クレーンゲーム

「志帆、お前下手くそだな。クレーンゲーム」


「だって君ほど入れ込んでないんだから。しょうがないでしょ」


「こんなんじゃ収支が合わねえよ。ほら、貸してみろ。あと三つ残ってんだろ、これ、俺が全部獲ってやるよ」


「君がやりたいだけじゃん」


「お前の金で遊んでるわけじゃねえんだから、いいだろ」


「ええっ。やってみるか?とか言って勝手に一回分だけやらせといてから、その言い草はないじゃん。そんなこと言うんだったら、最初から———」


「うるせえ、いま集中してんだよ…」


「うるさいって、ちょっと、」


「ほら取れた!どうだ、こんなの、簡単なもんよ」




 少し見ないうちに、君はかなりグレーなことに手を染めるようになったみたいだ。


 ゲームセンターのクレーンゲームでたくさん景品を獲って、それを、隣の中古屋に売り捌いて小遣い稼ぎする。それだけじゃない、価値の高そうなものは家で保管しておいて、SNSでどうしてもその景品を手に入れたいという地方や外国の人たちに高値で売り捌いているらしい。


 それっていろんな意味で問題ないの?って聞いたら、実力で掴んだものを元手にやってるんだから問題ないだろ、と答えが返ってきた。問題ないのかもしれないけれど、わたしの目にはやっぱり、それなりにいけないことをしているんじゃないか、と映る。


「…いけないんだ」


「だからさー、いいだろ。だいたい、買うほうが悪いんだよ、こういうのは」


「転売のフィギュアを買うような悪いやつから小遣いを稼いでる人が、そんな偉そうな口聞けないと思うけどな」


「うるせえ」


 君はそう吐き棄てると、肩を怒らせて中古屋のほうへと歩みを進めていった。


「あっ…!ちょっと、待ってよお」


「待たねえ。ついて来たけりゃ、ついて来いよ」


 新入荷のフィギュアの入った袋を小脇に抱えて、わたわたと歩く君の背中は、もう成長期を過ぎてとっくに大きくなっているはずなのに、なんだか小さく見えた。


 けれども、それが愛おしく感じられて、わたしはもう、それだけでよかった。


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