第9話 冒険者ギルドの登録

◇◆◇


都市の大通りを歩くだけで、

ユウの胸は高鳴っていた。

見たことのない料理の匂い、

磨かれた武具を掲げる露店、

吟遊詩人が奏でる楽の音。村では考えられないほどの喧騒に包まれている。


「さすが王都だな……」

ユウが呟くと、

ライルは淡々とした声で言った。

「浮かれるのは後だ。

 まずは冒険者ギルドだ」


石造りの堂々たる建物の前に立ったとき、ユウは息を呑んだ。

巨大な扉の上には、

二本の交差した剣の紋章。

人々がひっきりなしに出入りし、

活気と緊張感が渦巻いていた。


扉を押して入ると、空気が一変する。奥の掲示板には無数の依頼書が貼られ、受付には冒険者らしき者たちが列を作っていた。


「すごい……これ全部、冒険の依頼なのか」

 ミナが目を丸くする。


だが、

周囲の冒険者たちの視線がユウたちに向けられると、ざわつきが広がった。

「新人か?」

「子供じゃねぇか」

冷たい笑みや嘲りが混じる視線が突き刺さる。


受付に立つのは栗色の髪を束ねた若い女性だった。にこやかに微笑みながら言う。

「ご新規の方ですね。

 冒険者登録をご希望ですか?」


「はい!」

ユウが前に出ると、

彼女は名簿を差し出した。


「では、お名前と年齢をお願いします」


「ユウ、16歳です」

「ライル、18歳」

「ミナ、16歳!」

「……セイラン…17歳」


名前を記入すると、

次にスキルの確認が求められた。


ユウは深呼吸して、

ウィンドウを表示させる。

【スキル:調べる】


一瞬の沈黙。次の瞬間、

周囲から爆笑が巻き起こった。

「はははっ! 調べるだとよ!」

「紙をめくるほうがマシじゃねえか!」

「ギルドに何しに来たんだ?」


ユウの頬が熱くなる。だが、受付嬢は笑わず、真剣な眼差しを向けていた。

「……珍しいスキルですね」


その一言にユウは救われた気がした。


だが、次にライルのスキル【剣術】が表示されると、冒険者たちの空気が変わった。

「ほう……なかなか」

「将来性ありそうだな」


さらにミナの【弓術】、セイランの【魔術】が示されたときには、ざわめきとともに感嘆の声が上がった。


「ふむ、君たちの登録は承認されました」

 受付嬢はにっこりと微笑んだ。

「ただし……スキルの有用性は、すぐに証明してもらうことになります」


「証明?」

 ユウが聞き返すと、

彼女は一枚の紙を取り出して掲げた。


【新人試練クエスト

 依頼主:冒険者ギルド】

・都市近郊の《魔獣の森》にて、指定された魔物を討伐せよ。


「これが新人の通過儀礼です。

失敗すれば、登録は無効となります」


仲間たちは一斉に息を呑んだ。

ユウもまた、

胸の奥が熱くなるのを感じていた。


(ここで……

 俺の『調べる』を証明してやる!)



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