空に舞う光の先に

🌸春渡夏歩🐾

機械屋の心得

 オレは機械屋のカイト。機械を修理しながら、旅をしている。


「はい、お待ちどうさま!」

 目の前にトンっと置かれたのは、この店の限定特別メニュー『黄金おうごんたまごのオムライス』だ。

 中身はオーソドックスなチキンライス、その上をおおっているのが、この店自慢のふわふわとろとろの黄金たまご! 

 そして、オレはデミグラスソースじゃなくて、断然、トマトソース派なんだ。

 ほら、赤が黄色に映えるだろ?


 オレは夢中でスプーンを動かし、オムライスを頬張っていた。

 ……うんまいっ! 

 これこれ。これこそ求めてた味だよ。オムライスって、発作的にときどき食べたくなるよなぁ。


 そのとき、テーブルの前に人影がさし、上から声が降ってきた。

「機械屋のカイトとは、お前のことか?」

 オレは無視した。オムライスの山を切り崩すのに熱中してたからだ。


「おい! お前——」

 ……しつこい奴だ。

「今、食事中。人に名前を尋ねるなら、まず自分から名乗るもんだろ」

「領主様が修理のできる人間を探しておられるんだ」

「ふ〜ん。? オレは領民じゃねぇし、従う義務はない」


 バァンとテーブルが叩かれて、皿がひっくり返った。オムライスは、あと半分ほどまだ残っていたはずだ。


 ……これを食べるために、何度もこの店に足を運んで、やっとありついたんだぞ!


「食べ物を粗末にしたらいけないって、親に教わらなかったか?」

 立ち上がったオレは(うっ!)とひるんじまった。

 目の前にいる相手は、身長は頭ひとつ分以上、横幅はオレの倍くらいはありそうな衛士だった。


「お客さん、逆らわない方がいいですよ。相手が悪い」

 店員が後ろでそっとささやいた。


「……確かに、オレが機械屋のカイトだけど」

 ボソっと呟くオレ。

 ……情けねぇ。だけど、オレは勝てないケンカはしない主義なんだ。


「一緒に来てもらおうか」

 襟首をつかまれ、強引に店から連れ出されるとき、なんとかテーブルに代金を置くことだけはできた。


 ◇


「これは……大砲おおづつ?」

 もうすぐ迎える「天灯祭ランタンまつり」では、先の戦から過ぎた年数分の空砲を撃つならわしがあるのだという。

 一年ぶりに使う前に、点検修理して欲しいという依頼だった。担当するはずの修理士が、急にギックリ腰になってしまい、代わりを探していたらしい。


 …… 戦の道具がまだ残ってるのかよ。戦を追悼する祭りに、戦の道具を使うなんて、意味がわからねぇ。


 オレは機械屋だから、どんな機械でも修理するが、ただひとつだけ心に決めていることがある。

『戦の道具には関わらない』ということだ。

 これだけは守れという、親父からの教えでもある。


「悪いがオレにはできない。他をあたってくれ」

 オレはそのままその場をあとにした。


 暴発事故でケガ人が出たことを知ったのは、数日後、別のさとにいるときだった。


 ……このできごとがオレの中で引っかかっていたんだ。

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