第2話【白紙】カード


「……」


 SSR確定ガチャと書かれたカードを見るたび、僕は思わず口元が緩んでしまった。教室内では、「おい、お前何獲得した?」「ノーマル」「外れ」等の声が上がるが、今のところ「レアが出た」という声は聴かれない。


 やっぱり、僕は物凄いものを獲得しちゃったらしい。これさえあれば、今後のガチャでSSR以上のレアカードが出てくると思うと、僕はやっぱり嬉しさを隠せる自信がなかった。


『これより、しばしの休憩時間を挟んだのち、再び異次元ガチャを開始する』


 光球がそう無機質な言葉を発し、周囲が騒めく。前回はスキルガチャだったけど、次はなんだろう? ワクワクする気持ちとともに、これからどうなるんだろうっていう不安もあった。レアが出たとして、それをどうやって活かすのかっていう別の問題も出てくるだろうから。


「おい、トモヤ。何ニヤついてんだ?」


「あ……」


 まずい。ハヤトたちいじめっ子3人組が僕の様子を見て興味深そうに近づいてきた。どうしよう……。


「クソむかつくが、俺はノーマルカードだったんだよ。【攻撃力+5】とかいうスキル。てかトモヤ、まさかお前、俺たちを差し置いてレアを引いたんじゃねえだろうな?」


「……え、えっと、大外れだったから、恥ずかしくて見せられないよ。僕がガチャに弱いのは知ってるよね?」


「……そういやそうだな。あのトモヤがレアなんか引くわけもないか」


 ハヤトは僕の言葉にとりあえず納得した様子。よし、この調子だ。


「そうっすよ、ハヤトさん。こいつがレアなんか引いたら、それこそ世界が終わっちまうっす。おいらでさえノーマルカードの【毒耐性+10%】だったのに。そういや、コウキは外れっすよね?」


「ええ、残念ながらそうですよ、トシオ氏。私たちですらそうなんですから、人生ガチャで既にハズレを引いてるトモヤ氏が当たりのカードを引くなんて絶対にありえませんよ」


「……」


 僕はいじめっ子たちに侮辱されて、悔しくて思わず両手の拳を握りしめたけど必死に無言を貫いた。このままいけばカードを見せずに済む。もし見せれば奪われるのは確定してるんだから見せるわけにはいかない。


「けどよ、万が一ってこともあんだろ。トモヤ、カード見せろ」


「えっ……」


「どうした、早く見せやがれ! ぶん殴るぞ!?」


「は、はい。見せます」


 僕はカードを三人の前に晒した。目を瞑ったのは、せめて彼らの驚きの表情が、それを奪うことで愉悦の表情に変わるのを見たくなかったからだ。もう終わりだ……って、あれ? いつまで経ってもなんの反応もないと思って目を開けると、ハヤトたちは揃って拍子抜けたような顔をしていた。


「……なんだ、このカード。コウキのカードみたいに何も書かれてねえ。マジで大外れかよ」


「ハヤトさん、だから言ったっすよ。トモヤがレアなんて引くわけねえって」


「ククッ……。トシオ氏の言う通りでしたねえ」


「……」


 そんな、まさか。確かにこの目で見たんだ。何も書かれていないはずがない。でも、もしかしたら僕が幻想を見ていたってことも考えられる。


 ハヤトたちが去ったのち、恐る恐る自分のカードを見てみると、ちゃんと【SSR確定】と書かれていた。あれ……? なのになんでこれがあいつらには見えなかったんだ?


 もしかしたら、レアカードには持ち主にしか効果が見えない仕組みが施されているのかもしれない。


 教室内では、お互いにカードを見せ合っている生徒たちの姿が目立っていた。ただ、レアカードには何も表示されないという防御機能が働くのか他者には見えないらしい。それによって僕がレアカードを持っているというのがバレるかもしれないって一瞬思ったけど、コウキみたいに何も書いてないだけの大外れカードだってあるんだ。それがカモフラージュになってるので助かったってわけだね。


 そうだ。この光球、他のクラスにもいるのかな? 僕はそう思って、廊下に出て確認してみたところ、隣の教室にも同じサイズの光球が中央に浮かんでいた。やっぱりあれが指令を出しているみたいだ。他の生徒も気になっていたらして付近をウロウロしているのがわかる。


『これより、本日二度目の異次元ガチャを開始する』


「あ……」


 しばらく色んなところを散策していたところ、視界が急に廊下から教室に変わって僕は自分の席に戻っていた。自分以外もそうで、周りを見渡して呆気に取られているのがわかる。ガチャの時間になると強制的に全員元の席に引き戻されるのか。


 僕はその意味についてあまり深く考えなかったけど、それに関連して近いうちに何かが起きる予感を感じていた。

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