第7話 初めての仲間とのダンジョン探索

 パーティーを組んだ事は無くて、ダンジョンには結構行ってるつもりでも、かなり新鮮な気持ちになれた。


 僕とリオンさんがこれから向かうのは都内にあるGランクのダンジョン。この前の曙橋ダンジョンと似たような所だ。


 10年ぐらい経って成人を迎える年齢になっても、まだ一番下のランクの所に1人で行くのは僕ぐらいかもしれない。


 分かんないけど!


「でもわざわざ、良いの? Fランクのリオンさんが居るならFランクのダンジョンにも行けるのに」


「神城君は強いけどまだパーティ組んで初日だし、いきなり上のランク行くのは危険だと思うから。色々戸惑って普段の力を発揮出来なくてピンチ! なんて事にならないよう、まずはパーティでの冒険に慣れとかないと」


 僕はGランクだけど、チームでそれより高いランクの人が居たら自分がそのランクに到達してなくても、ダンジョンに入る事は可能だ。下のランクの人にとっては未知の領域にかるから、危険度は結構上がってくるけどね。


 しかしそのまま押せ押せでFランクに行こう、なんてイメージあったけど結構冷静なんだなぁ。



「あ、そうそう! ダンジョン入る前にこれ渡しておかないと」


「これは?」


 目的地のダンジョンが近づく道中で、リオンさんから僕に紫色の包みを差し出される。


「あたしの手作りおはぎ。途中でもし空腹で敵がいて料理を作ってあげる暇が無い時の為のエネルギー補給よ! パンとかと比べてお米は腹持ち良いし、もち米だからよりお腹空き難くなると思うから」


「それは凄く助かるよ、ありがとう!」


 和菓子好きの僕としては嬉しい。それも僕の空腹を最小限抑えられるよう、考えられた物だ。おはぎをありがたく受け取れば、大事に自分の道具袋に仕舞うと再び共に歩いて目的地を目指す。



 やがて見えてきたダンジョンは、元々空き地となっていた場所がダンジョンと化した所だ。


 何もなかったはずの場所に洞穴が出現した時は最初、皆驚いたもんだけど慣れというのは凄いもので、今では「なんだ最低ランクのダンジョンか」というリアクションが大半を占めるぐらい。


 本当に人類の時代への適応力って凄いもんだよ。


「よっし、そんじゃ行きますか!」


 張り切っているリオンさんは頼もしく見えた。と思いきや僕の背後に回って背中を押して来る。


「さ、お先にどうぞ神城君!」


 ああ、僕が先に入るのね……。


 まぁ僕は彼女のボディガードみたいなもんだし、リオンさんには料理作ってもらわないといけないから、ちゃんと守らなきゃいけないし。


 そこは男として女性を守らないとね!



 ダンジョンの中に入ると、曙橋のダンジョンと同じく外の明るい青空から一変、暗い雰囲気が周囲に漂い僕達の緊張感を煽ってくる。


 道の途中には所々に草が生えたり、稀にキノコが生えたりしているのが見えた。しかし料理人で食材を集めるリオンさんはそのキノコに見向きもしない。


「キノコあるけど取らないの?」


「あれ毒キノコよ。稀にGランクのダンジョンにも食べられるキノコは生えてるけど大抵はそれで、あの模様は確定だから」


 目利き半端ないなぁ。


 流石に多く食べる僕も毒キノコは食べたくないし、道にある物は素通りして先に進む。


「ブギー!!」


 少し進むと、モンスターが襲いかかって来る。見た目はイノシシで、こちらに敵意があるのは明らかだ。


「おっと!」


 真っ直ぐ突っ込んで来る姿は僕にはよく見えて、冷静に右へ移動して躱す。


「ブギャ!」


 モンスターは勢い余って、目の前の壁に思いっきり頭から激突。効果音つけるならガツン!って感じでぶつかってたね。


 このモンスターは誰がそう付けたか知らないけど、ダンジョンボアーと名付けられて、Gランクのダンジョンに潜る時は結構な確率で会っている。なので比較的戦い慣れた相手だ。


「急に出て来てビックリしたけど、神城君って結構身軽で良い動きするんだねー」


 リオンさんも上のランクに行ってるせいか、Gランクの魔物の奇襲には驚いていなかった。それより僕の動きの方に驚いたみたい。


「まぁ1人で潜ってた時、地道に戦い続けてた相手だからね。そりゃ動きに慣れるよ」


「ふーん、そういうもんかぁ。っと自滅してくれたから今のうちに……よし、力は尽きてるっと」


 するとリオンさんは自滅で倒れたボアーの所に向かう。何をする気なんだろうと、僕が見守っていたらリオンさんの力を目の当たりにする。


「収納ー!」


 リオンさんが地面に両手を突くと、ボアーのいる地面は黒く染まって体が沈んでいく。まるで黒い地面に食われるか飲まれるかみたいだ。


 ボアーが完全に飲み込まれて、姿を消すと共に黒い地面はいつの間にか消え去り、何もなかったかのように元通りとなった。


「何をしたんですか……!?」


 驚きのあまり、つい彼女に対して敬語となってしまう。


「収納したんだよ。あたしのスキルは収納で、対象の相手が食料とか人間が口に出来る物とみなされれば何でも異空間に吸い込んで、そこに保存されるの。これでいちいち運ぶ手間無し! あ、食料以外は出来ないからね?」


 何かとんでもないスキルっぽいなぁ。食料だったら何でも吸い込んで、持ち運びが出来る。それ限定とはいえ、かなり優秀じゃない?


 現時点で僕の大食いスキルより便利さを大きく超えてるよ。


「それじゃあ厄介だけど食料に出来る、強いモンスターとかも収納出来るんじゃない?」


「あたしもそう考えたんだけどねぇ、スキル説明で「抵抗する力のある敵やモンスターには無効」って言われちゃって無理なんだー」


 しっかりチート化の対策はされていた。


 そんな甘い話は無かったみたい。そこはちゃんと自分で倒せ、と言われてる感じがしたのは気の所為かな?



「ブギー!」


「ブギー!」


「ブギィィ!」


 っと、呑気に考える間もなく新手が来た!結構多いダンジョンボアーの集団が吠えて、僕達を真っ直ぐ睨んで戦闘する気満々って感じだ。


 数も多いし、流石に魔法は使った方が良いね!


「フラム2(ツー)!」


 僕は両掌を合わせ、ボアーの集団に向ける。そこから炎が渦を巻きながら現れ、ボアー達を飲み込んでいく。


「ブギャーーー!!」


 イノシシのモンスター達は炎の渦に飲まれ、その中で焼かれていった。一気にイノシシの丸焼きが出来上がるね!


「プギィィー!」


 そう言ってる間に新手のボアーが登場。あれ、そのモンスターの大量発生でも起こってる?



「ふー……」


 周囲は焼かれたボアーだらけとなって、僕はその中心で一息ついて座り込んでいた。まさかのモンスター大量出現に結構魔法を使って、予想外の消耗だ。


 これがとんでもなく強いの沢山ならヤバかったけど、Gランクのモンスターばかりだったからね。レベル5の僕で此処まで倒せるぐらいだから、それより上の猛者達はもっと鮮やかに秒で終わってそう。


 僕のスマホからはレベルアップを告げる声は何も聞こえず、結構倒したつもりなんだけど、これでも上がらないらしい。


 ちなみにリオンさんにも敵は襲いかかって来たけど、そこは僕より高レベルで上のランク。「えいや!」と回し蹴りでボアーを蹴り倒す姿が見えた。格闘術を習ってるのかな。


 ミニスカートであれやったら見えそうだなぁ……いや、見てないからね!?


「お腹すいた〜……」


 レベル1のフラムより広範囲で、威力も高いレベル2を連発したので消耗はより大きく、カツサンドを食べてきた僕のお腹は早くもご飯を求めている。


 僕が低ランクで長年止まっている最大の理由としては、大食いスキルのデメリットである空腹。魔法を連発して使えば、お腹の減りはそれだけ増してしまう。減ったら力が出ないわ、目が回ったりするわ、魔法が使えないわで何も良い事が無い。


 長時間潜れなくてGランクの最下層すら行った事も無く、何時も途中で引き返している。勿論お弁当とか食料を持ってったりしてるけど、お腹が空いてすぐ食べて無くなるから結局最後まで持たないんだ。


 でも今日は違う。


「はい来た! あたしの出番ねー」


 ダンジョン料理人の姫島リオンさん。この時、僕には彼女が光り輝く女神に見えた。




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 次回は前半リオン視点、後半明弥視点と分けた回となります。

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