第2節:執事AIとの本格会話&クラフト生活の発展

セバスチャンとの再会


 夜。焚き火の明かりを消し、玄関ホールに入った瞬間、低く落ち着いた声が屋敷全体から響いた。


《ご主人様、改めてご挨拶を》


「……出たな、執事AI」

「やっぱり本当に話しかけてくれるんですね!」


《私は豪邸のAI核、レベル2到達により会話機能を獲得しました。先に頂戴した“セバスチャン”の名、責任をもってお預かりいたします》


「頼りにしてるぞ、セバスチャン」

「ふふっ、異世界で専属執事……最高です!」


《僭越ながら、本日分の廃棄物変換ポイントは累計37ptでございました。食器の片付けが非常にスムーズで――》


「ゴミ捨てが経験値になる家、やっぱ頭おかしいくらい便利だな」

「最高にエコです!」


クラフト再開、そして素材切れ


 翌朝。地下のクラフトルーム。作業台いっぱいに並べられた角・骨・毛皮・牙。魔力炉がぼんやりと紫光を吐き、道具棚の金具がちりりと鳴る。


「今日は“衣服系熟練度”を一気に上げたい。寝袋を増やして、余剰は防寒ケープに回そう」

「了解です。解体補助ナイフももう一本欲しいですし、保存食も増やします」


 手分けして作る。

• 《製作》簡易防寒ケープ:毛皮×2/骨×2 → 《豪邸経験値+5》《衣服熟練度+1》

• 《製作》角ナイフ:角×1/骨×1 → 《豪邸経験値+6》《武器熟練度+1》

• 《製作》干し肉パック:肉×2/香草×1 → 《豪邸経験値+3》《食料熟練度+1》


 ……が、三つ目のケープで手が止まる。


「――毛皮、空っぽ」

「角も骨も底をつきました」


《在庫通知:毛皮0、角0、骨0。加工続行は不可能です》


「レシピ解放が見えてるのに、足りないのね」

「つまり――狩り再開、だな」


《護衛は私とブレイザー、ランディが担当します》


《俺は結界方向を厚めにできる。魔石さえくれりゃな》

《兄貴ィ、そんじゃ俺は敵をまとめてどーん! 任しとけ!》


「はいはい、まずは素材集め。行くぞ」


狩りの再開:投石と槍術の二段構え


 森。二つの月が枝葉の隙間から白い楕円を落とす。草むらがざわりと割れ、三匹のホーンラビットがこちらを睨んだ。


「初手、投石で足止め」

「了解、右の子は後脚が弱点!」


 小石が指から放たれる。【投石・中級】――弧を描いた石が右の後脚を撃ち、ラビットが膝をつく。その瞬間、槍を半身で突き入れる。


 肉を裂く鈍音。倒れる一匹。残り二匹が突進――


「翔さん左!」

「ブレイザー、ライト!」


《了解。照度120%、閃光防御膜を併用》


 眩光。ラビットが怯み、俺はもう一発の投石で角根本を打つ。ひるみを踏み込み突きで刈る。


 息を吐く間もなく、木陰から細い影――フォレストフォックス。低く唸って円を描くように回る。


「速い。ランディ!」

《いっくぜぇえ! サイドブレーキターン!》


 砂利が弾け、バンパーぎりぎりのフェイント。狐が跳び退った先に、俺の投石。額へ“コツン”。わずかに体勢が崩れたところへ、柄の中段突きを胸元へ。倒伏。


 忍が走り寄り、胸の前で指を組む。


「ナイス二刀流!」

「いや、遠距離と近距離を――」

「それを世間では二刀流と言います!」


 二人同時に、息を吐いて笑った。


その日の討伐とドロップ


【討伐内訳】

• ホーンラビット:8匹

• フォレストフォックス:2匹


【ドロップ合計】

• 角:8

• 毛皮(ラビット):8

• 骨(小動物用):12

• 肉:20

• 牙(フォックス):2

• フォックス毛皮:2

• 低級魔石:10


「――よし、“10匹で10個”。これでズレはない」

「素材も十分。帰って解体とクラフト、いけます!」


 忍はにこりと笑い、俺は頷いた。


レベルアップ:投石の深化と保存術の獲得


 帰路、青白いウィンドウが二人の目前に開く。


【清水翔 LV2 → LV3】

• HP:140 力:21 耐久:23 敏捷:14

• スキル更新:投石・中級(命中・威力↑)

• 新スキル:槍術・初級(突きの安定率↑、隙減少)


【松田忍 LV2 → LV3】

• HP:90 MP:55 知力:19 運:16

• 新スキル:簡易保存術(調理品に保存効果を付与)


「投石、中級に上がった。槍術も来た」

「やっぱり翔さん、遠近両対応の二刀流です!」

「二刀流じゃないが……まぁ嬉しい」

「私は“簡易保存術”。煮込みやスープにも保存効果がつくみたいです!」

「冷蔵庫付きシェフ誕生だな」

「ふふっ、任せてください!」


解体→クラフト→経験値。生活そのものが強化になる


 庭の簡易解体所。忍の刃が滑るたび、**【簡易調理】**の細い光が走って、肉・骨・皮が気持ちよく分かれていく。


【解体成果(本日分)】

• 角:8/骨:12/毛皮:8/肉:16(+フォックス肉4)

• フォックスの牙:2/フォックス毛皮:2

• 低級魔石:10


 地下のクラフトルームへ運び込み、そのまま製作に入る。

• 《角槍・強化》:角×1/骨×1/低級魔石×1 → 攻撃+5・耐久↑

• 《牙ナイフ》:牙×1/骨×1 → 解体補正↑

• 《毛皮寝袋》:毛皮×3/骨×1 → 睡眠回復↑

• 《保存スープ(瓶)》:肉×1/香草×1/保存術付与 → 腐敗30日


《豪邸経験値+(合計)31》

《衣服熟練度+2/武器熟練度+2/食料熟練度+2》

《新レシピ解放:防寒コート/角槍・改/干し肉盛り合わせ》


「作れば作るほど増える。気持ちいいくらい数値が伸びるな」

「クラフトで強くなる生活、最高です!」


魔石は誰のもの?――三者協議(家族会議)


 テーブルに、低級魔石10個がころころと並ぶ。青白い芯が脈打ち、微かな熱を指先に乗せた。


《さあ、ご主人様。本日の“分配会”をはじめましょうか》セバスチャン

《俺に3つくれ。補助結界を常時展開できる》ブレイザー

《いやいや! 俺に3つ! “衝角突進・改”と“簡易機銃”が開く!》ランディ

「今日も賑やかだな」

「完全に家族会議ですね」


《ご主人様。豪邸は次のレベルで“メイドユニット”が具現化します。メイドが出れば、家事・管理の負荷が劇的に下がり、遠征効率が跳ね上がります》セバスチャン

《安全第一。結界が厚ければ出先のキャンプでも守れる》ブレイザー

《攻撃は最大の防御! 俺が蹴散らす!》ランディ


 忍が指を立てる。


「提案です。豪邸4/ブレイザー3/ランディ3でどうですか?」

「俺も賛成だ。まずはメイド解放の準備、そのうえで攻守の底上げ」


《異議なし》セバスチャン

《了解だ。守りは任せろ》ブレイザー

《うおお! 火力上げるぜ!》ランディ


 青い結晶がそれぞれに吸い込まれ、各々の“奥”で静かな起動音が鳴る。


強化の実感テスト


「ブレイザー、結界テスト」

《展開――支援バリア(小)、厚み20%増。庭全域を覆う。魔素消費は低》


 空気が一枚、透明な硝子を被ったようにひんやりする。焚き火の火が揺れても風が届かない。


「ランディは?」

《衝角突進・改、再加速の溜め短縮。簡易機銃(試作)、30発。威嚇射撃可。……兄貴、撃っていい?》

「家の中はやめろ」

「外でお願いします!」


 庭の外壁に向けて、夜空に乾いた連射音が吸い込まれていく。**パン、パン、パン――**弾痕は残らない。魔力弾だからだ。


「……頼りになるな」

「攻守バランスが取れてきました!」


セバスチャンのロードマップ


《ご主人様。豪邸レベル3の要件は“中級魔石×3”と“資材50(木材または鉱石)”です。低級魔石はクラフト燃料や車両強化に回し、中級は拠点進化へ。狩りの合間に資材の探索をお勧めします》


「資材集めも必要か」

「木材は庭の端の巨木、鉱石は川沿いの露頭……鑑定しながら行けそうです」

《レシピ解放は引き続き拠点経験値になります。作れば作るほど、豪邸も私も賢く強くなります》


「じゃあ――作る。狩る。集める。捨てる。全部が“前進”だ」

「生活が冒険で、冒険が生活……私たちの得意分野ですね」


 二人の拳が、軽くコツンと触れ合った。


生活が熱を帯びる夜


 忍が保存術を付与した煮込みスープを器に分ける。湯気の向こうで、えくぼが柔らかく笑った。


「明日も資材探索、がんばりましょう」

「ああ。投石は俺がやる。槍も精度を上げる」

「私は保存食と道具の量産。レシピ解放、続けます」

《朝6時に起床ベルを。コーヒーの抽出準備も承りました》セバスチャン

《俺は夜通し結界監視だ》ブレイザー

《異常があったら即ダッシュで迎えに行くぜ!》ランディ


 ビールをプシュッと開け、二人で掲げる。


「異世界で乾杯」

「――悪くない」


 飲み干した缶をゴミ箱に落とすと、箱の中でちりんと鈴が鳴り、ウィンドウが点った。


《廃棄物変換:魔素5pt → 拠点経験値に加算》


「ゴミまで前進に変わる。すげぇ家だよ、ほんと」

「私、こういう“じわじわ強くなる”の、だいすきです」


 二つの月が、ゆっくりと屋根を撫でて流れていく。

 守りは厚みを増し、攻めは牙を研ぎ、生活は賑やかに熱を帯び始めていた。


予告――メイドの影


《進捗報告:現在の拠点成長率、目標の44%。中級魔石が揃い次第、メイドユニットの具現化プロトコルを起動可能です》


「……メイド、来る」

「きゃーっ! リリィさん(仮)!」

「仮名を先に決めるな」


 笑いながら、二人は作業台を片づける。

 クラフトで手に入れた薄い傷は、浴場の小傷回復の湯でたちまち消えた。


 生活を磨くほど、俺たちは強くなる。

 その“法則”を体に刻みつける夜だった。

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