召喚魔法使い in スペースオペラ ~〈召喚魔法〉は宇宙にて最良?~
蟹蔵部
第1章
第1話 転生からのホットスタートです
【まえがき】
よろしくお願いします。
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転生したらどんな〈スキル〉が欲しいか。
今どきの子なら一度は考えたことがあるだろう。
まず最初に思い浮かぶのが、武器を手に戦う武術系。
ゲームの中ならそれも良いだろうけど、相手を害した手ごたえを直接感じる武術系の適正が、俺にあるとは思えない。動物を締める想像をしただけで気持ち悪くなるんだから、どう考えても無理だ。
それに、臭い。
血の臭いもそうだけど、生き物の内臓というのは独特な臭いがあるらしい。焼肉でも、焼く前のホルモンの臭いはちょっと苦手だ。
こういったハードルを乗り越えて初めて武術系のスキルで戦えると思うと、現代日本で適正のある人というのはほとんどいないんじゃないだろうか。
次に、魔法で戦う魔法系。
相手と距離をとって戦えて、武術系よりはましに感じる。けれど、的確に魔法を使って遠距離の敵を攻撃するのって結構難しそう。いやかなり難しそう。FPSゲームが得意で、狙って撃つのに慣れているゲーマーなら適正あるか?
ちなみに俺はFPSゲームはからっきしだ。特に対人FPSゲームはほぼノータッチ。俺が好きなのはアクションゲームだ。というわけで魔法系も厳しい。
少し毛色が異なるのだと、生産系もある。
武器だとか身を守る装備だとかを自分で作製し戦う。これは立ち上がりにかなりの運が必要だと思う。
まず材料が必要だ。それをどう集めるのか。集めたとして、加工設備も必要だ。無手からそれらの準備を整えるのに、どれほどの運と時間が必要か。
過去の地球の例を見てみると、拷問器具を作った製作者が「ちゃんと動くか、ちょっと焼かれてみてよ」と最初の被害者になったり、家を建てた大工が「他に似た建物を建てられると困る」と生きたまま柱に埋められたり、技術を独占するために「一族郎党ここに住んでね」と囲い込み(笑)がされたり。
技術は『何が作れるか』よりも『誰(どの勢力)がその技術を持っているか』の方が重要なのは、歴史が証明している。現代でも特許侵害がどうとか、パテントトロールがどうとかやってるでしょ。
まとめると、材料を集める運、加工設備を揃える運、そして何より、有力者から目を付けられない運。3つの豪運が必要だ。
胸を張って言うことではないけど、俺は運には自信がない。運に自信がある人は、生産系スキルでやってみるといいだろう。
以上より、俺が推したいのは〈召喚魔法〉だ。
戦える存在を召喚して、そいつに頑張ってもらう。これなら俺の適正は関係ない。
同じ系統として〈テイム〉があるが、こっちはナマモノを相手にしないといけない点で、ハードルが高い。俺の家ではペットを飼っていなかった。初心者がいきなり戦闘もできるような獣を飼うのは、犬猫を飼うよりも難しいだろう。
やはり〈召喚魔法〉だ。
ということを、目の前の神様的存在に説明している俺は、絶賛異世界転生中です。
俺の説明が聞き入れられたのか、転生にあたって与えられるスキルは〈召喚魔法〉になった。
神様的存在は言葉を発しているのではなく、なんとなくふわっとしたイメージを発しているに過ぎない。これも受信側の俺の限界だと言われたら納得だ。
そのイメージによると、あとは実際に転生するだけ。肉体を新規製造するから異世界転生と言っているけど、姿形はほとんど変わらないから、俺の意識的には異世界転移と言っても問題はない。
ぱーっと周囲が白くなったような気がした後、神様的存在感が消えた。消えた後になってから、神様の圧倒的な存在感を前にして、緊張していたことに気付いた。
「ふぅ、転生したのか……。暗っ、てか寒っっ!?」
寒さの厳しさを表現するのに、刺すような、というものがあるが、あれは本当だった。周囲は暗闇で、目の前にあるはずの自分の手さえ見えず、それよりも問題なのが、全身を刺す凍える寒さだった。
「寒っ!? 暗っ!? ここどこ!?」
『ラリーエ社製フリゲート艦、型式番号LE09-FF2549Nのコックピット内です』
「おわっ!?」
慌てた俺の声に答えたのは、少し無機質な女性っぽい声だった。同時に明かりが灯り、自分が部屋の中央付近で椅子に座っていることが分かった。
「フリゲート? 何? というか寒いんだけど!」
『空調システムの稼働率20%。コックピット内の酸素残量低下、呼吸可能時間残り5分。ダメージコントロールシステム、再起動中』
座っている椅子のシートが温かくなり、ようやく落ち着けるようになってきた。落ち着いてくると周囲の様子に意識がいって、転生したんだという実感がわいてくる。
「ん、ちょっと待って、なんかフリゲート艦とか言ってたよね?」
『当機は、ラリーエ社製フリゲート艦、型式番号FF09-2549Nです』
「oh……、聞き間違いじゃなかった」
部屋の様子も「コックピットです」と言われるとそう見えてくる。真っ黒で何も映っていない大きなスクリーンが前面と側面にあり、それに正対するように3つの椅子が並んでいて、真ん中の椅子に俺が座っているという状況だ。
どんな機能があるか分からないスイッチ類もコックピットらしさに貢献している。
「なんだってこんなところに」
『現在当機は、宙賊船による攻撃を受けています。メインスクリーンに外部の映像を表示します』
スクリーンに映し出された星のきらめきがコックピットの中を照らす。
「わぁ、綺麗だなぁ」
『ミサイルが着弾します』
「おわぁー!?」
星のきらめきではなく、ミサイルの噴炎だった。
『外殻の損傷が30%を超えました。コックピット内の酸素残量さらに低下、呼吸可能時間残り3分。ダメージコントロールシステムの再起動中。再起動まで10分』
スクリーンを埋め尽くす爆炎の激しさに比べて、コックピット内の揺れはごくわずかだった。
「なんかやばいこと言ってなかった?」
『生命維持に重大な危険が迫っています。コックピット内の酸素残量低下、呼吸可能時間残り3分です』
「3分!?」
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25/09/04 記載変更
「海賊船」⇒「宙賊船」
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