まだ分からない。
RinN
第1章
進路希望調査のプリントを渡されてから1週間が経った。
教室の机の引き出しの奥に突っ込んだコピー用紙が私を急かしてくる。
母親と同じ大学へ進学すると高校に入ってからずっと言い続けてきた。
というか、言わされていた。
なんだか手のひらで踊らされているように感じて嫌な気分だ。
クラスメートは進路希望調査を次々と出していく。
何に悩んでいるのだろう、私は。
帰りのSHRで担任が気だるそうに「進路希望調査票は明日締切だから出せよ」、と私の方をじっと見つめながら言って、さっさと教室を出ていってしまった。
だめだ、書けない。
とりあえず、くしゃくしゃになってしまったあの紙を少し伸ばしてファイルに乱雑に押し込み、カバンに入れた。
私はとぼとぼと駅へ歩き出した。
私の学校は東京の都心程とはいかないが地方の繁華街に位置していて、下を向いて歩くと当然誰かしらにぶつかる。
誰かにぶつかった、そんな気がしたけど気にすらしないほど悩んでいた。
「ねぇ、大丈夫?」
だれ、?
「同じクラスの子?確か、
顔を見上げると髪の毛も肌もつやつやでしっかり手入れされている黒髪ロングの美人が心配そうにこちらを見ていた。
彼女はこの学校に4月に転校してきた
まだ制服が届いてないようで前の学校の制服であろうオシャレなブレザーに身を包んでいる。
「きれい、。」
心の中で呟いた一言だったが声に出てしまった。
私は小っ恥ずかしくなって突然走り出した。
明日気まずいな、、そう思いながらも走り続ける。
走っている中でなんだか吹っ切れた気がする。
きっと、進路、書けるよ。
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