第27話 巨大鶏の唐揚げ大食い

 出場する選手達がステージ上に出揃い、それぞれが席に着く。


 体格が良くて多く食べそうな男が多ければ、華奢な女性の姿もいるから僕みたいな小柄な男が居ても珍しくない……よね?


 ちなみに出場する選手の中で僕が一番小さい。


「知らない人の為に説明しますと、バードバトラーは主にランクCのダンジョンに生息する大型の鳥モンスターですね。特に九州の大分ダンジョンにはより多く見かけられます!」


 鶏の唐揚げの本場でよく目撃されてるって事は、もうそれで食べてくれと言ってるようなもんなのかな。単なる偶然かもしれないけどさ。


 とりあえず言える事は僕の前に置かれた鶏の唐揚げが……まぁデカい!!500g以上あるんじゃないかと疑うぐらい大きいよ!?


 鶏の唐揚げって言うけど、1つの大きさでこれは山賊焼きの方だと非常にツッコミたくなる。


 ただ香ばしい匂いが鼻に伝わると食欲を刺激して、不思議と美味しそうに見えた。


「神城君ファイト〜!」


 観覧席からリオンさんの声が飛んで、僕がそちらを見ればカメラを回す妹と一緒に応援してくれてる。


 ただ唐揚げか……大好きだけど大食いとしては難しい食材なんだよね。勿論やるからにはベストを尽くすつもりだけど。


「制限時間40分ではレディ〜……ゴー!」


 前もって手を合わせておき、スタートの合図をMCカリーが行うと共に僕は目の前の巨大鶏の唐揚げにかぶりつく。


 サクサクの衣で中身の鶏肉が柔らかくて凄くジューシー。バードバトラーの肉は食べた事あるけど、此処まで巨大なのは無いからどうなるかと思えば、凄い美味しく食べられる。


 唐揚げのエキスパートが作ると、ダンジョンのモンスターも上手く調理出来る事に、美味しさと共に驚かされた。



「おかわりぃ!」


 そこに早くも次の皿を要求する手が、威勢のいい男の声と同時に上がる。僕が食べながらチラッと目を向けると、分厚い真紅の鎧を着た坊主頭に近い赤髪の男がいた。何かスポーツマンっぽくて見た目は食べそう。


「もう1枚お願いしまーす♪」


 今度は可愛らしい女性の声が聞こえてくる。そちらを見れば女子向けの可愛らしくデザインされた、桃色のローブを纏う桃色髪の女子だ。確かあの人は僕と同じJTuberで、2キロぐらいの炒飯をペロリと平らげてたっけ。


「おかわりお願いしまーす」


 それに遅れて僕はまず一皿目の鶏の唐揚げ500gを完食。美味しいからサクサク行けるよこれは。



 リオンSide


『さぁさぁトップはチームアイアンシールドのリーダー、パラディンを務める大食い自慢の盾山選手! 続いて女性大食いJTuberのナターシャ! そして今大会最年少にして最も小柄なこちらもJTuber、グルーチャンネルのグルーこと神城選手!』


 大食い大会とかテレビや動画でしか見た事ないけど、実際に皆が勢いよく食べる姿を見ると迫力が全然違って見えて面白い。


 その中にちっちゃい神城君が混じって巨大唐揚げに食らいつき、皿の枚数を重ねてるのは凄いと思う。


「うーん、お兄ちゃん今3位ぐらいかな?結構レベル高いみたい」


 甘利ちゃんがカメラを回しながら、神城君の状況を確認してる。あたしがカメラを回そうかと申し出たけど、自分がやるって譲らなくてこの状況。


「体格良い人が沢山参加して危ないと思ったけど、皆あんまり進んでないね」


「唐揚げの大食いって脂がきついから中年のおじさんには大変だと思うよ。ほら、2皿目でもう辛そうにしてるのいるし」


 神城君が大食いの世界に身を置いて、甘利ちゃんもその世界についての知識があるみたい。


 少なくともあたしは1皿で間違いなくお腹いっぱいになる。それを何皿も行けるなんて、とてつもなく凄い事だと思う。


 というかそもそもこの巨大唐揚げを作れる技術が、同じ料理人として凄く見えるよ!あたしもこれぐらい作れるように料理の腕を更に上げないとなぁ。


「あれ、神城君トップに立ったんじゃない?」


「え?あ、本当だ!お兄ちゃん頑張れー!」


 その時あたしが神城君と他の出場者の皿の数を見てると、神城君が一歩リードしてるように見えた。それを甘利ちゃんも確認すれば応援する声が大きくなっていく。


 ただ、神城君もペースが落ちて来て大変そう。最後まで頑張れ〜!



 明弥Side


「神城選手6皿完食で鶏の唐揚げを3キロ平らげたぁー! 小さな体の何処にそんな入るのか!?」


 美味しく食べ進められてる。唐揚げが絶品で凄く美味しいけど……。お腹いっぱいになるよりも顎の方が疲れて来た!


 これが大食いの唐揚げの難しい所で、大量に食べる事で胸焼けも大きな壁になると言われるけど、衣を噛んで食べていかなきゃいけないから顎を結構使う。


 此処で普段の大食いチャレンジの時、あまり硬い物を多く食べていなかったツケが回ってくる。正直こんな多くの、それも大きな唐揚げを此処まで多く食べるなんて、僕の人生で初めての事だ。


「やべぇ〜、腹いっぱいだ〜」


「もう顎疲れてきたよ〜!」


 僕の上位を行っていた左右の2人も大変そうで、僕はとりあえず目の前にドンと置かれた巨大唐揚げを食らう。


 気の所為か最初に見た時よりも大きく見えてしまうのは、結構メンタルが追い詰められてる証拠かもしれない。


「おーっと終盤に来て神城選手、まだ唐揚げに食らいつく!」


 もう自分の前にある皿を1つ完食しようと、僕は唐揚げをなんとか食べ進める。だって甘利が今動画で撮ってるし、動画的に皿にお残しがある絵は良くないから!炎上とか怖いし燃えたくない!


 そこは燃やすならJTuber魂を燃やして綺麗な完食を狙う。



「タイムアップー!」


 僕が最後の一口を食べ切るとほぼ同時に、MCカリーから試合終了の合図が出された。


 これがカウントされるか分かんないけど、僕や大会参加者は大会スタッフの皿の枚数が数え終わるのを待つのみ。



「結果が出ました、第3位はナターシャ選手で5皿の2、5キロ! 第2位は盾山選手で6皿の3キロ!」


 僕の前を走っていた2人は失速したみたいで、優勝には届かず。2人がそこに届かなかったという事は……!?


「優勝は7皿完食3、5キロを平らげた神城明弥選手でーす!!」


 僕の優勝で会場からは大きな拍手が沸き起こる。今まで僕が何かで優勝して、こんな拍手をもらった事なんて無いから嬉しい。


 これがよく言われる勝利の美酒っていうのかな?とにかく初めて優勝出来た!


 ダンジョンを初めて制した時とは、また違う喜びを僕は味わう。

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