番外編 安息日

 今泉の休日の朝は遅い。しかし今日は何故だが分からないが朝の四時ごろに目が覚めてしまった。もちろん他の家族は誰も起きていないので家の中は静まり返っている。目が冴え切ってしまってもう一度寝れそうにないがなんとなくベットの上でゴロゴロしてみる。せっかくの休みなのに早起きしてしまって損した気分になっていたがまあしょうがないと思って気合を入れて起きベランダへの窓を開ける。まだ夜が明けていなくてしっかりと暗いためほとんど何も見えない。唯一見えているのが遠方の町の24時間営業のチェーン店の微かな光だけ。みていてすぐ飽きてきそうな気もするが意外とボーッとしてると風景に溶け込む感覚があって楽しくなってきた。普段は学校で時間に追われて風景を眺めることもないのでなんだか新鮮な感じがする。まだ秋口に入りかけなのもあって日中はそうでもないがやっぱり朝は肌寒くて冬の気配を早くも察知する。真夏の暑さが酷過ぎたので涼しくなってくれるのは嬉しいのだが冬は冬で寒いんだよなぁと少しわがままなことを考えつつ頬を刺す寒さで目が凛々とかっぴらいていく。

 こんなことをしているとあっという間に時間が過ぎていてベランダから部屋の時計を覗いてみると既に数十分が経っていた。日が昇っていくことで先ほどまで真っ暗だった空が白み始めて東から西に白と黒のグラデーションを描いている。また学校に行く日のような朝がやって来るのかと少し退屈な気持ちになりつつ手すりに背中を預けながら両肘を置く。そのまま上を見上げると魚眼レンズ越しに見たような丸い空に張り付いた星が西へ西へと移動する。自宅から見ているとはいえ壮大な光景にものすごい美しさを感じる。見入っていると他の動物たちも目を覚まし出して鳥が一羽自分のすぐ近くに止まり首を傾げだす。警戒心のない鳥だなと横目でチラリと見つつまた鳥の視線と直角になるように真上の空に視線を移す。本当に無限の時間の中にいるとすら錯覚しながら頭が空っぽになる。ピィピィとなく鳥、アスファルトを揺らしてゴーっという音を鳴らす大型トラックいつもの朝と同じなのにいつもとは全く違う。こんな体験もたまにはいいかなとカッコつけていると突然睡魔が来てベットに吸い込まれるように体が一歩また一歩と千鳥足で動き始める。

『二度寝しよ』

またいつもの怠惰な休日が幕を開けようとしていた。

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