第12話ファーフロムウエディング④

「今は多様性の時代だし……彼氏のそういう面も受け入れないと……いけないのかな?」

「そうでござるよ!今はなかなか受け入れられないかもしれぬが少しずつ分かっていってほしいですぞ!」

「とれた! なに駄弁ってる! 逃げるぞ!」

 オタクに向かって叫ぶとこちらに顔を向けて、走りだした。俺も立ち上がって走りだす。

 ゴスロリ女は俯いてその場から動かず、まだブツブツいっていた。

「本田氏なら気づいてくれると思ってましたぞ!」

「あぁ、ありがとうよ! でもさっきの嘘だよな?」

「そんなことないでござる。その時は一緒に汗ばんで……」

「コロスぞ」

「じょ、冗談ですぞ。拙者はあかりん一筋ですぞ!」

「よかった」

 あああああああああああああ! と言う耳を塞ぎたくなる様な甲高い声が背後から聞こえた。

「ヤバい! あいつ気づいたぞ!」

「大丈夫ですぞ! 車はすぐそこに、とまってるでござる」

「どこ! もしかしてあれ?」

「それですぞ!」

 廃墟の出口の近くに赤い車が見えた。お互い、そこに向かって全力で走った。背後から、うあああああああああああああ!と発狂した声が徐々に近づいてきていた。早くしないと追いつかれる! 隣をみるとオタクは並んで走っていた。息も上がっていない。こいつ意外と体力あるのか?


 近づくにつれて車の全体が見えてきた。これは、予想していた通りアイドルのステッカーが貼ってある痛車だけど……車に詳しくない俺でも一目でわかるスポーツカーだ。

「オマエ……」

「なんですか? 本田氏? 自慢のマイカーがどうかしたでござるか?」

「いや、なんでもない。ただ、なんかもったいないと思って……」

「ぎゃあああああああああデブてめえ!待て!」

「そんなことより早く乗るでござる!」

「あ、わかった!」

 車に素早く乗り込んだ。オタクが手慣れた操作でクラッチを踏み車を急発進させて猛スピードで廃墟から離れた。

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