ドルイドの遺言

大槻奏斗(オオツキカナト)

序夜-黄昏と黎明-(前編)


『懺悔録』より 断章



412年 フッフ月 7日


私は昨夜、ある一家を皆殺しにした。


“月„が上ってしばらくしてから、ナツの蒸し暑い風を家に招き入れながら、孫は帰ってきた。顔からは、僅かながらの申し訳なさが窺える。

しばしの雑談の後、孫は数刻前の出来事を語り始めた。


遂に、あの地に足を踏み入れたものが現れた。朋輩よ、見ているだろうか。我々の悲願が達成される、その足掛かりとなる偉業を、他でもない私の孫が成し遂げたのだ。


しかし、その達成には、犠牲が必要なのだ。あの子ども、及びその血族には消えてもらわねばならない。例の宝珠を持っていたとあらば、尚更。今日から、私は孫と目を合わせることができるのだろうか。いや、そんなことは今更だ。私は、彼の人生の普通の幸福を奪ってしまった。


それでも、無責任にもやはり願ってしまう――


孫よ、私の希望の光明よ。

お前だけは、正直に生きてくれ。

せめて、お前だけは。


―――――――――――――――



「『神は、この地に住まう悪魔たちを浄化し、私たちにとって住みよい世界を作り給うた。彼奴らを崇める邪教徒たちは、大ゴール島に追いやられ、ゴールの民は皇帝陛下と神・バロのもと、清らかな心を取り戻したのだ』、だったよな?」


「すっげぇ!さすがマドラだな!」

「どうしたら、そんなにスラスラ出てくるようになるの?」


この少年マドラ・イモルグは、修道院内の学校に通う、学問好きな12歳。今日も教室で、同級生たちに、自慢の記憶力を披露している。いつもこのように、教科書の本文を丸々暗誦して、他の生徒たちを驚かせている。


「まあでも、俺はこの教科書の話には、懐疑的かな。」

「ん?あぁ、そうか」

「だいたい…。」


マドラは、助走をつけるように深呼吸をし、銀色の髪をかき上げた。

「神なんて俺たちは見たことがない。教科書に載せてるなら『はい、こちらが神様です』とか言って、見せてくれたっていいじゃないか。証明しようもないものを子どもたちの教育の為の書籍として扱っている、帝国側の思惑が読めないね。もしかしたら、この島の総督が…」


ああだこうだと言っているうちに、周りにほかの生徒はいなくなっていた。それに気づいてため息をついていると、誰かが結ばれたピンクの髪を揺らしながら、近づいてきた。


「聞いてたわよ。また意味わかんないこと言ってたわね、あんた。」

「相変わらずの煩さだなぁ、君は。」

クロエ・バナー。彼の幼馴染の一人だ。


「あんたねぇ、次また教科書とか、先生の授業とかの内容に、生意気なこと言ったら、あたしがぼっこぼこにするからね!」

「…はいはい、お手柔らかに頼むよ。」


姉御肌の幼馴染に説教されて、ちょっと面倒くさそうなマドラ・イモルグ君だ。


――ナツのはじめの夕暮れ。小ゴール島には、生暖かい風が緩やかに吹いている。島の面積の殆どが石造りの民家で埋め尽くされ、道には、石畳が敷き詰められている。

この島は、地上最大の版図を持つ「カリブルヌス帝国」の属州だ。島民たちは例外なく、国教である「バロ教」を信仰している。不老長寿を人類に授けるとされる唯一神・バロに、人々は祈りと賽銭を捧げる。


教会の権力が強く、帝国の版図とは即ち、バロ教会の土地だ。この島も例外ではない。帝国の本土である大陸からきた「バリリ人」と、島に元々住んでいた「ゴール人」が、特段差別なく共存している。マドラはゴール人で、クロエはバリリ人だが、このように仲良く(?)暮らしている。


マドラたちの暮らすこの都市フコーカーも、今日の営みを終える準備をしだす。


修道院の学生たちもまた、終業の時間だ。


マドラのもとに、おかっぱ頭のもう一人の友人が、後ろから近づく。


「お父さんの様子、見に行く?」

「びっくりした、レイか!うん、勿論」

「どこ行ってたのよ」


肩をレイに鷲掴まれ、僅かに動揺しつつ、いつものやりとりとして遇らう。

8歳の頃からの縁がある彼らにとって、こんなくだりは日常茶飯事だ。


レイが八重歯を覗かせながら言う。


「クロエ、なんで頭に蜂の死体なんかのせてるのー?」

「えっ?!ウソ!どこよ?!」


頭をぶんぶん振り回すクロエ。自慢のピンクの髪が荒ぶっている。


「ないよ。レイの悪戯だ、真に受けるな」

と、呆れながらマドラが一言。

「あははっ!マドラは正直だなぁ。」

レイの表情には、残念そうな色はない。クロエは、頬を膨らませて二人を睨む。

「神罰を受けても、知らないわよ」

…なぜマドラも睨まれているのだろうか。


教室を出て、修道院内の病人の隔離部屋に向かう。レイもクロエも、当然のようについていく。


隔離部屋は、修道院の敷地の中央にある教会のすぐ隣にあり、先ほどの教室から距離はそう遠くない。

扉の前まで行くと、いつも父の面倒を見ている僧が、石段の上に立っていた。

こちらを見るなり、

「ちょっと説明があるから、マドラ君だけ中に入ってくれるかな?」

と言った。嫌な予感がするまま、扉が開く。



修道院から西にしばらく歩くと、「東洋民芸品商店モモ」がある。

店主はオーウェン・アウルスト。マドラの母方の祖父で、人々は彼をフコーカー最高の賢者と呼ぶ。


マドラは今、この祖父と同居している。母は、マドラを産んだときに、その出血がもとで亡くなったらしい。そして、そのときに何もできなかった夫、つまりマドラの父は、ショックを受けて放心状態となった。

それ以来、父はものを言わぬ抜け殻のような状態となった、というのが祖父の証言だ。


そういうわけで、マドラは学校の帰りに、修道院に預けられている父の様子を見るのが習慣となっているのだ。


孫の帰りを待つ老爺の両手には、薄手の手袋をはめられている。売られている民芸品は、全て彼が一から作っているのだ。

日没が近いので、店じまいの準備をしている。


いつもよりも気持ち遅く、孫が帰ってきた。暗い目つきをしながら、唇を震わせて、こう言った。


「…父さん、息を引き取ったって。」

「…そうか。」


マドラの肩を軽く摩りながらの、暖かな言葉だった。


葬式は、息子と舅を除いて数えても、片手で収まる程度の少人数で行われた。神学者だったので、学者仲間がもっときてもおかしくはないのだが、放心状態になり十数年も経っていれば、疎遠になるのだろう。


彼らの習俗的に、「喪に服す」といったことはないので、葬式が終わった次の日から、日常が戻ってくる。


重い足取りで、通学路を歩く。


マドラに物心がついたときには、既に言葉を交わせない状態になっていた父だが、毎日のように”会って„いたので、やはり家族は家族なのだ。悲しかった。しかし、涙は流れなかった。


そんなことを考えているうちに、あの悪戯っ子の家がある通りから、本人が飛び出してきた。


「グアトニシーア、マドラ!…クロエは?」


グアトニシーアは、ゴール人の朝昼晩問わず使われる挨拶で、「森に感謝を」というのが原義とされる。


「…寝坊だってさ、親御さん曰く。」

目を合わせずに答えた。さすがのレイも、調子の違いに気づいたのか、親友の顔を覗き込んだ。


いつもなら「丁重に軽く」遇らうところだが、今はそんな余裕もない。励ますつもりで覗き込んだ親友の真意はわかってはいたが、煩わしく感じてしまった。


二人らしからぬ空気感のまま、修道院に着き、そのまま終業となった。マドラは帰り支度を黙々としている。


レイが、眠っている獣を突くように、慎重にマドラに話しかけてきた。


「気晴らしに、寄り道しながら帰らない?」

「…どこに?」


マドラの耳元に口を近づけ、囁いた。


「”帰らずの森„に。」


これには、今日一日、感情の起伏がなかったマドラも、さすがに変な声を発した。


”帰らずの森„とは、修道院の南に進んだところにある森だ。

「魔獣」が出るとされ、フコーカー市民の間で禁足地と恐れられている。最初にそう言いだしたのは、マドラの祖父オーウェンだった。


そこに足を踏み入れたことが発覚したら、祖父の顔に泥を塗ることになる。どんな罰が待っているのかもわからない。近頃、総督に忠実な監視役、所謂”憲兵„のような存在が、市民に紛れているという噂もよく耳にしている。


軽いため息の後、

「なんでそんな突飛な提案を」

と、一旦聞いてみた。

「前に言ってなかった?『魔獣なんて本当にいるのか』って。」

確かに言った気がする。こういう、常識を疑う癖は、おそらく学者だった父の血統の影響だろう。


「確かめに行こうよ!」

「大丈夫か、怒られないか」


レイはマドラの顔を覗き込んで、

「誰に?」

と無邪気に聞いた。

「…総督の、憲兵みたいな人に…?」

自信なさげに答えるしかなかった。

「そんなのがいるっていう噂、まだ信じてるの?」

マドラの右手首をレイが掴む。


「真実を求めるなら、少しの悪戯心がないとねっ!」


真実を求める――こう言われると弱い。マドラは、今日最初の微笑を浮かべた。


「あんたたち、どこ行くつもり?」

いつもの帰り道とは違う方に向かっている友人二人を見て、クロエは声をかけた。


「珍しい花が咲いてるらしいから見に行くんだ」

「えっ?!じゃあ、あたしも見に行くわ!」


クロエの口角が上がっている。但し目は笑っていない。レイの嘘が珍しく効かなかったらしい。


「えっ、いや…その花、蜜蜂に人気らしいんだ!…形も蜘蛛みたいで、さ、ねっ…すっごいキモイらしい、よ?」

「…ふーん。」


下目遣いのクロエ。さすがにこうなっては誤魔化せてはいないと思うが、撒くこと自体には成功したらしい。

あまり見たことがなかった慌てふためく親友の様子を見て、マドラの表情に笑みがこぼれる。徐々にいつもの雰囲気に戻ってきている。

二人は南に早歩きで向かった。


「神様と先生に怒られても、知らないから」

一人残された少女は、呟いた。怒っているというよりは、寂しがっているのかもしれない。




「この先、禁足地」


という看板を無視し、二人はせーので森に足を踏み入れる。


獣道しかないと思いきや、存外、二人横並びで歩けるくらいには広い道が多かった。叢からは、絶えず何かが蠢く音が鳴っている。


しばらく黙って歩いた後、レイが呟いた。

「少し元気を取り戻したみたいだね」


マドラは、深呼吸の後、口を開いた。


「父さんが亡くなったって聞いたとき、あまりにもすんなり受け入れてた自分に驚いたんだ。気分が落ちて見えていたなら、確かに悲しさを引きずっている面はあったけど、そういうモヤモヤを抱えていたのが原因だと思う。」


レイは黙って聞いていた。


「なあ、レイ」

「何?」

「…俺と父さんって、家族だったと思う?」


レイには難しい質問だ、と、わかっていながら敢えて質問した。

「う~ん、どうだろうね。」

「俺、思ったんだ。家族という繋がりだって、本当は人間が勝手に作った幻想、つまり”嘘„なんじゃないかって。何を話しても返ってこない父さんよりも、血は繋がっているとはいえ、より遠いおじいちゃんの方が、俺にとっては家族だ。」

「…」


「人類最大の発明品は、”嘘„だよ」


「…発明品…嘘、ね」

「言語、階級、国家、社会、制度、宗教…人は、嘘をつくことで、他の動物たちの上に立つことに成功した。教科書によると、神であるバロは、人間たちに”金属の力„を与え、高僧には生命を生み出す”秘術„を授け、強化したらしい。」

「あんまり神様の名前を口に出すと、クロエに怒られるよ~?」

レイは揶揄うように言った。

「確かにバロの恩恵もあるだろうけど、人間が強くなったのは、さっき言ったような理由もあると思うんだ。」


マドラはひとしきり話し終えて、レイの方を向いた。


「だいたい、バロの神話だって本当のことかわからないだろう?もしかしたら、これも帝国が作った嘘かもしれない。この森が禁足地になっているのだって、何かあるはずだし。魔獣なんて見当たらないしね。」

「そうだね!」

レイは、マドラの前を小走りで行き、振り返りながら言った。

「楽しみだな、この悪戯の先に、待っているものを見るのが。」


そのまま先に行ってしまったので、マドラも慌てて後を追う。


(悪戯好きで、嘘つき。それを明け透けにしているこの子は、ある意味一番の正直者なのかもな)


と、考えながら。


しばらく歩くと、光がさしているところが見えてきた。光を目指して歩くと、


「……何だ、あれは」


平野に巨大な遺跡が現れた。蔦が生い茂っており、明らかに人は住んでいない。円塔が、こちらから見ると3つある。城にも、図書館にも見えるそれは、自然そのものである森の中にあって、実に神秘的に見えた。


レイが、無邪気に遺跡の方に走っていく。


マドラも慌ててついていく。


大人たちは、これを隠していたのだろうか。であれば、何故。おじいちゃんは、何を知っているのか。次から次へと、疑問が脳内で錯綜する。何ひとつ動揺の色を見せない親友に、ただ驚かされるばかりだ。


気が付くと、レイはもう建物の中に入っていた。見上げるのも億劫になるくらい天井が高い、書庫のようなところを歩いている。空っぽの書棚が並んでいる。先ほどの二択で言うと、図書館説が有力だ。しかし、いつまで、誰によって使われていたのだろうか。妙にきれいな棚もあれば、蜘蛛の巣が張っているところもある。


二人とも、大の本の虫なので、こんな本棚を見るだけで興奮しそうなものだが、この不気味さなら、そうはならない。

……レイは違うようだが。

無限に続いているように見える、奥行きある廊下を、ずっと走っている。


次第と見えなくなっていき、走って追うのはやめた。周囲を見渡しながら、ゆっくりと歩いていく。徐々に光が陰り、窓から光が差さなくなっていった。


松明を作り、廊下を歩いていくと、一冊の本を読もうとしているレイにやっと追いついた。


こちらに気づいたレイは、本の内容が見えるように、マドラの横に立った。


「『丸文字』―古いゴール人の文字だ」

「本当だ。にしては随分古さを感じない本だな」


顎を撫でながらマドラが言った。基本的に、ゴール人であるマドラも、古代の文字は読めない。


「これ、読めるか?」

「うん、時間はかかるけどねっ!」


レイが自信満々に答えた。


「さすが学年2位の成績の持ち主だな」

「マドラだって学年1位のくせに!謙遜のし過ぎは、嫌味になるよ?!」


レイは、丸文字を解読し始めた。

「えっと、まず題名は、…『ゴールとダース神族の戦史』、著者は書いてないね」

何ページかとばし、レイは音読し始めた。


「『小ゴール島はもともと、大ゴール島などの島々とともに、”ゴール連合王国„の一部であった。しかし、ゴール暦343年、カリブルヌス帝国の侵攻を受け、併合された。ゴール人が信仰する”ダース神族„は、危機感を覚え、”根の国„へと身を隠した』って書いてあるよ。」


「…ダース神族。」

その言葉に、妙な引っ掛かりを覚えた。

レイはページを捲り、また読み上げ始めた。


「『神々の力を借りた賢者たちは、あらゆる知識と自然界に溢れる霊魂の力を使い、人々の役に立つ行いをしている。人々は彼らを、古のゴール語で、”多くのことを知る者„ドルイドと呼ぶ。』、う〜ん、なんだか御伽噺みたいだね!」


「ドルイド…」


マドラは教科書の一節を思い出した。


(もしかして、”彼奴らを崇める邪教徒たち„のことか…?)


歴史から消された賢者たち。マドラは、彼らに感慨を覚えた。

「そんなことより、外、真っ暗になっちゃったね!」

この暗さでは、祖父に怒られる以前に、帰れるかどうかという問題が先行する。

「来るときにあらかじめ石を置いといたから、それを辿って帰ろう!」

相変わらず抜け目がないな、とマドラは思った。


森を、二人は早歩きで抜けようとしている。

「あの本は、明日までに解読しておくよ!」

レイが、鞄を軽く叩きながら言った。


漸く街に出た。家から漏れ出る光のおかげで、松明の仕事はなくなった。

いつもの分かれ道で、二人は立ち止った。


「じゃ、また明日!そうだ、もうすぐマドラの誕生日だね!」

「覚えててくれてたんだ…。プレゼント、期待してるから!」


お互い手を振りながら、足早に別れた。


小走りをしているマドラの目の前に、いつもの看板が見えてきた。


『東洋民芸品商店モモ』


祖父であるオーウェンと、二人で暮らしている家だ。もう店は閉まっているはずだ。

「…た、ただいま」

さすがに情けない声になった。

「どこに行っていた?」

マドラは荷物を置きつつ、正直に答えた。

「…レイと一緒に、帰らずの森に。」

「そうか。何か言うことは?」

夕食の準備をしつつ、祖父は言った。

「ごめんなさい。」

「うむ。」

簡単に許された。この老爺は、割合こういうことが多い。


「誕生日には、何がほしい?」

オーウェンは皿を運びながら聞いた。


「そうだな、『鉱物図録』かな。」

「それなら、うちの蔵書にもあるはずだぞ?」

「…ああ、編者が違うんだ。確か、前の版の編者ドゥーガル氏の夫人が、彼の死後、書斎の資料から…」


満足するまで話すと、食事に手を付けた。


しばらく黙々と食べていたが、ふと口を開いた。


「そういえば、あの森を、なんで禁足地ってことにしてたの?」

「…そうか。まあ、魔獣などいないからな。」


祖父は、食器を片付けながら正直に答えた。しかし、詳細を話すつもりはなさそうだ。

「本当は、森の奥の遺跡を隠したかったんじゃないの?」

食事の手を止め、祖父の方を見る。


「そこで、何を見た」


祖父の瞼が、僅かに上がった。

「本を見つけたよ。丸文字で書かれてた」

口角を力づくであげながら言った。祖父の目は、相変わらず大きく開いている。


「その本は、今どこにある」

「…レイが持ち帰って、たぶん、今頃解読しているんじゃないかな」


そういった瞬間、マドラは感じとった。祖父の表情から、歓喜とも失望ともとれる何かを。

「…わかった。食べ終わったら、寝る支度をしなさい」


翌朝、クロエと合流したマドラは、いつものレイの家につながる道の前に来ていた。

「レイのやつ、遅いな」

「あいつ、不真面目ではあるけど、遅刻だけはしないはずよね。」

朝礼に遅れてしまいそうなので、仕方なく修道院へ向かう二人。


修道院に着き、すぐに朝礼が始まった。

「先生、レイなんですけど、」

「あっ、レイはね」

先生は間を空け、こう言った。


「今日の未明に、転校したわ。」


――――――――――


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