mONiTOring

狐守玲隠

第1話

人気のない森の奥の奥。

行っては行けないよと言われる先には、底なし沼と呼ばれる深く陰湿な沼があるらしい。


それを聞きつけた幼馴染の四人組は、話の流れで行ってみるということになった。


森を進むに連れて、木の葉の間から注がれる太陽の光が減っていく。

木々を避けるように吹き抜ける風は、獣の唸り声のような低音を響かせ、四人の恐怖心を煽る。


「正樹、やっぱやめよーよ。私怖い」


先頭を歩く正樹の手を友美が引っ張った。


「でも、もうここまで来たじゃんか」


「そうよ。せっかくここまで歩いてきたのに戻るなんて考えらんない」


正樹の言葉に、真奈が同調した。

正樹と真奈の意思は底なし沼にしか向いていない。

そんな二人が歩みを止めることなどあるはずもなく、先へ先へと進んでいく。


その二人を見かねた真也が、二人の肩を鷲掴みした。


「おい、二人とも。友美のことも少しは考えてやれよ」


ぴりついた真也の声が森に響く。


「痛い」


掴まれた右肩を押さえ、真奈は真也を睨みつけた。


「ご、ごめん。力加減間違えた」


真也は、真奈の威勢に負け、蛇に睨まれた蛙のように縮こまる。

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