第7話
タイムマシーン
第6話
「黄金の騎士団」
前編
ゴトン、ゴトン、
俺を乗せた列車は晴天の初春の道を、東へ東へと進んでいく。
ん?
どこに向かってるかって?
日本が誇る、遥か巨大な北の大地、北海道、その極東、釧路にある、阿寒湖畔に行くのさ。
麻衣との別れから数週間が達、俺は岩瀬が託してくれた想いを受け継ぎ、彼女から渡された地図を頼りに、黄金の騎士団の隠れ里に向かっているんだ。
それにしても、この北の大地は、本当に空気が澄み渡り、美しい。
大きな木々が生い茂る森、流れる清らかな川。
雄大とたたずむ山々。
確かに、隠れ家に相応しい土地だ。
やがて、一時間程が経った頃だろうか。。
晴天だった空に雨雲が現れ、ポツリポツリ、と雨が降ってきた。
やがて、雨の勢いがますにつれ、列車の灯りが薄暗くなり、徐々に乗客全員が、ウトウトと眠りについていた。
俺は何か異変を感じ、眠気を払い除ける様に立ち上がり、中指に目を向けた。
すると、やはりだ!
あの時と同じ様に、中指にズキンと痛みが走り、矢印が浮かび上がり、列車の先頭、車掌席の方を指していた。
そして、あの闘いを思い出した、託された意志の大切さを。
俺は、いつの間にか、たちこめていた濃霧の様な黒紫の煙を、極力吸わないようにして、先頭列車の方へと駆けて行った!
キーン、カーン! ドン!
刀が鳴り響く様な音や銃声!?まで聞こえる。
俺は気付けば、震えていたが、あの日、命を賭して、最後まで闘い抜いた、岩瀬の事を思い出し、俺は彼女から託された金の短刀を抜刀し、ドアを開けようとした。
その時!
精悍な男の人の声が聞こえてきた。
「ドアの向こうの者、お気持ちは有り難いが、ここは私に任せなさい。」
(え?何で気付いたんだ?? 超能力?)
「何だー!?もう一人、黄金の騎士団が乗り込んでたのか?」
禍々しい低い暗闇から唸る様な声が聞こえてきた。
その時だ、ドアがバン!と開かれた!
「何だ、まだガキじゃねぇか?」
俺は瞬時に悟った、髑髏の騎士だと。
しかも、腕が4本あり、それぞれの太い手に大きな鎌や、拳銃を持っていた。
その異形に圧倒され、俺は思わず尻もちをついた。
「は? お前、まだ黄金の騎士に成り立てだな、小僧、安心しろ、直ぐに殺してや、、グワッ!」
一瞬、死を覚悟したが、相手の背後に、一本の赤い長刀と、炎の様な燃える様に朱い髪の毛をした、精悍な男が立っていた。 凄まじい速さの斬撃を食らわせた様だ。
俺は本能で瞬時に悟った。
(この人は強い。それも桁外れに。。)
人生で出会った中で一番強いと瞬時に思った。
「来い!髑髏の騎士、四天王、グリフィス! お前は、黄金の騎士、隊長の、このアランが相手だ!」
背中を、切りつけられ、怒り狂った相手は大鎌を、一本振りかけると同時に銃を放った。
すると、アランと名乗る男は瞬時に鎌と銃弾を同時に避け、敵の腕をスパッと見事に切り落とした。
だが、敵のグリフィスは、ニヤリとした。
何と避けた筈の銃弾が軌道を変え避けた筈のアランに再度、飛んできた。後で聞いたが、未来兵器の銃は、あんな性能もあるらしい。
(!!)
俺は思わず目をそむけてしまったが、目を開くと、床には真っ二つに切られた弾丸と、4本の、髑髏の騎士グリフィスの腕が転がっていた。
「お、おのれーー!!」
ドバドバと血が流れているが、何か力む様にしている。
すると、ニョキニョキと、気味悪く、斬られた筈の腕が数センチずつ生えてきた。
「髑髏の騎士には、四天王クラスになると、自己再生能力も、あるのか。」
そう言い放ち、アランは即座に、グリフィスの首を斬った。
ボトン、、
「おのれー、、獅子の一族なら、まだしも、お前如きに、、」
凄まじい執念だ。
首だけになっても、まだ、俺達の方を睨んでいる。
「あ!」
俺は思わず声を上げた。
空中に、あのスクリーンが現れた。
「まだ、タイムスリップを続けますか? Yes or No?」
「Noだ!」
「では、金のカギを、かざして下さい。」
と言い、グリフィスは、口に入れて隠していた金のカギを吐き出した。
その瞬間、俺はその金のカギを、列車の、窓へと投げた。
「貴様ー! 小僧ー!」
そして、あのカウントダウンが始まった。
10 9 8 7 6、、
「待て! 待ってくれ!」
やがて、カウントダウンが無常にも、ゼロになり、化け物みたいな敵はチリと化し消えた。
すると、たちこめていた濃霧が晴れ、止まっていた汽車は再び動き出し、乗客達も目を覚ました。
「少年、勇敢にも加勢をしてくれて、ありがとう。君も黄金の騎士団なのだな?」
そう言い、アランさんは帯刀していた赤い刀を、何か呪文?みたいな言葉を放つと、刀は手のひらサイズに収まり、俺達は座席に着いた。
「はい。岩瀬と言う友の意志を、引き継ぎ、僕は、彼女からの地図を頼りに、黄金の騎士団の隠れ家に行こうと決めました。」
すると、、
「そうか、、岩瀬が逝ったのか。。」
俺は最後まで闘い抜いた彼女の勇姿を伝えると、彼の瞳を涙で潤んでいた。
「彼女とは盟友だった。岩瀬、安らかに眠ってくれ。」
そう言い、彼は、瞳を閉じ、雨が上がり、顔を出した太陽に向かい、両の手を合わせた。
やがて、1時間ほどで俺達は、北海道釧路駅へと着いた。
それから、俺達は更にバスで目的地へと進んだ。
窓の外からは、雄大な森に住む、エゾシカがチラホラと見えた。
「綺麗だろう?ここは?」
「あ、はい、とても。」
「すまない、そう言えば、まだ君の名前を聞いていなかったな、私の名はアラン、黄金の騎士団の兵団長をしている。君の名前は?」
「僕は三井優です。宜しくお願いします。」
僕は、真っ直ぐな彼の瞳に何か偉大さを感じ、少し緊張気味に答えた。
すると、彼はニッコリと微笑み、「共に頑張ろう、優!」
と優しく俺の頭をポンポンと撫でてくれた。
兄弟のいない、自分にとって、何だか温かく、逞しい兄が出来た様な気がした。
「さぁ、着いたぞ、ここが阿寒だ、この先に私達、黄金の騎士団の隠れ里がある。」
俺は彼に着いていくと、アイヌコタン?(どうやら、日本に古来から住んでいた原住民?の人達が住む里らしい。)が見えてきた。
「おぉ、アラン、元気かい?」
「アラン、お帰り。」
どうやら、その人格からか、里の人達にアランさんが、とても慕われているのが分かる。
「さぁ、着いたぞ、優!」
ん?
俺達が着いたのは、何て事はない、ただの、お土産屋さんだった。
「おー! アラン! 遠征帰りか?ご苦労さん! おや、この子は?」
店の店長がキョトンとして、こっちを見てきた。
「新しい、騎士団の1人です、ルリシビさん。」
「そうか、そうか、無理せずに頑張るんだぞ!」
そう言い、彼は俺と力強く笑顔で、握手をしてきた。
そして、彼が金のカギを持ち、店の裏側の壁に、何か呪文みたいな言葉を放つと、壁のレンガが一つずつ動き謎のドアが現れた。
ん?何だ?
俺は呆気にとられていると、さぁ、入るぞ、とルリシビさんが先頭に立ち、俺は少し薄暗い廊下を歩いた。
その通路の壁には、剣や盾、金の弓矢や、亡くなった騎士団達の写真が飾られていた。 あ! 岩瀬、、
そこには、彼女の写真もあった。
「さぁ、先ずは、長老様に、ご挨拶をしよう!」
アランさんに連いて行くと、茶色い質素なドアに金色に輝くドアノブがある部屋の前へと着いた。
コンコン、
彼がドアを叩くと、アラン、入りなさい。
と、穏やかな声が聞こえてきた。
部屋を開けると、十畳程の洋室に、白いヒゲをはやした80歳位の白人?西洋人らしきお爺さんが椅子に座り、ペンで何かを、書きながら、作業をしていた。
そして、こちらを見つめると、
「良く来てくれたの〜、ようこそ。三井優君、黄金の騎士団へ。」
(??)
自分が名乗る前に、何故か直ぐに俺の名前を知っていた。超能力、、?
「岩瀬の、最後の様子を教えてくれるかの?」
「アラン、誠にご苦労であった、よくぞ、四天王の一人まで倒し、乗客達も守ってくれたの。深く感謝を述べる。ありがとう。ほら、二人とも、そこのソファに座りなさい。」
「勿体ないお言葉、誠にありがとうございます、長老様。」
そう言い、アランさんは、一礼し、俺も頭を下げた。
岩瀬の、最後を伝えると、長老は瞳を麗せ、「ワシの様な老いぼれが生き延び、岩瀬、君の様な若き戦士が、先に行くとは、、無情な物じゃ。」
長老は、両の手を合わせ、天に想いが届く様に、ありがとう。と、ただ一言告げた。
その時だ、俺の腹がグ〜グルル、と鳴った。
列車での闘いがあった為、朝食以来、何も食べてなかったので、かなり空腹だった。
俺が赤面していると、アランさんも長老もニコリと笑い、そして、長老が、俺のソファ前のテーブルに向け、何か杖らしき物をかざすとスクリーン画面が出た。
「ジャパンの方にはこれらが、1番かの。」
そう言うと、彼はスクリーンに、杖で、Sushi, Tenpura, Sukiyaki となぞると、巨大な冷蔵庫らしき物が開き、ロボットが自動で調理し、10分程であっという間に、ご馳走が並んだ。
「ほら、お食べ、優や。」
俺はお礼を言うと、大分、空腹だった事もあり、目の前に並んだご馳走を頬張った。
何て美味しいんだろう、まるでテレビで紹介されてる様な、画面越しにしか一生見たり、食べたりする事しかないだろうと思える程に、トロもウニも、海老天や、すき焼きの霜降り肉がメチャメチャに美味しかった。
だが、食の細い俺は寿司を10貫、天ぷらを3つ、4つ、すき焼き肉を100gほど食べると、お腹が満腹になった。
俺は本当に美味しかったですと、長老に言うと、優しく微笑み、良かった、良かったと言う感じに、ニッコリとしていた。
すると、その時だ、ドタバタと大きな足音と、大きな鼻歌を歌いながら、誰かが近付いてくるのが聞こえた。
バタン!!
ドアを開けて、瞳をキラキラとさせて、その人物は口を開いた。
「じっちゃん! アラン、ただいまー! ワォ!ジャパニーズ・フードじゃんかよー! 残してんなら、おいらが食べるってばよ!」
「コラ!アドニス! これは、そこにいる優君の分だ! 後、ちゃんと長老様と呼びなさい! コラ! 聞いてるのかアドニス!」
注意するアランさんは、顔に手を当て、ヤレヤレと言った感じだった。
「すみません、長老様、隊長である、私の指導不足で。」
彼が頭を下げ、そう言うと、
「良い、良い、元気なのがアドニスのシンボルみたいな物じゃ、アドニスや、お疲れ様、任務は無事に済んだかの? 傷は負ってないかの?」
と言い、長老は彼の頭を、まるで愛しい孫に接する様に、頭を撫でた。
すると、
「じっちゃん! 俺ってば、やっぱり天才だぜー!じゃじゃーん!全員討伐したぜ!」
アドニスと名乗る15歳?位の少年は、何と何と!!
20個もの大量の髑髏の指輪と、その同じ数の金のカギを長老へと渡した。
「おっす! 新入り! 宜しくな! 俺はアドニス、一緒に頑張ろうぜ、今度、ぴかいち美味い寿司を食べに行こうぜ! ワッハハハ!」
「お、俺は、あの、優、宜しくね、アドニス。」
「何だ、そんなに緊張するなってばよ! あ! そうだ、おいら、ジャパニーズの食べ物大好きなんだ、ちょこっとつまんでも良いか、テヘへ!」
最初は強烈なインパクトにビックリしたが、何故だろうか、、
直感で感じた。
俺はアドニスと、深く関わる様になる、親友になれると。
「あー!旨い、ワハハハ!」
西洋人独特の金髪が、まるで、若き金色の獅子の様に見えた。
これが、彼との初めての、出逢いだった。
キュン
–
尊い
–
ぐっときた
–
泣ける
–
好きです
–
推しです
–
自分の作品にはスタンプを押せません
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作品コメント
4件
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R太郎
2023年10月30日
y.kato さん、いつも、読んで下さり、しかも、コメントまで、、、本当に嬉しいです! 本当にありがとうございます(*^^*) フフフ、何を隠そう、、私もとある駄菓子屋にて、、、フフフ! 次も速攻で載せるので是非是非、ご覧下されば、とっても嬉しいです(^^) R太郎(*^^*)
y.kato-channel
2023年10月30日
本当によく書けてる話ですよね! 好奇心を刺激する、 面白い作品だと思います! というか、 また読みに来ました! あなたもトラベラー? 岩瀬美里も?
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