第6話 影喰いの核
藤堂蓮は新しく刻まれた索引カードを握りしめ、胸いっぱいに息を吸った。
『戦術:索引開始』――文字が刻まれた瞬間から、頭の奥には軍略のイメージが絶え間なく流れ込んでくる。
情報量に酔いそうになりながらも、どこかワクワクしている自分がいた。
「……なんか、俺ちょっと強キャラに近づいてない?」
「勘違いするな」リィナが即座に切り捨てる。
「影喰いは群れるだけではない。“核”が現れる」
「核……ボスキャラかよ」
「群れを束ね、記録を喰らい尽くす中心体。放置すれば周囲一帯が消える」
彼女の声は冷徹そのもの。けれど、その瞳の奥にはわずかな緊張が浮かんでいるのを蓮は見逃さなかった。
重い扉を押し開けた先は広い閲覧ホールだった。
中央には黒い渦があり、そこから影が湧き出している。
やがてそれは人の形を模し、蓮を見下ろす巨影となった。
赤い瞳がぎらりと光る。
全身から吐き出される囁きが、骨の髄に突き刺さる。
――忘れろ。お前の名など無意味だ。
「っ……!」蓮は耳を塞いだが、声は頭の中に響き続ける。
巨影が動いた。
床を揺らすほどの衝撃とともに腕を振り下ろす。
「来るぞ、蓮!」リィナが叫んだ。
反射的にカードを掲げる。
光が爆ぜ、兵士たちが戦列を組む。槍兵が突撃し、矢の雨が巨影を覆った。
だが黒い腕が一振りされただけで兵士はまとめて霧散した。
蓮の胸に焼ける痛みが走り、膝が崩れる。
「ぐっ……! やっぱりボス補正強すぎだろ!」
「立て、蓮!」リィナの声が鋭く飛ぶ。
「お前は索引を持つ者。意志を刻め!」
歯を食いしばり、蓮はカードに手を押し当てた。
「……俺は! 記録を守るためにここにいる! 忘却には屈しない!」
光が再び爆ぜ、今度は軍勢が布陣を組み直した。
盾兵が前に出て巨影の腕を受け止め、弓兵が弱点を狙い撃つ。
リィナも本を開き、光の鎖を放った。
鎖が巨影の動きを一瞬だけ縛り、兵士の突撃がその胸を貫く。
――ギィイイイイイ……!
広間に悲鳴が轟き、巨影の体に大きな亀裂が走った。
息を切らす蓮の横で、リィナが低く呟いた。
「……まだだ。核は一度では倒れない」
「マジかよ……続きあるの? これ……連戦イベントだろ……」
それでも蓮はカードを掲げる。
その光は、弱々しくも確かに未来を照らしていた。
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