第3話 Thinking out loud
朝は食べずにコーヒーだけ、人には妙な共通点があるものだ。コーヒーの匂いで裕之が目を覚ました。
シャワーを借りると言ってバスルームに入って行った。
夏子はコーヒーだけはきちんとしたコーヒーカップとソーサーで飲みたいといつも思う。そうでないと一味違う気がするのだ。二人分のコーヒーを淹れることに喜びを覚えずにはいられない。今の時間を愛おしいとさえ思える。
後ろからその様子をしばらく見ていたらしい。あのさ、と裕之がタオルで髪を拭きながら夏子の側に来た。今のプロジェクトが片付いたらコペンかアムスにポストを用意してもらえるか打診してるのだと、少しはにかむ様に言う。
アムステルダム支社?
夏子が訊くと、うんと頷いた。咄嗟にそれは、と言ってしまってから言葉が続かない。嬉しいと思ったのに素直に言っていいのか分からなかった。
それを見ていた裕之がそっと夏子の髪に触れながら、しばらくこっちに居たいんだと言った。あまり表情は変えずにそれでもはっきりと、当分日本には戻りたくないとも。
それはそうかもね。分かる。と言うと裕之はこっちでのんびりとするのもいいかと思って、と少し笑って見せた。
アムステルダムは好きだと夏子は思った。飛行機で2時間の距離ならたまには会える。そう思った時、裕之がそれを口に出して言った。今ほど頻繁という訳には行かないけれど、一人暮らしだし、小ぶりで比較的便利な場所に住めると思う。
それだけ言えば、あとは言わなくとも分かるという風に抱き寄せられた。きっと裕之は時間が必要なのだ、私には待つ余裕がある。そんな事を思った自分に気付いて、内心驚いていた。私はこの人を待つつもりなのだ。
今夜どこかで食事をしないかと訊かれたので、そうね。いいかもしれない。と答えた。裕之はあとで連絡すると言って仕事に出かけて行った。
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