異世界転生したら忘却図書館の管理者になった件 〜声を刻む者と影喰いの戦い〜
ふわふわめんこ
第1話 終電の眠り
藤堂蓮(とうどう れん)はその夜、ぐったりと電車の座席に沈んでいた。
残業続きでクタクタ。終電に間に合ったのは奇跡みたいなもんだ。
「……俺、絶対どっかで過労死するわ」
ぼやきながらスマホを握ったまま、まぶたが勝手に落ちる。
ガタンゴトンという振動が、妙に子守歌みたいで抗えない。
……眠ったはずだった。
目を開けると、そこは電車じゃなかった。
左右どこを見ても、ずらりと並ぶ本棚。
果てしなく続く通路。
空気は冷たく、紙とインクの匂いが鼻を刺す。
「……図書館? いやいやいや、終電どころか夢落ち?」
冗談を口にしても、現実感は消えない。
しかもやけに静かだ。人の気配はない。
その時――
“ボッ”と音がして、頭上のランプがひとつ灯った。
光に照らされた足元には、小さな看板。
――『無人図書館へようこそ。あなたは管理者候補に選ばれました』
「……は?」
漫画みたいな展開に、蓮は素で固まる。
すると目の前に、本がふわりと浮かび上がった。
革張りの表紙に金の刻印。勝手にページが開き、風もないのに紙がめくれていく。
『転生者ガイドライン』
タイトルを読んだ瞬間、頭に声が響いた。
『藤堂蓮。君は新たな管理者候補である。
ここは“忘却図書館”。世界から失われた歴史と知識が集う場所』
「転生……? いやいや、俺寝ただけだぞ」
『君の役目は記録を守り、整理し、影喰いに抗うことだ』
「影喰い……?」
言葉を繰り返した瞬間、背筋が冷えた。
通路の奥で、何かが“カサ……カサ……”と這う音が響いたからだ。
黒い染みのようなものが床を這い、本棚を汚していく。
やがて人の形に膨れ上がり、赤い目を二つ、ぎらりと光らせた。
「……ちょ、マジでホラー路線?!」
――ギィイイイイ……
耳障りな音を発しながら、影は本を引き抜き、そのまま飲み込んだ。
本は跡形もなく消え、棚には空白だけが残る。
その光景に、蓮の喉は凍りついた。
「……今の、忘れられた“記録”が食われた……?」
恐怖が追いつくより早く、頭の中で声が告げる。
『影喰いに抗え。管理者候補よ――試されるのは、今だ』
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