第8話 索引の試練
休む間もなく、リィナは蓮を机のある小部屋へ案内した。
そこには古びた書物が山のように積まれている。
表紙は裂け、焦げ跡が残る本も多い。
「ここにあるのは“索引候補”。
お前は次に何を刻むかを選ばなければならない」
「え、選択式? ゲームのジョブチェンジみたいだな」
「軽口を叩いている暇はない。選んだ分野で戦い方が決まる」
リィナの視線は真剣そのもの。
蓮はごくりと唾を飲み込み、並んだ背表紙に目を走らせた。
軍略、魔術、歴史、医学――。
その中で、ひときわ強く光を放っている本に目が止まる。
「……医学、か」
「理由は?」
「戦うだけじゃ駄目だ。兵士はすぐ傷つく。
俺は“倒すより、守る”を選びたい」
リィナの目がわずかに見開かれた。
だがすぐに表情を戻し、本を差し出す。
「なら試せ。これは“古代治癒録”。
ただし忠告する――治癒は痛みと死の記憶を背負うことになる。
耐えられなければ、お前の魂が砕ける」
「やめとくって選択肢は……ないよな」
「ない」
蓮はカードを本に押し当てた。
瞬間、光が弾け、頭に洪水のような映像が流れ込んでくる。
――血の匂い。
――兵士の断末魔。
――治らず死んでいく人々の叫び。
「う……っ、ぐ……!」
こめかみを押さえ、膝をつく。
痛みが現実のもののように体を切り裂く。
「蓮! 耐えろ!」
リィナの声が響く。
「それは“救われたい”叫びだ。お前が受け止めろ!」
「……っ、俺は……助けたいんだ……!」
蓮が吠えた瞬間、光が爆ぜ、カードに新たな文字が刻まれた。
『医学:治癒・再生』
身体に温かな力が流れ込み、痛みが少しずつ和らいでいく。
荒い息を整えながら、蓮は立ち上がった。
「……よし。これでブラック図書館でも救急医療科だな」
「愚か者。笑っている場合か」
リィナの声は冷たかった。
だがその青い瞳は、ほんの少し柔らかく揺れていた。
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