第2話
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俺が生まれたキカ・ワセミツ村は、森と川に囲まれた小さな集落だった。村には魔法使いがいないわけではない。この世界では、すべての人が自分の
例えば、職業が
俺の父、エルマンと母、セリーナも、そんな当たり前の魔法を使う人たちだった。いや、二人に関しては、当たり前どころか、村どころかこの地方でも名の知れた凄腕の元冒険者だった。
父エルマンは、
母セリーナは、
俺はそんな両親の深い愛情に包まれて育った。前世で孤独だった分、その温かさが身に染みた。
俺が言葉を話せるようになると、両親は様々なことを教えてくれた。特に俺が興味を持ったのは、この世界を支える二つの大きな
ある日の夕食後、父エルマンが嬉しそうに語り始めた。
「カニス、この世界では、誰もが自分の職業に応じた魔法を使える。漁師は水を操り、農民は鍬を出す。だが、これは皆が幼い頃から訓練を重ねて、ようやく使えるようになるものだ」
父は人差し指を二本立てて、ゆっくりと続けた。
「一つは『
父は、苦労を語るように肩をすくめた。
「だからこそ、良い職業を持つ者は幼い頃から専門の教育を受け、何年もかけて一つの魔法を習得していく。初級魔法でも、一人前になるには十年はかかると言われている。上級魔法に至っては、一生に一つ習得できれば大したものだ」
母が、「そうよ、魔法使いはみんな、根気強く努力するのよ」と付け加えた。
「それに、いくら魔力が多くても、才能がなければ意味がない。魔法陣を読み解く知識、正確な詠唱、そして何よりも、魔法と対話する感覚……すべてが揃って、初めて一人前の魔法使いになれるのよ」
両親の言葉に、俺は改めてこの世界の魔法がどれだけ特殊なものかを知った。一つの魔法を習得するのに十年。しかも才能が必要。前世の俺なら、とてもじゃないが耐えられないだろう。
そして、もう一つの
「人は五歳になると、
父がそう説明すると、母が心配そうな顔で俺を見つめた。
「でも、世の中には『
前世で「無職」なんて言葉は、ただの肩書きに過ぎなかった。しかし、この世界では命に関わる問題だ。俺は、俺自身がどんな職業を授かるのか、知らず知らずのうちに緊張と不安を抱くようになった。
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