チェーンソーの使い方
視覚内に表示されるエネルギー貯蓄率が98%を表示。
通常駆動で動き続ければ、1%で約5分の活動が可能。
100%で約500分=約8時間、一日の三分の一、活動が出来る。
だが、それはあくまでも歩行や移動を行う際に使用されるエネルギー量で計算した場合だ。
高速移動を行う為のブーストを起動したり、機体に備わる特殊性能を使用すれば貯蓄率は急速に消耗されていく。
その為、一度の戦闘で活動出来るGMの時間は凡そ、一時間程度だ。
「目標を確認」
ギン・ガラクは視覚共有内で表示されたゼノスティールを認識する。
地面を走行するのは、二足歩行で移動するレーザー級の機械生命体だ。
大きさは約五メートル、下半身は逆関節の二足脚型であり、上半身は細長い筒の様な銃火器が設置されている。
レーザーを射出する際、膨大なエネルギーが消耗されるため、予め地面に向けて鳥類の鉤爪の様な足で地面に食い込ませて、レーザーを射出させていた。
発射口の先端が紫色に輝き出した。
上空を飛行する巖鐵弐を撃ち落とそうとしているのだろう。
だが、ギン・ガラクは冷静を保ちながらブースターの出力を落とす。
高度が低下していき、レーザー級のゼノスティールの発射口が逸らす事無く機体を追い続ける。
『巖鐵弐、熱源反応ありッ、レーザーによる攻撃が来る』
耳元で聞こえて来る軍事基地戦艦に属するオペレーターの声にギン・ガラクは頷く。
「分かってる―――前方に見える奴は、囮だ」
即座、ギン・ガラクはハンドルを強く握り締める。
巖鐵弐のブースターが最高出力となると、巖鐵弐の死角となる位置―――そこから、レーザー級のゼノスティールがレーザーを発射していた。
瞬時にGMを操作してレーザーを回避すると共に地面スレスレにまで高度を落とし、脚部で地面に近付ける、そのまま脚部に備わるスラスターを起動。
脚部スラスターにより地面を滑走する様に動く事が可能。
「チェーンソー展開」
ハンドルを操作して腕部を切り替える、背中に背負うチェーンソーを肘の接続部分に結合し、両腕でチェーンソーを使用可能状態にする。
『前方、レーザー来ますッ』
オペレーターの声を無視して、巖鐵弐を前方に高出力で滑走させ距離を詰める。
ゼノスティールのレーザーが照射、その一撃を、ギン・ガラクは高速で滑走した状態で地面にチェーンソーを接着し高速回転を行う。
これによって、チェーンソーのベルトがキャタピラの様に稼働し、斜め前方へ進む様に移動、レーザーをスレスレで回避しながら接近を続ける。
『なんだアレはッ』
『何故スラスターで回避しない!?』
軍人たちは驚きの表情を浮かべていた。
脚部スラスターは脚部に八つ推進力機構を備えている。
その八つの推進力機構を操作する事で前方後方左右斜め、どの様な位置でも移動出来るのだ。
だが、何故ギン・ガラクがそれをしなかったのか理解出来なかった。
『全てのスラスターを前方へ進ませる様に噴出している、そしてゼノスティールのレーザーを回避するにはスラスターで軌道を変えるよりも、チェーンソーを使い無理に軌道を変えた方が、高速で移動しつつ、回避が出来ると考えたんだね』
シナノ・シリウスはギン・ガラクの一見、意味の分からない、あるいは無意味な行為に対してそう告げた。
『しかし、何故その様な真似を?スラスターを使い回避をした方が楽なのでは?』
『そうだね、レーザー級が一体だけなら、それの方が余裕だろうけど』
レーザー級のゼノスティールは全部で十五体。
夫々適切な位置と距離を取り、ギン・ガラクを捕捉している。
『スラスター移動で逃げる為に軌道を変え続けると、一定の速度にまで減速してしまう、そうなると回避をした瞬間に別のゼノスティールのレーザーで狙い撃たれちゃう……だから、レーザーを回避する為に、速度を落とさない様にスラスターの推進力を移動速度のみに集中させ、回避行動をチェーンソーで行っている』
巖鐵弐がレーザー級ゼノスティールに接近する。
それを狙い、他のゼノスティールが発射口を構えた。
『仲間諸共撃つ気だなッ』
『一旦、その場から離脱する他無い』
『いや―――何故、疾走しているッ!?』
ゼノスティールに真正面からでは無く、横を素通りする様に腕を伸ばし、チェーンソーで切り裂こうとする。
『一機は確実に殺せる、だがッ』
『チェーンソーで切り裂けば、即座にレーザーに狙われて集中砲火だぞッ!!』
『あのガキ、心中でもするつもりかッ!!』
彼らの杞憂、焦燥、心配の声。
しかし、ギン・ガラクは、その声に反応する事なく、ゼノスティールの機体に向けてチェーンソーを真横に叩き付ける。
――――刃が回らない、チェーンソーを使用して、だ。
『ッ!?ゼノスティールの機体がひしゃげた!?』
『いや、それよりも、ゼノスティールの機体にチェーンソーを引っ掛けて、無理に軌道を変えたのか!?』
チェーンソーの刃を回転させれば、そのまま機体を切断してしまう。
だが、チェーンソーの刃を回転させなければそれは唯の鉄の板に過ぎない。
その状態で対象に叩き付ける様に鉄の板を押し当てれば、巖鐵弐の機体がゼノスティールを中心に旋回し、軌道を変える事が出来る。
そして、他方からのレーザーが方向転換に使用したゼノスティールを撃ち抜き、本来一直線に疾走する筈だった位置に、予測で射出されたレーザーが地面を溶かした。
前方、ゼノスティールを捕捉するギン・ガラク。
だが、ゼノスティールは脚部から大量のスモッグを放出した。
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