意外な共通点
「ら、雷花くん、大丈夫なの? 記憶喪失になっちゃったって……」
「問題ありません。消えているのは恐らく、昨日の記憶だけです。それより調査を再開しましょう」
心配する梅に平然とした声でそう返し、雷花はプロジェクターで映し出された動画を見つめる。梅はまだ心配が拭えない様子だったが、何も言わずに動画へと目を向けた。
手ブレで揺れている画面の中、手作りの衣装を纏った生徒たちがお世辞にも上手いとは言えない演技を繰り広げている。雷花は生徒の一人から貰ったという台本のコピーを片手に、内容を見比べていた。
「ふむ、動画に魔力は映っていない……撮影に関わった生徒は、容疑者リストから外して良いでしょう」
「撮影に関わった……って、結構な人数映ってない? 関わってない人なんているの?」
「四十人もいれば一人はいるでしょう、出し物の支度に関わっていない人が。僕もそうですし」
「開き直んなよ……」
風雅の呆れ顔には目を向けず、雷花は動画の出演者と座席表を見比べる。梅が友人から送ってもらった座席表の写真には、全員の名前が載っていた。雷花は梅に確認してもらいつつ、動画の撮影者と出演者を容疑者リストから覗いていった。
赤ペンで半数近く線が引かれた名簿を見ながら、雷花はまた考え込む。
「ふむ……思ったよりも減りませんでしたね。あと十五人ほどですか……」
「あれ? この子……あ、こっちも……こっちにも……」
「どうかしたか、梅?」
「残ってる子、演劇部が多いなあって」
そう言って、梅が何人かの名前を指差す。台本を書いたという生徒も含め、半分近くが演劇部らしい。演劇部なのに動画に出ていないとはこれいかに、と思いつつも、雷花はその奇妙な共通性について考える。演劇部が演技をしないなら、その役割は何だろうか。劇に必要なのは役者、台本、舞台、小道具、
「……もしかすると、演劇部の方が何かを知っているかもしれません」
「え? でも、聞き込みの時はみんな覚えてないって」
「ええ、ですから演劇部の他の方です」
いまいち要領を得ずに首を傾げる梅に、雷花は淡々と告げる。
「他のクラスの演劇部の方なら、何か話を聞いているかもしれません」
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