君が導く選択の書―Reach the true ending―
αβーアルファベーター
始まりの予感
第1話 灰色の空の下で
◇◆◇
空は今日も、濁った灰色をしていた。
村を覆う雲は幾日も晴れず、
陽が差すことは滅多にない。
彼は、村の広場に立ち尽くしていた。
手には、
祖父から譲り受けた古びた剣。
刃は鈍く輝き、幾度もの戦いをくぐり抜けた痕跡が刻まれている。
村の人々は、
彼を遠巻きに見守っていた。
「本当に行くのか」
そう問う声が、
あちこちから聞こえてくる。
この村から外に出る者は少ない。
外の世界には、名も知らぬ魔物や、病のように広がる“虚の災厄”が蔓延していると噂されていた。
しかし、それを食い止める者が現れねば、この大地はやがて飲み込まれてしまうだろう。
「……行くさ」
小さく呟いた声は、
誰に聞かせるでもなく、
ただ自らに言い聞かせるようだった。
そうして彼は、出立の準備を始める。
古びた背嚢に、干し肉と黒パンを詰め、革袋に水を満たす。
村の薬師からもらった治療薬は、
わずか三瓶しかなかった。
夜が訪れる。
村を囲む松明の灯りが揺れ、
焚火の煙が空に溶けていく。
彼は焚火のそばで剣を磨きながら、
これから訪れるであろう道を思い描いた。
――旅は、もう始まっている。
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