第10話 追放からの急な出発
そして話は第一話に戻る。
結婚式が先程終わったばかりだというのに、カタリナはクルトに追放を言い渡されてしまったのだ。
思い返せば、結婚式の時のクルトはカタリナを嫌がっていたような感じもする。ヴェールを上げる時のクルトの顔は嫌そうな顔だった。
カタリナはクルトの顔を思い浮かべながら、咳込んだ。風邪が酷くなってしまったようだ。少し体も怠いような気もする。
「カタリナ様、シートベルトを緩みのないようにお締めください」
行きに乗った飛空艇よりずっと小さな飛空艇にカタリナは乗せられていた。隣にはモントもいる。運転席に座ったメルクールが振り返って、カタリナのシートベルトを確認する。
「カタリナ様、お気を落とさないでくださいませ。バデンは空気が綺麗で、温泉もあるんですよ! シュテルンで一番有名なリゾート地ですので、カタリナ様も楽しく過ごせると思います。体調もきっとすぐに落ち着きますわ」
「ごほ、ありがとう、モント」
そうだ。ここは前向きにとらえてみよう。
クルトと離れて暮らすということは、心配していた「クルトと仲良くできるのか問題」を考える必要がなくなるということではないか。
モントの話では、バデンは良い所のようだし、そこでゆっくり過ごせるというのは、むしろ喜ばしい事かもしれない。
そんな事を考えている内に、飛空艇は軽やかに空へと飛び立った。
「カタリナ様、30分程でバデンに到着致しますので、ゆっくりお待ちください」
とメルクール。カタリナの顔を見て、パチンと器用にウィンクした。
「ありがとう、メルクール。少し疲れてしまったから、寝ますね」
カタリナは飛空艇の椅子に寄りかかり、目を瞑った。熱も出てきたのか、寒気がして体が辛かった。
※
どこか遠くから声がした気がした。
「大変! 熱が高いわ! 私が、カタリナ様を寝室までお運びしますから、メルクールはマースを呼んできて!」
何かにふわりと持ち上げられて、運ばれている気がする。子供の頃、母に抱かれながら眠りについた日の事を思い出して、カタリナは安心した。
カタリナはとても幸せな夢を見た。
誰か分からなかったが、カタリナの額の汗を拭き、氷嚢を新しい物に替えてくれた。
背格好からして、二人の兄のアランかエドガーのどちらかかもしれない。幼い頃から、カタリナが風邪をひくと、家族が交代で面倒を見てくれたから、そんな気がした。
「兄様……ありがとう……」
カタリナは夢の中で、そう呟いた。
「カタリナ…… すまなかった……」
カタリナの世話をする人物は、そう返事した。
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