第6話 命の意味

結婚から2年後

「ねえ圭介くん、これみて」

まいは妊娠検査薬を見せてきた。陽性だ

「おお!まい!ついにだな!男の子かな?女の子かな?」

圭介は舞い上がって先のことまで考えていた。

「まだわかんないよw明日産婦人科にいってくる」


「おめでとうございます、妊娠2カ月です。」

産婦人科医はまいに優しく告げた。

私も幸せになっていいんだ…嬉し涙がつーと流れる。

「では定期的に来てくださいね。あとなんですけど…」

多幸感でふわふわしてるまいを現実に引き戻す一言があった

「つわりが落ち着いたらあと1週間ほどで出生前診断が可能になりますがどうしましょうか?」

出生前診断…胎児に先天性疾患があるかの検査だ。

思い浮かべるのは否応がなしに知的障害が疑われる兄の姿。もしこの技術が早く生まれていたらあの業人は私を苦しめることはなかったのだろうか、アイツがいなければ幸せになれてただろうか。いや、母のことだ。きっと陽性と判定されてもかわいさから産んでいただろう。

(お母さんを責めてもだめな理由、ようやくわかったよ)


「ねえ、私出生前診断っての勧められたの」

「あの赤ちゃんに病気がないか調べるやつ?」

「そう、それでね。もし異常がみつかったらどうしようかなって…」

圭介は言葉を振り絞り答えた

「…俺もまいもどんな子が生まれてきても全力で愛を注ぐよ。問題は生まれてきた子がどう思うか、だよね…」

まいは再度兄のことを思い出した。存在しない女性の尻を追いかけ、騙され世間の笑いものにされた兄。毎日マウントをとろうとし、失敗すると小動物のようにおびえる兄。自らの業で生み出したアンチに憤怒の炎を燃やす兄。

それを思い出しふとこぼれた言葉があった


「…不幸だよね」

「まい…」

「もし異常がみつかったらお空に送ってあげよう。そのほうがきっと幸せだよ」

「わかった…」


その後受けた出生前診断では異常は確認されなかった。そこから田中夫妻はどんよりした空気を晴らすのに2、3日かかった。


まいの妊娠は竜夫にも告げられた

「本当はおめでたい日なんだが、お前のせいで台無しじゃ」

この日竜夫宅にはパトカーがきた。隼平が女性に卑猥なメッセージを送っていたとのことで警察が注意しにだ。

「イヤッオラ悪くない!」

「ふざけるな!女の人に気持ち悪いメッセージおくっといておまわりさんにも迷惑かけて、早くお前なんか死ね!」

「イヤッ!オラは百年生きる!」


隼平は竜夫からゲンコツを食らったあといつもの煽りツイートをはじめた

「俺は心が強いからいくら誹謗中傷されても生きる。アンチが必死になって納めた税金で百年生きてやる、ざまあみろ」

こんな放言には当然否定的なリプライがついた

「日本中に恥さらして、みんなから憎まれてよく百年も生きられるな」

カチカチ、ブロック

「お前すげえな、俺なら恥ずかしくて自殺するよw」

カチカチ、ブロック

「不幸を感じられないほどアンポンタンなのか…(困惑)しあわせそうでうらやましいでちゅねー」

カチカチ、ブロック

「なんだコイツら!オラはなんと言われようと生きる!死にたがり共はダマレダマレ!」

2階で大声を出し父親からゲンコツをもう一発くらおうがこの業魔は希死念慮を感じることはなかった。




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