第5話 モニカと帽子

 王城の広い庭に出たモニカとケルス。


「ケルス、ケルス! 、きもちぃのでつ!」


「雨上がりやしな」


「でもこの、おおきすぎなのでつ!」


「日差し強いししゃあないな」


「それでも!」


 モニカ、大きな麦わら帽子を持て余し気味。


「みんなおじょうには過保護やさかい」


「かーほーごー! いらないのでつ!」


「ハッハッハッ! よたよたやん? 前、見えてへんやろ。お嬢か帽子かもう分からへんな」


「ぶぅ!」


 そのとき風が。

 ビューッ!


「あ! だいじな! まってぇ!」


「何やかんやいうて大事いうところはなあ。ああいうとこが好かれるんやろな、お嬢は」


 なごむケルスであったが。


「お嬢ひとりにさせたらあかんわ!」


 ケルスもモニカを追って駆け出す。


「かぜたん、もっていかないでくだたい!」


 帽子ころころ。


「まてまて」


「待つのはお嬢やがな!」


「キャハハハ! まてまてぇ!」


「ああもう、だんだんおもろなってきたんやな! ……危ないて、前見な!」


「まえ?」


 モニカ、顔を上げる。


! たくさん!」


 お庭の一角、人工林が目の前。


「ひゃあ!」


 またビュッと風が吹いた。


は?」


「森んなか入ってもうたな」


「ぼうけんでつ!」


「まあ、そやな」


 ふたりで森に入りキョロキョロ。


「あ!」


 モニカ、上を指す。

 大きな木の枝に帽子が?


「ん? けど、あれ、だいぶ古いで?」


「モニカのじゃありまてんか?」


「そやな。それに……」


「とりたん!」


 ひなが顔出しピヨピヨ。

 親鳥がきてエサやり。


「とりたんのおうちでつ!」


「せやな」


「だったら、とっちゃダメなのでつ!」


「ええ子やな、お嬢は」


 またふたりでキョロキョロ。


!」


 モニカがテテテと駆けていくと、帽子は何故か逃げる。


「にげないでくだたい! まってまって」


「お嬢、あかんわ」


 帽子は2匹のリスが木の上へ。

 子リスも出てきた。


「リスたんも、おうちにしまつか?」


「そんなん聞いたことあらへんけど、巣材にでもすんのかいな」


「ちっちゃいこ、かわいいでつ!」


「せやな。帽子で遊んどるんかもしれんな」


「リスたん、ほちいでつか?」


「どないする? 取ろ思たら取れるけど」


「いいでつ! とりたんもリスたんも、ひつようならあげるのでつ! モニカはまだいっぱいありまつ!」


「ほうか。けど、叱られんで」


「いいのでつ! モニカ、しかられるのはいるので!」


「ハハハ! まあ、そやな」


なのでつ!」


 胸張るモニカ。


「にいたま、いってまちた。よわいものをのがつとめって」


「お、ええこというな兄ちゃんも」


「ところでケルス」


「あん?」


ってなんでつか? おいちいでつか?」


「なんや知らんとゆうてたんかいな」


「デヘヘ」


「照れるとこちゃうがな。まあ、がんばらなあかんこと、ちゅうとこやな」


「がんばるでつか!」


「せや。お嬢はあれやな、もっとお勉強がんばらなあかんわ」


「モニカ、がんばりまつ!」


「お、えらいな」


「おべんきょういがいを!」


 一目散に駆けてくモニカ。


「ああ! もう! すぐ逃げるんやから! 待ちや! 帽子もないで日に当たったらあかんがな!」


「キャハハハ!」

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