様子のおかしい〇〇展【不思議】

ほねなぴ

#1 ひっくり返り展

その展覧会は、町のはずれに突然現れた。

 大学生のユウトは、夏休みの自由研究のネタ探しに、なんとなく足を踏み入れてみる。

 最初の展示室には──。

 ひっくり返ったカメが、ぽてぽて足を動かしていた。

 その動きはあまりに必死で、そしてまったく前進していなかった。

 次の展示は、ゴミ箱に頭から突っ込んで抜けなくなったペンギン。

 もがくたびにゴミ箱ごとカランと転がり、係員が「展示物にはお手を触れないでください」と淡々と注意する。

 さらに進むと、ふわふわのクッションに仰向けで沈み込み、

 「人生に悩みなんてないです」みたいな顔で熟睡しているナマケモノ。

 観客は誰一人声をかけず、ただ見守る。

 ──なんだこれ。

 ユウトは笑いをこらえながら展示室をめぐった。

 そして最後の展示にたどり着く。

 そこにあったのは、大きなパネルに映し出された写真。

 「講義室でひっくり返って寝落ちしている自分」だった。

 ユウトは固まった。

 ……展示になるレベルなんだ、これ。

 なんとも言えない気持ちを抱えながら、彼は出口へ向かった。

 外の看板にはこう書かれていた。

 ようこそ、『様子のおかしい〇〇展』へ。

 次回展示も、お楽しみに。

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