第1章 人生はマラソンか?④~新たなる協力者~

『人生はマラソンのようで、実は駅伝のようだったよ!』と、

昨日のマラソン大会から得た教訓を、意気揚々と部下の布田に語ったのだが、

なぜか布田は複雑な顔をしていた。


そうか、マラソン上級者の布田にとって、『人生は駅伝だ』というのは、

当然のことなのかもしれない。

得意げに語ってしまった自分が、少し恥ずかしくなった。

「定時後に引き留めてごめんな。」と軽く謝り、

自分も今日は早めに帰ることにした。



家に帰り、一人ポテトチップスのり塩味をつまみに晩酌をしていると、

妻の多摩子が「昨日は凄く上機嫌だったけど、結局何分だったの?」と聞いてきた。

「44分を切るぐらいかな。」と答えると、

「そのペースで走るとサブ4って出来る?」と聞き返してきた。

珍しくマラソンの話に食いつくことに疑問を感じながらも、

サブ4ペースはどんなものか調べてみる。


「サブ4だと、1キロあたり5分40秒ぐらいで走らないといけないけど、

昨日は1キロ9分切るぐらいだったから全然無理だな~。」

箸にも棒にもかからなかったので、笑ってしまった。

しかし何かがひっかかった。

「ん?9分切るぐらい、、、10kmの大会の制限時間が80分だから、

 この調子だとまずいのでは?」

一気に酔いが覚めた。


「どうしたの?顔色悪いわよ?あと、明日の朝は私も走るわ」と多摩子が言ったような気がする。

先日は走ることに乗り気じゃなかったし聞き間違いかな。

それとも、少し飲み過ぎたか。


翌朝起きると、多摩子も起きていて、ウェアに着替えている。

どうやら本当に一緒に走ってくれるようだ。

「どうしたんだ急に?」と尋ねると、

「あなたが頑張っている姿を見て、私も一緒に頑張ろうと思ったの。」と少し恥ずかしそうに答える。

可愛いところがあるじゃないか。


念願のお喋りランニングが出来ると思い、喜々として走り出した。

しかしながら、1分も過ぎていないうちに多摩子は私より大分先を走ってる。

「一緒に頑張ろう」という言葉は気のせいだったのか。


15分経ったので折り返そうと思ったが、多摩子はかなり先をいったようで姿は見えなかった。

河川敷の一本道なので迷うことはないと思うが、心配なので折り返さず、もう少し走ってみた。


すると、その数分後、凄いスピードで走る多摩子とすれ違った。

「あら」と気づいてはくれたけど、そのまま走り去る。


多摩子を追いかけるように私もUターンし、少し急いで呼吸を乱しながら戻ると、

スタートした地点で、多摩子は整った呼吸でストレッチをしていた。

そして「ずいぶんゆっくり走るのね」と辛辣な言葉を投げかけられた。

起床時の可愛い妻はどこに行ったのか。。。



会社に着くと私は真っ先に布田の元へ向かった。

「布田君、大変だ。このままだと10kmマラソンを完走できない。」と助けを求めた。


「はあ、昨日嬉しそうだったので水を差すのも悪いと思ったので

 言いませんでしたが、そうですよね、、、」とどうやら布田も気づいていたらしい。

マラソン教訓ではなくタイムの割に浮かれていたことに呆れていたのか。


「それでどうしたら良いと思うかな?」と尋ねると、

「体重を減らすのが一番手っ取り早いですが、、、1ヶ月しかないですもんね。」

と布田も困っていた。

すると、「減量に効くプロテインがあるのよ!」と、八幡さんが会話に割って入ってきた。


八幡さんは、私が入社したときから在籍しているベテラン社員だが、

ここ10年ぐらい彼女だけ時間が止まっているかのように、

若さと綺麗さを保っている。

その八幡さんが言うなら間違いないはず。

「少し高いのだけど」と八幡さんは言っていたが背に腹は代えられない。

早速、八幡さんに教えてもらったブログのURLから、公式HPページに飛んで発注した。



翌日、朝目覚めると今日も多摩子はウェアに着替えていた。

相変わらず多摩子は速い。

しかも30分じゃ足りなかったようで、もう一走りしてくる、と走り去っていった。

多摩子は『モデルのような』までは言わないが、わりとスレンダーな体型だ。

「やはり走力と体重は関係ありそうだ」と実感した。

「よし、自分ももう少し走ってカロリーを消費しよう!」と、

この日から私も10分追加で走ることにした。


その晩、一人で晩酌をしている最中に、ふと

「これまで特に運動をしている様子はなかったし、

 食事も昼以外は私と基本同じものを食べているはずなのに、

 何故ここまで体型に差があるのか?」と気になったので、

多摩子に聞いてみたところ

「ポテトチップスをつまみにビール飲みながら何言ってるのよ」

と一蹴されてしまった。

灯台もと暗しとはこのことか。

「明日からは晩酌は控えて、代わりに早速届いたプロテインを飲もう」と決意した。


元々が重かったせいもあるが、晩酌をプロテインに変え、

毎朝40分走っているおかげもあり、みるみるうちに体重が落ちてきた。

「部長、最近顔つきも変わってきましたね。プロテイン効果出ていますね♪」

と八幡さんが笑顔で褒めてくれる。

その後、体重変動や常飲する時間や頻度、味の感想など、矢継ぎ早に質問され、メモをとっていた。

綺麗な八幡さんが自分に興味を持ってくれるのは少し嬉しい。



効果的なプロテインを勧めてくれた八幡さんや刺激をくれた多摩子のおかげで、

身体が軽くなり走力もついてきた気がする。

レースの前週の土曜日に試しに一人で10km走ってみたところ、

なんとか78分31秒で走りきることが出来た。



こうして、周囲の支えに感謝し、自信を持って大会に臨む準備が出来た橋本。

無事レースは完走できるのだろうか。(続く)

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