第7話 決戦の矢

◇◆◇ 


闇を裂くように矢が放たれた。

鋭い風切り音が響き、

オーガビーストの胸を狙う。


だが巨体は鈍重ながらも意外な反応を見せた。棍棒を振り抜き、

矢を弾き飛ばしたのだ。


「……嘘だろ」

 ユウが目を見開く。


「やっぱり正面からじゃ通らない!」

 ミナが叫ぶ。



◇◆◇


オーガビーストの咆哮が響き渡る。

その一歩ごとに、

大地が震え、家が軋む。

村人たちは悲鳴をあげて逃げ惑った。


「くそっ、行かせるか!」

ライルが剣を握り、巨体に飛びかかる。


鋭い剣閃が肩口をかすめる――だが。


「硬い……っ!」


剣は弾かれ、逆にオーガビーストの棍棒が振り下ろされる。


「ライルさん!」

 とっさにユウが叫ぶ。


間一髪、もう一人の青年、

セイランが突っ込み、盾で受け止めた。だが衝撃に耐えきれず、

吹き飛ばされる。


「ぐあああっ!」



◇◆◇


混乱の渦中、

ユウは必死に頭を働かせていた。

心臓が弱点なのは間違いない。

だが厚い胸板に阻まれ、

正面から狙っても届かない。


(……なら、別の角度から!)


ユウは震える声で叫んだ。


「ミナ!心臓は背中から狙えるはずだ!奴の皮膚は、肩甲骨の下あたりが薄い!」


「背中……!? でも、どうやって!」


「俺が囮になる!」


ユウは自分でも信じられない言葉を吐いていた。だが恐怖よりも、

「仲間を、皆を守らなきゃ」

という気持ちが勝っていた。



◇◆◇


ユウは村の広場へ飛び出し、

大声で叫んだ。


「おい、こっちだ! デカブツ!」


オーガビーストの赤い瞳が、

ユウを捉える。巨体が向きを変え、

棍棒を振りかざした。


(やれる……! 信じろ!)


ユウは走り回り、

狭い路地へ誘い込む。

巨体は入りにくく、動きが鈍る。


「今だ、ミナ!」



◇◆◇


ミナは屋根の上に駆け上がっていた。

弓を構え、背後の一点を狙う。


息を止め、心臓の鼓動を静める。

ユウの声が聞こえる。


「俺を信じろ! 絶対に当てろ!」


ミナは力強く頷き、矢を放った。



---


矢は夜空を裂き、

背中の一点へ突き刺さる。


「グオオオオオオッ!」


オーガビーストの叫びが響き渡り、

巨体がのけぞった。

その胸を抑え、暴れ狂う。


「効いてる……!」

 ユウが拳を握りしめる。


だがオーガビーストは、

なおも動きを止めなかった。

狂乱し、暴れ、棍棒を振り回す。


「くそっ、まだ足りないのか!?」



◇◆◇


ライルが立ち上がり、血を流しながら叫んだ。


「ユウ!もう一撃だ!今しかない!」


セイランも盾を構えて突進し、

巨体の足を止める。


「早く決めろ!」


ユウは再びスキルを発動した。


【対象】オーガビースト

【状態】背部に矢が刺さり、

 心臓を損傷。残存体力は少ない。

【弱点】次の一撃を心臓に深く貫けば致命傷。


「……ミナ!

 もう一度だ!今度は貫け!」



◇◆◇


ミナは最後の矢をつがえる。

手は震えていなかった。ただユウの言葉を信じ、狙いを定める。


「……これで終わりだ!」


弦が震え、矢が放たれる。


 ――ズドン!


矢は背を貫き、心臓を射抜いた。


オーガビーストの巨体が硬直し、

やがて崩れ落ちた。


「……やった」

 ユウが呟く。


静寂が村を包み、

村人たちは呆然と立ち尽くした。



◇◆◇


 やがて歓声が上がる。


「倒した! 

 オーガビーストが倒れたぞ!」

「生きてる!村が守られた!」


涙を流し、互いに抱き合う人々。


その中心で、

ユウとミナは肩で息をしていた。


「ユウ……すごいな。

 あんたのスキル、役に立った」

「いや……ミナの矢がなかったら、

 絶対無理だった」


二人は笑い合った。



◇◆◇


その夜、

村は安堵と共に皆、眠りについた。

だがユウの心は、静かに震えていた。


(【調べる】……やっぱり役に立つスキルだ。だけど、

これで終わりじゃない。

もっと……もっと強くならなきゃ)


少年の瞳は、遠くを見つめていた。



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