子猫っぽいクマちゃんの可愛い肉球

猫野コロ

第1話 解き明かし、迷宮にいれるクマちゃん。

 名探偵クマちゃんはハッと、もこもこしたお口をピンク色の肉球で押さえた。


「クマちゃ……」


 まちゃかこれは……、と。


 クマちゃんのつぶらなお目目にはしっかりと映っていた。

 鉢植えからこぼれた土。

 倒れたコップから流れ出た水。

 そしてその下で乱れ、白から茶へと変化していく謎の袋――。


 クマちゃんは、子猫がミィ……と鳴くような声でつぶやいた。


「クマちゃ……」


 事件ちゃ……。


 遠くから、青年たちのはなし声が聞こえる。


 ――リーダー俺の枕カバー知らない?


 ――知るわけねぇだろ。


 生後三か月の子猫をはるかに超える頭脳をもつ名探偵は、うす汚れた袋の謎を解明するため、秘密の道具をごそごそ……と、大体何でも入る鞄から取り出した。


 それは、近場で手に入れたハサミを、名探偵が色々凄すぎる魔法で猫手サイズに作り替えたものだった。

 子猫の肉球でもつかみやすく、それでいて切れ味はするどい。

 まるで刃物にこだわりがある冒険者が、毎日欠かさず手入れをしているような、上質なハサミだ。


 遠くから、青年たちのはなし声が聞こえる。


 ――リーダー俺のハサミ見なかった? ここ置いてたんだけど……。


 ――知らねぇっつってんだろ。


 穢れなき被毛を持つ名探偵は、何でも切れそうなハサミを手に、きちゃない袋にヨチヨチ……と近づいた。



 汚水にひたされた袋は名探偵の拾得物によってやや斜めに開かれ、その結果、『中には何もない』という真実が解き明かされた。


 名探偵が証拠品をずるずる……と部屋のすみへ運ぶ。

 それから、大体何でも入る鞄の中に、びちゃ……と、かつて袋だったものをファイリングして、今回の事件を締めくくった。


 袋があれば引きずってしまう子猫とよく似た性質をもつ名探偵は、丸くてふわふわな頭をうむ、と頷かせて言った。


「クマちゃ……」


 解決ちゃ……、と。


 遠くから、青年たちのはなし声が聞こえる。


 ――うわっ、何ここぐっちゃぐちゃなんだけど!!


 ――リオ、うるせぇ。

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