異世界に転生することになったので、エロ漫画でよくあるチートを持ち込んでみることにした

@HaLu_

第1話 今、なんでもって言ったよね?

「ようこそ天界へ。サイトウリョウマ様。誠に残念ながら、貴方は不慮の事故により命を落としてしまいました。ですので私の世界へと転生させることが決定しました」


「は、はぁ……」


 真っ白な空間に不釣り合いな金色に輝く仰々しい椅子。その椅子に座っている金髪の女性。白いドレスのような服を着ていて胸も太もももでっかい。正直目のやり場に困る。


 そんな彼女に今の状況を説明されているものの、何一つ頭に入ってこなかった。

 自分が死んでしまった……というのはなんとなく実感している。信号を無視して横断歩道に突っ込んできたトラックから子供を庇ったというのが最後の記憶だ。今振り返ってみればなんで体が動いたのか自分でも分からない。多分大学の帰りに新作ゲームを買えてテンションが上がりすぎてたんだろう。あの子が無事なら良いんだが。


「……転生させるにあたって、サイトウ様には特別な能力を授けさせていただきます。要望があればなんなりと仰ってください」


「特別な能力……?」


「はい。サイトウ様のような方に分かりやすくお伝えするならば【チート】と呼ばれるものです。身体能力の向上。特別な技能。無限の魔力などなど……ある程度であれば対応可能です」


 なるほど。つまり俺は異世界に転生させられて、チート能力でウハウハしてもいい権利を得られたということだ。まぁ子供を庇ったんだからこれくらい許して欲しい。

 だが、この甘美過ぎる誘いにはいくつか気になることがある。それを問い詰めてからでも遅くはないだろう。


「……何かやんなきゃいけない事とかありますよね?」


「……お察しが良い。今からサイトウ様を転生させる世界には、魔王と呼ばれる凶悪な存在がいます。その魔王を倒して欲しいのです」


 なるほどそういう感じ。ただの人間風情に妙にへりくだっていると思ったら隠してた事情がありあがった。素直に教えてくれたからいいものの……さては隠し通すつもりだったな?


「で、ですが、魔王討伐の暁には完全な自由を約束します。そのまま異世界で暮らすの良いですし、元の世界に生まれ直すことも可能です。もちろん条件なども指定出来ます」


「ふむふむ……」


 魔王の件を隠されていたことには不満はあるが、この女性が悪い奴というわけでもなさそうだし、自由なチートを貰えるのであればメリットの方が大きそうだ。


 それに…………もしもこんなシチュエーションになったらヤりたかった事もあるしな。


「分かりました。でもその代わりに、今から言う能力を俺に下さい」


「はい。勿論です。なんでもおっしゃってください」


『なんでも』という言質を取り、俺は恥ずかしがることなどなく、堂々と胸を張って宣言した。


「エロ漫画を完全に再現できる能力をお願いします!」


「………………はい?」


 俺の宣言に困惑する女性。しかし俺は止まることなく詳細な条件を語ってやった。


「エロ漫画の中には色んな能力……それこそチートと呼ぶべき物が沢山あります!完全催眠、常識改変、認識阻害、感度操作、時止めその他諸々…………その再現が可能な力をください!」


「……はっ…………はぁ!?」


 その説明に女性は顔を真っ赤にして声をあげ、急に自分の体を腕を使って隠し始めた。ということは自分の体が性的であることは理解しているらしい。そういうのいいね。最高。


「何を言っているのですか!?そ、そそそんなの無理に決まってます!」


「それは技術的な意味でですか?」


「技術的には……可能ですが!その……女神として…………そんな……えっちな……能力を授ける訳には…………」


「プライドで世界は救えませんよ!それにどうせ他のチートでも最後にはイチャイチャしてるんですから!対して変わりません!」


「う、うーん…………そ、そうなのかなぁ……?」


 よし。押せばいける。チョロいぞこの女神様。


「大丈夫です!えっちな能力なんかじゃありません!あくまでもそういう本の出来事を再現できる力です!決してエロい事とか、ましてや悪事には使いません!絶対に魔王を倒してみせます!」


「…………な、なら……いいのかな……」


 女神様は照れながらも俺のバカみたいな説明に納得してくれた。そして人差し指を俺に向けて軽く動かした。


「はい。これで完了です」


「……あ、はい。やけにアッサリですね」


「そういうものです。ではサイトウ様。何とぞ魔王討伐をお願い致します」


 女神様が頭を下げると、俺の体がいきなり光りだし、その光が粒子のようになって爪先から体が消え始めた。


「転生先はあちらの世界で最も私への信仰の深い教会となってます。そこにいるシスターに女神の使いであることを説明してください。後は成り行きでどうにかなるはずです」


「…………え?成り行き!?まさか行き当たりばったりなの!?」


「………………」


「ちょ……おい!目背けんな!おい!」


 女神の口から出た『成り行き』という言葉に一気に不安を覚えた俺は目を背けやがった女神に近づこうとした。しかし、女神が座っていた椅子にたどり着く前に俺はその場から完全に消えてしまったのだった。

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