「私たちの配信が停止しちゃったのよ! アンタのせいでね!」

「なに?」


「どうしてくれるのよ!!」



 いやいや、知らないし。てか、追い出されてから接点などほとんどなかったわけで……コイツ等に復讐しようとも思わなかったし。



「なんのことだよ。つか、もう関係ないんだから勝手に勇者パーティやってろよ」

「んだとォ!!」


 俺の発言にキレるマックスは、盾を俺に向けてきた。コイツは“盾役”であり、盾使いである。つまり攻撃方法も盾なのだ。


 呆れていると、マックスが盾で攻撃してきた。もちろん、俺は回避。コイツの攻撃は読みやすい。



「……っぶねえな。いきなり何しやがる」

「ライ、俺はお前を勇者とは認めん。真の勇者はこの俺だ!」



 ブンブンと盾を振り回す。見事な盾裁きだが、俺には遠く及ばない。まず、動きに無駄がありすぎる。


 聖剣を抜き、瞬間に盾を弾き飛ばす。



「てやッ!」


「…………ぐ、ぬ!」



 戦いに発展していると、周囲に野次馬ができていた。いつの間にか数十人と観客が。



「おい、あれ見ろよ」「勇者ライと……」「あれ、勇者パーティじゃね?」「マックスとかいるじゃん」「そや、マックスって勇者パーティを乗っ取ったって聞いた」「ああ、ライはひとり身なんだっけ?」「いや、今はエルフと一緒のはずだ」「勇者パーティのダンジョン配信って規約違反で“停止”になったんだよな」「ああ、そうそう。勇者がいなくて」「勇者パーティのはずなのに、勇者がいないんじゃ詐欺だわな」「そういうことか」


 ――そうか、勇者パーティで登録していたから、それがダンジョン配信の規約に触れたというわけか。


 マックスは、それに気づかず俺を追放したせいで停止を食らったわけか。自業自得だな。


 収入源を失い、今やコイツ等は路頭に迷う寸前ってわけかな。まあ、普通に狩りをして稼ぐ方法もあるが、配信の方が楽チンだしな。




「くそ、くそ、くそがああああああ! ライ、お前を倒して勇者の称号は俺がいただく!!」



 マックスの目は血走っていた。必死すぎて俺は哀れにすら思った。つか、称号とか言ってしまう時点で終わっている。

 一方のレインもずっと発狂していた。



「マックス、そのバカをさっさと殺ってしまいなさい!!」



 かつての幼馴染の影はない。もうレインは、子供のころの面影すらない。……そうか、残念だ。

 俺は本当にレインのことが好きだったのにな。

 ガキの頃は将来の約束もしてくれた。

 なのに、この仕打ち。


 あまりに残酷。


 だが、今の俺にはリーナがいる。

 守るべき存在がいるのだ。


 もうコイツ等に未練などない。



 聖剣の魔力を込め、俺は水属性魔法を放つ――!



「ウォーターボール!」



 数百個の水の塊がマックスたちに襲い掛かり、激突。水とはいえ、魔力のこもったものだ。硬さは岩に匹敵する。

 当たれば体を貫く場合もあるし、そうでなくても骨折はする。



「ぐあああああああああああ…………!」

「きゃああああっ!?」

「うああああああああああ!!」



 三人ともかなり後方へ転がっていき、噴水に激突。これで終わりだ。

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