第3話 魔剣王襲来

晴れていたはずの教室の外で、突然すさまじい雷鳴が轟いた。数秒経って雷光で教室が二色になった。


「魔剣ヴォーパル、我が剣ながら恐ろしい力よ」


グラディウスは一人そうつぶやくとヴォーパルをもう一振りする。


『ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………バァァァァーン!』


空が割れ一筋の雷光が運動場に落ちたかと思うとそこに、白い鎧を着て巨大な剣を持つ大男が立っていた。鎧の間からは、長く黒い体毛が無数に飛び出している。


「魔剣王グラディウス…」


ルナはそうつぶやいた。


「ルナ、知っているの?」


田中は心配そうにルナに聞く。


グラディウスは両手を合わせ剣を立て呪文を唱える。


「そこか」


突然教室に剣を持った巨人が現れた。


「ルナ姫、探しましたよ。」


(イグニス・フラーマ、イグニス・フラーマ、炎の主よ、我が意志に従い、敵を焼き払え…)


ルナは、覚えたばかりの炎の呪文を口の中で練習した。


田中がルナの前に立った。


「ルナ、無理だって、逃げよう」


「田中君、下がってて。私が逃げたからいけなかったの。これ以上、みんなを巻き込むわけにはいかない。」


そう言ってルナは、田中を押しのけた。


「田中君、早く逃げて。大丈夫、一緒に練習した呪文があるから」


「無駄です。ルナ姫。今ならオメガはあなたを許すでしょう。降伏なさい」


ルナは毅然と宣誓した。


「魔剣王グラディウス、王女ルナの名において、あなたを討伐します」


「あぁ、なんてことを。ルナ姫、戦う気ですか?その勇気はたたえましょう。」


グラディウスは呪文を詠唱し、剣を天井に向けた。


『ドンッ!!!!』


それだけで、すさまじい閃光とともに天井に穴が開き、そこからまぶしい太陽の光が入ってきた。


「ルナ姫、今すぐに宣誓を取り消しなさい。次はありません。」


グラディウスは続いて呪文を唱えた。今度は剣先をルナに向けている。


ルナは渾身の思いで呪文を唱えた「イグニス・フラーマ」


田中が割って入った。


そのとたん、宙に浮いていたグラディウス床に落ち、鎧が割れ中から毛だけのモンスターがむき出しになった。


ファイアーボールがフワフワと浮遊し、その毛に火をつけ一瞬で燃えて灰となった。


「あれ、私勝っちゃった?」


ルナが困惑したように呟いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る