第9話

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タイムマシーン




「タイムマシーン」




第七話




「初陣~涙と花と」




前編




「おーい!優、朝だぜ! 起きろ起きろ!」




「ん~ムニャムニャ」




「バウッ!!」




(ハッ!)




朝目覚めると、目の前には大きなタオルを咥えた、巨大なライオン、獅子丸が頭を擦り付けてきた。




(あ、そうだ、今日は訓練初日だ!)




僕は急いで顔を洗い、服を着ると朝食を食べにせかせかと、急ぎ足で食堂に向かおうとした。




「ハハハ! 全く、日本人って、本当に時間厳守なんだな!」




そう言い、アドニスは昨日のパーティーで、持ってきた食べ残しの大きな鳥の丸焼きを、相棒の獅子丸と共にかぶりついていた。




これから、朝ごはんなのに、本当に彼は大食漢だ。




そして、アドニスの回りには有り得ないサイズのダンベルが置かれてある。





やがて、鳥の丸焼きを数匹、獅子丸と食べ終えると、まるで食後のデザートでも食べる気分で朝食を食べに食堂に着いた。




「おばちゃん!おっはよー! トースト10枚と、牛乳10杯、それに、果物たっぷり頂戴!」




アドニスはその明るい太陽の様な性格から、皆に愛されているのが分かる。




「あら、坊や、今日も元気ね~、ちょっと待っててね!」




「おう!アドニス、こっちのボロネーゼも食ってけ!」




「こっちも、こっちも!」




「皆、ありがとうよー!優、ほら一緒に食べようぜ!」




食の細い俺は、おにぎりと、卵焼き、お浸しなど、あっさりした和食を少しずつ食べた。




「ここの食堂は世界中の料理を作ってくれるから、最高だよな! それ、ライスボールだろ? 日本のお握りってのは本当に美味しいよな!」




アドニスは食べるのが本当に大好きなんだな~と、考えてると、何だかこちらまで、ホッコリした気持ちになる。





やがて、僕達は朝食を済ませると、それぞれの任務についた。




さっきまでの無邪気さとは別人の様に変わり、アドニスは北海道及び東日本全域の髑髏の騎士達を倒す為に七人の騎士達、誠悦部隊を選び、武器を装着すると、キリッとした顔で颯爽と隠れ家を後にした。




「優、また後でな!」




「あ、、」




俺が返事をする間もなく、疾風の様に駆けて行った。




ポカンと呆気に取られていると、長老が、俺に調子はどうだ?と尋ねてきた。




どうやら、チーズトーストが好物らしい。




痩せ型の俺にも、もう少し食べる様にと、その三枚あるチーズトーストの内、一枚を僕に渡してきた。




そして、今日は、俺に、まず、どの部所に就きたいか、など様々な、オリエンテーション?みたいな事を話してくれた。




「優、では、これから、武器の扱い方を練習しようかの。」





僕は例の黒刀を使い、稽古を行った。




勿論、刀だけではなく、様々な、恐らく未来からの?不思議な装備道具の使い方なども習った。





それにしても、阿寒の空気は澄んでいて、美しい。




また、もう春だというのに、随分と風が冷たい。





「優、刀はどうだい? 手に馴染むかの?」





「はい!とても!」




まるで僕の身体の一部になった様な感覚がする。




一振りすると、その空気を切り裂く感覚は、すっかり自分が強くなった様な、そんな錯覚を覚える程だった。




「優、それでは、今度は、この位置に向ける思いで気合いを込めて振ってみなさい。」




そう言うと、長老は100m程離れた位置に立った。




え??




届くわけない、と普段なら思うが、僕はこの赤と青の色を見ると、出来る! そう思い全力で振ってみた。




すると、まるで、何かのバトル漫画でもみているかの様な光景だった。




牙の生えた突風の様な物が長老の位置まで届いた。




あ、危ない!




と思ったが、長老は持っていた銀の盾で簡単に勢いを吸収する様に衝撃を避けた。




「どうじゃ、優よ、良い武器じゃろう」




「あ、はい!後、 俺、もっともっと強くなりたいです。岩瀬の仇を討つ為にも!世界の為にも!」




「良い意気込みじゃ! それにしても、やはり、その色の刀は、、攻防、共にさすがじゃわい。ワシの銀の盾にヒビを入れられたのは、あの時以来かの~。。」




「あの時、、?」




俺が問うと、彼は、何でもない、とにかく稽古に励む様に、と言われた。




他にも様々な訓練をし、気付けば、時間は夕方五時、うっすらと春の空に陽が沈みかけていた。




「1日、良く頑張ったのう、優よ、さぁ、今日はこの辺にして、少し早いが、夕食でも食べるとするかの。」




と長老がニッコリ微笑み話した、、その時だ!!




ドーン!!!




落雷の様な音と共に、稽古場の草原に、一体の生き物が飛び降りてきた。




長老が、すかさず、持っていた杖から、何かレーザーの様な攻撃を繰り出すと、相手は、その大きな身体で、一気に上空へと飛び、かわした。




「なるほど、老いたりとも、やはり、名高い黄金の騎士団の長だな。」




何と、上空には虎に翼の生えた様な、獅子丸位に巨大な見た事もない様な猛獣が浮かんでいた。良く見ると尻尾は大蛇だ。




何かの神話で読んだ覚えのある様な生き物だった。




「相変わらず気色悪い趣味じゃわい、生き物で遊ぶ様な真似をまだ、飽きたらずにやっておるのか、昔のままじゃな。」




何だ、何だ?




僕は二人の関係が良く分からずにいた。




「落ちたなシルバよ、変わり過ぎて、もはや過去の仲間とも思えん程じゃ!」





「フハハハ、何とでも言え! 永遠の命を私は、あのお方に約束して頂いたのだからな!」




「永遠の命? 愚か者め。この地上の万物、生きとし、生きるもの、皆、全てに、死というものが平等に訪れる、だからこそ、命は尊いのじゃ!」




そう言い、長老は今度は隠し持っていた小さな拳銃を敵に打った。




相手はまたも、平然と避けるが、未来の武器?なのか、その弾道は、相手の逃げる方に向かい右に左にと飛んで行き、猛獣の左翼に風穴を空けた。




ギャオー!!




ガー!!




翼を撃たれた猛獣は地上に転がると、物凄い怒声をあげ、こちらを鬼の様な形相で睨んでいる。




そして、地面が揺れる様な音をたて、大きな牙を剥き出しにし、こちらに襲い掛かってきた。




長老は即座に俺を抱え、空中に翔んだ。


彼の足元からは、蒸気の様な物が出ていて空に浮かべる様になっている。




それからは、激しい攻防が続いた。




長老は、ほぼ一人で猛獣とシルバという髑髏の騎士相手に戦っている。




俺にも何か出来ないか、そう思い、背後から猛獣の後ろから思い切り斬りかかろうとした。




(良し、いける!)




そう思った瞬間、俺の腕に何かが、めり込んだ!




「シャー!!」




忘れていた、猛獣の尻尾は大蛇だと言う事を。




僕は蛇の毒がまわり、クラクラと視界がぼやけてきた。




「優!!」




長老が助けに入ろうとしたが、その隙を、敵は見逃さなかった。




「グワッ!」




背後を斬られ、深手をおい、俺達は絶体絶命かと思われた。




(クソ!まだ、こんな所で死ぬわけにはいかない!!)




無力な自分の悔しさ、敵への畏怖、様々な感情が交差した。




猛獣がその大きな牙を剥き出しにして、目の前に迫ってきたその瞬間!




「ギャオー!!」




敵は大きな悲鳴を出し、額からドバドバと血を流した。




「・・アレンさん?」




アランの双子の弟であるアレンが、駆け付けて助けてくれた。




「スカイ! 二人を避難させろ!」




そう言うと、彼のパートナーである、大きな大きな白頭鷲が、俺と長老を背中に乗せ羽ばたき、安全圏に運んでくれた。




そして、目にも止まらぬ速さで、持っていた金の弓矢で敵のシルバの片目を撃ち抜いた。




「グワッ!! 貴様、若造め・・! 殺す!!」




「ヘッ!裏切り者のてめぇには、地面を這いつくばるのがお似合いだぜ! よくも俺達の長や仲間を傷つけてくれたな!」




初めて、アランさんを列車で見た時も、その強さに驚いたが、兄弟である、アレンさんも、その強さの境地に達している、いや、もしかしたら、それ以上か。。




猛獣と髑髏の騎士であるシルバを同時に相手にしながら、互角、いや、徐々に均衡が崩れ、敵を追い詰めてすらいる。




勝てる!勝てる! 何て凄い人だ、アレンさん。




俺は頭がクラクラしながら、目に焼きつける様に彼の太刀筋を手に汗かいて見入っていた。




「あの泣き虫だった小僧が、こしゃくな剣技を見につけおって!!」




「ごたくは良いから、かかってきな、裏切り者!」




アレンさんが、止めを刺しに凄まじい勢いで、その刃がシルバの首に掛かろうとした瞬間、、




「お前が動けば、このアイヌの娘の命はないぞ!」




気付けば、一人、たまたま、その場に居合わせてしまった女性がいた。




猛獣の尾である毒蛇に巻きつかれていた。




今にもその毒牙を刺さんと、舌をチロチロとさせている。




「クッ・・!」




「散々、やってくれたの~若造が。簡単に殺しはせん。この片目の分まで、いや、もっともっと、苦しませてから殺してやる!」





そう言い敵はアレンの方へ一歩一歩近寄ってきた。




「惨めだな、そうやって、お前は黄金の騎士団を抜けてからも、自分より強い奴には、卑怯な手で、そして、自分より弱い奴には、これみよがしに力を見せつけ、そうやって、今まで自分の才の無さを、誤魔化し続けてきたのだろう、、ハハハ!あんた、何の為に生きてるんだ?」




絶体絶命の場に陥っても、アレンさんは勇敢だった。




そして、その光景を見ていて、まだ何も力になれていない自分の無力さに腹正しい程


の感情を抱えた。




そして、俺は意識が朦朧とする中、アレンさんのパートナーの白頭鷲、スカイに頼んで、再び戦いの場に戻る様に願った。




主人の危機を察し、スカイは敵に気づかれぬ様に静かに空高く舞い、一気に、猛獣の尾である毒蛇に向かって急降下した、僕は毒が回りクラクラだったが、相手が気付いてない今しかない!




そう思い、毒蛇の頭に剣を振り下ろした。




思ったよりも、数倍固く、渾身の力で、やっと、その首を切り落とす事が出来、アイヌの女性を助ける事が出来、人質の無い状況になったアレンさんは再びシルバとの戦闘開始となった。




「あの、、ありがとうございます。貴方、大丈夫ですか!?」





意識が霞む中、その女性の大きな黒目が俺には、とても、とても、色鮮やかに、美しく見えた。






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作品コメント

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R太郎

2023年10月30日

y.kato さん、いつも、読んで下さり、しかも、コメントまで、、、本当に嬉しいです! 本当にありがとうございます(*^^*) フフフ、何を隠そう、、私もとある駄菓子屋にて、、、フフフ! 次も速攻で載せるので是非是非、ご覧下されば、とっても嬉しいです(^^) R太郎(*^^*)



y.kato-channel

2023年10月30日

本当によく書けてる話ですよね! 好奇心を刺激する、 面白い作品だと思います! というか、 また読みに来ました! あなたもトラベラー? 岩瀬美里も?


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