閑話「とある侍女の話」〜エリ編〜


お初にお目にかかります。

私は縁あって、この王国の末王子のお世話を仰せつかった、エリといいます。

以後、お見知り置きを。

現在、私の分の原稿が回ってきてないのでエナの効果・背景の手伝いをしてます。

頭が暇なので、私と末王子の出会いなど思い出していきたいと思います。

どうかお付き合いください。

私は侯爵家で二番目の女児でした。

言葉を選ばなければ、姉が婿を取れなかった用のスペアといったところです。

しかし私が12歳の春

待望の男児が生まれ、父母、姉、祖父母みな大フィーバー。

私も表向きには喜びました。しかし、心の奥底で「私の存在意義が完全に無くなった。」という想いが醜く渦巻いたのです。

そんなものを、生まれたての弟に浴びせる訳にもいかないので、たまたま街で張り出されていた王宮の洗濯当番に応募。

なんでも、洗濯番の下働き達が一致団結して王子たちの洗濯物を違うものに取り替えたんだとか。

取り替えたものの、質が良くなくてすぐにバレたらしいですが。

あの時の合格条件が“一から四番目の王子達の顔がついた人形から、服をはぎ取れるか”だったのは、中々に斬新だったなと思います。

晴れて合格し、来る日も来る日も洗濯に明け暮れ、洗濯物を干す時に見る空のなんと「あおい」ことか。

とある日、一日の休みとお給料を手に入れた私は、画材屋へ行きました。

私は、あの空をどうしても描きたくなったのです。

しかし絵なんて家にいた時に、家庭教師が二、三回来たぐらいで全く描き方なんて分かりません。

貰えるお給料も他のお屋敷などに比べれば破格ですが、青の絵の具が買えるほどではありませんでした。

やっとの思いで描けた空は夕暮れの色でした。

働いてる合間で見る空を描きたい。

しかし、描き上がる絵は夕暮れか夜中の空の色。

ある時、気分転換に庭園の風景を描いていた所、5歳くらいの男の子とそれに付き従う縦巻きのメイド。

冬の星空を映した黒髪に、夜空に「青空」を閉じ込めた瞳。

慌てて頭を下げました。第三王妃の特徴がはめ込まれた幼子といえば、末王子だけだからです。

「ぉもてをあげて。この絵はきみがかいたの?」

「…輝ける五番目の星にご挨拶申し上げます。…はい、この絵は私が描きました…」

お気に障ることがありましたでしょうか、という言葉は、キラキラ輝く「あお」の前に、飲み込まれてしまいました。


黒で覆われているはずの「あお」がこんなに眩しいだなんて知らなかった。


「エマ、どうおもぅ?」

「はい。遠近感が掴めていますし、王子が求めていた、“でふぉるめ調”?となる絵柄にも、合うかと。」

「うんうん!エマはひとはかけるけど、はいけぃがかけなかったもんねぇ。」

「…大変、申し訳ございません。」

「ぉこってないって!なんかぃ言わせるの!もぅ!…ねぇ、きみ?」

「はい、なんでしょうか。」

「なんてなまぇなの?」

「なまぇ…?私の、名前…?えっ、エリと申します。」

「わぁ!エマと、一字ちがぃじゃん!決めた。エリ、今日からきみは僕の専属侍女だ!!」

…そして洗濯番から王子付きの侍女になりました。


――――――――


「うぅぅぅ!!今回のお話、小物多くないっスかぁ〜?私の出番多くないっスかぁ〜!!」

「もう少しよ、頑張りなさいエナ。終わったら、この前、街で買ってきたお菓子出してあげるから。」

「エマパイセン!ほんとッスか?!頑張るッスよ〜!!」

「…王子、ここの背景はどうしますか?」

「エリ!そこはね、空を描いて欲しいの!」

「…空…ですか…」

「そう、空!広い青空の下で、二人が想いを通わせ合う…ってな感じで!!」

「…かしこまりました。」


私が今、描いている空はモノクロだけど、あの時の空の色に、少し近づいている気がする。

…貴方様にもそう思っていただけるのなら、幸いです。


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