第21話 ガーディアンゴーレム

 黒い体のそれは、ブンと音をたてながらカタリナの前まで飛んできた。

 大きさはカタリナより頭一つ分位大きいだろうか、ツルツルのボディには長い手足がついていて、手から長くて光る剣のような物が伸びている。

 背中には青紫の羽が生えていて、高速で動かすことで空を飛べるらしい。


 普通の女子なら、そんな物が目の前に現れたら悲鳴の一つでもあげそうなものだが、カタリナはキラキラした瞳でそれを見た。まるで、新しい玩具を見つけた子供のようだ。


「あなたもゴーレム? なかなか強そうだね! 私じゃ勝てそうにないわ!」


 素手ではまず敵わない。武器があっても、空を飛んでるから勝てないだろうな。


 カタリナはこの見るからに強そうなゴーレムをどうやったら倒せるか想像した。




「カタリナさまぁーー!!!」


 モントが弾丸のような速さで飛んできた。


「もう!どうしてこんな所にいるのですか!? 危ないではないですか!!」


 モントはぷんすかと怒っている。


「駄目だった?」


「駄目です! 病み上がりなのですから、冷たい風に当たってぶり返したらどうするのですか! もう、今日は屋敷の中で過ごしてくださいませ!」


「えぇ! 私、この子と遊んでみたいよ」


 カタリナは塀の上を飛んでいる黒いゴーレムを指差した。


 モントの白い顔が青くなった。


「な、何を言っているのです!? これは、ガーディアンですよ! 殿下が対帝国軍用に開発した、最強のゴーレムです! 生身の人間が遊ぶ物ではございません!!」


「え!? これが、あの帝国軍を討ち破った兵器ってこと!?」


 カタリナは益々この黒いゴーレムが気になった。


「ささ、ここから降りてくださいませ。カタリナ様の為に調理ゴーレムがパイを焼きましたから、冷める前に戻りましょう」


「……分かった。今日の所は折れてあげる」


 カタリナは塀から木にジャンプして、猿のように木を降りた。


「またね!」


 カタリナは地上から、ガーディアンに向かって手を振ったが、ガーディアンは無反応で飛び去ってしまった。






 カタリナは次の日もガーディアン見たさに、モントの目を盗んで塀まで来たが、次の日には塀の近くにある木は全て切り倒されていて、塀には登れなくなっていた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る