陛下、それは猫ではなく後宮妃です!~姿を変えて、冷徹皇帝の溺愛本音を聞いてしまいました~

及川 桜

序章 

 黎煌れいこうは、猫になった璃華りかを腕に抱いていた。


 彼は目を細め、優しく猫の璃華を撫でる。

 その手の温もりと、心地よい撫で方に、璃華の体からふわりと力が抜けていった。


「ああ、こうして璃華を抱きしめ、撫でることができたら、どんなにいいか……」


(……ふぁっ⁉)


 撫でられる心地よさにうっとりしていた璃華の意識が、黎煌のぽつりとこぼした本音に一気に覚醒する。


小璃シャオリーの毛並みも艶やかで、触り心地がいいが……璃華の髪も、きっと柔らかくて、良い香りがするのだろうな」


 黎煌は、まるで空想に浸るように、うっとりとした声で続けた。


(あわわわわ……! ああもう、聞いていられませんっ)


 璃華の中で、言葉にならない動揺があふれ出す。どういう顔で、どんな気持ちで、この言葉を受け止めればいいのか、まったくわからない。


「その肌に触れることができたら……きっと、絹よりも滑らかで――」


(キャーッ、それ以上はやめてえぇ!)


 璃華は心の中で絶叫した。想像するだけで顔から火が出そうだ。猫でなければ、その場で転げ回っていたかもしれない。

 


 ――彼は知らない。

 この猫が、妃として入内したばかりの璃華だということを。


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