第16話

今日は図書室でネタ探しをする僕です!

と言っても、けっこう漁ってるから、目新しいものないかも。

なんて言いながら、僕では重くて持ち上げられない大きな本のコーナーを覗く。

こんなにおっきい本、誰が読むのかな…騎士団団長さんなら持てそう。ケンダル先生なら魔法で浮かせて読めるかな?

むむむ、何か閃きそうな予感!

そんな時、背表紙に名前がない本を見つける。

あれ?背表紙に名前がない?誰かの日記とか?

…ハッ!!いわゆる「“発禁本”」ってやつ!?

際どいBL本だったらどうしよ〜!

とか思ったりして、背表紙に名前のない本を手に取る。

中からカランと音がする。

本にしては軽い、軽すぎる。

表紙を開くと中は空洞だった。

中身はある、指輪だ。

なにこれ、本に見せかけた小物入れ?

……もしかして執事×執事の内緒の文通の隠し場所とかそんなんだったり??!


てか、この指輪なんだろう?

表紙の裏に文字を見つけたので、読んでみる。

「なになに?『陽の届かぬ紫水晶の奥底に、かの災厄を封じる。どうか、永遠に災厄が目覚めぬように。もしくは貴方が『勇者の血』の者である事を願う。』」

難しい言い回しが多くて読みづらいなぁ!

僕、十歳なんだからもっと読み仮名ふってよ!!優しくない!!

――あれ?でもなんで今、スラスラ読めたんだろう?

……ま、いっか!

それにしても、この指輪!おっきいなぁ!僕がはめたらブカブカだ。

一番太い親指になんとなく、はめてみる。

なんと!瞬きの間にぼくの親指に、ピッタリフィット!

そうしたら、突然巻き起こる風!ついでに何処から出てきたのか分からない黒い羽根!!

目の前に浮かぶ、黒い翼と共に鎖に雁字搦めになってる、精悍な顔つきの男の人が現れた!!

そして、鎖が何もしてないのに、ボロボロと崩れそしてイケメンが…目をあける――

「…余は…ついに、解放されるのか…」

月も星もないような夜の黒髪にアメジストの切れ長の瞳。

美の女神が妬むほど美貌。

あらゆる言葉を取り繕っても、この人の美しさを表現出来るものなどないだろう。

「……貴様が余を起こしたのか。」

僕はポカンと口を開けるしかなかった。

「……余の恐ろしさに声も出せぬか。いつの世も、余を見るものは皆そうだ。慣れておる。許そう。

……そして忌まわしき封印の契約により、貴様の願いを、一つだけ、なんでも叶えてやろう。その契約が遂行され次第、余は自由の身だ。」

……ん?今なんでもって言った?言ったよね???

「喜べ。偉大なる『魔王』である余が、貴様の願いを叶えてやろう。」

「………―、―――だ。」

「聞こえぬ。もう一度―――」

「ヒャー!!こんなに分かりやすい『魔王』って居るんだ!!しかも!兄様たちとまた違ったベクトルのイケメン!!これはまた、カプの幅が広がりますなぁ!!それから!封印が解ける演出って、人気舞台俳優さんの単独舞台の始まりみたいなんだね!

もっとおどろおどろしいのかと思ってた!!これは“魔王×勇者”も“勇者×魔王”も捨てがたい!!」


……いけね、早口でまくし立てちゃった。今度は魔王様がポカンとしてるや。

ふふ!ドえらい美人のポカン顔って貴重だね!

「……して、お前の願いはなんだ。」

「えっ!!お願い聞いてくれるんですか!!アシスタントが、もう一人ぐらい欲しかったんだよね!なので、僕のアシスタントになってください!!」

「…あし?…すたん??…とにかく、契約は、なされた。余が、貴様の願いを叶えてやろう。」

「はい!よろしくお願いします!!」


なんと、僕は魔王を封印から解いてしまったのだ!!

アシスタントだから、ベタ塗ってもらって〜、トーン貼ってもらって〜

それから、あーんなポーズや、こーんなポーズを取らせてもいいってことだよね!!

生きてるデッサン人形ゲット!!


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