いまいち段取りの悪い異世界召喚
うすいしお
第一章
ここ何処?
俺は気が付けば見知らぬ森の中に居た。
一発で分かった、いや理解ったね。「あ、この導入は異世界転移だ」って。
転生じゃねえぞ?転移だ転移、間違うとジャンル分け面倒なんだからマジで。
何せぼっちだからな、有り余った時間でラノベ読み漁ってたし。
はぁ……なんで俺はいつも、放課後一人だったんだろうな?ハハハ。
まあ、それは一旦置いてだ……。
「……おい、誰か説明しろよ」
ここ何処だ、なんか言えよ、おい。
直前まで俺は、部屋で無駄に時間潰してた筈だよな?
で、気がついたら森の中にいたってわけ。
なんなの?導入は面倒で読まれないから飛ばしたの?
「それにしたって何かあるだろ!神様とか召喚した国の王様とか!!」
……まあ返事があるわけ無いか、虚しい。
いや、誰かに何かされたのは間違いないんだよ。
だって、服装とかファンタジー風に変わってるし。
ショートソードみたいな武器を持ってるし。
こう、ラノベファンタジー特有の、中世っぽいけどやたら発色の鮮やかな服装と旅人マント着せられてるし。
「コスプレ感ハンパねえな?」
なんでこんなパステルカラーなんだよ、発色良すぎ。
今年、流行りそうな色合い。
……普通はさ、ジャージとかジーンズのまま飛ばされるだろ?
それで、え!?この不思議な材質は!?すごい!高く買い取りますよ!
とか現地の商人に突っ込まれて、ちょっとした資金源になるのが定番だろ!?
ていうか、この服少しサイズがキツイな……特にパンツがキツすぎて、こう、アレだ。
アレの収まりが悪いと言うか、食い込むと言うか……。
「……これ、女物のパンツじゃん」
え?何故??
何で俺、女子下着穿いて異世界に放り込まれてるの?
「おーい!性別間違えてますよー!あとブラジャーが無いんですけどっ!」
もしもーし!カスタマーセンター!!
自動音声案内すら無いのかよ!!!
「あ、そうだ!こういう時はアレだ!”ステータスオープン”!!……おおっ!?」
何か空中に出たぞ!俺の視界に謎のAR画面が!!
そこに表示されてるのは、ワケ分からん数字に変なグラフ、ワイヤーフレームで出来た医学書の人体図みたいなの。
……いや、細かすぎ。
「分かりにくいわボケェ!!」
しかもこれリアルタイムで反映してんのか?数字も心電図みたいなのもグリグリ変わってるし!!
いや、分かるよ?確かにゲームと現実は違うよな??
斬られてHP残り◯◯って言ってもな、普通は剣でザックリ斬られたら、大抵はそのまま死ぬもんな?
でもな、そういう話じゃないんだよ!
何でもリアリティ出せばいいゲーム作れると思ってんじゃねえぞー!!
「ユーザーインターフェースは!!分かりやすく作れ!!
こんなん半年でサ終だぞ!分かってんのか?おい運営!!返事しろ!!」
返事がない……マジでこれ以上のサポート無し?
「はぁ……この様子じゃ、チートとか課金装備とか異世界言語も無しか?」
……なんて独り言を呟いた刹那!!
突如俺の脳内に溢れ出した!!
存在しない言語の記憶!!
「ってお前いまインストールすんのかよぉぉぉ!!」
ああああ!!何か記憶が流れ込んできて頭が痛いっ!!!
マトリッ◯スじゃねえんだぞオイ!気軽に人の頭にアップロードすんなコラ!!
あのさぁ、こういうのは普通、神様の不思議パワーで勝手に異世界翻訳されるもんだろ?
ハードウェア側に負担させんな、クラウドで処理しろ、こっちはスペックギリギリなんだよもう。
「……あー治まったか」
あ、知ってる、この世界の言葉知ってる。
あと多分読める。
いや、最初にやっとけよ、もしかして忘れてたな?
「なあ、お前らもそう思うだろ?」
『グギョッギョッギョッ!』
はいゴブリン来たー。
やっべ騒ぎすぎたか、2匹居るわー緑色のヤツが。
「リアルだと顔が怖えなお前ら!!」
異世界だなぁ、じゃなくて!
ゴブ君さぁ、明らかに殺気立ってんだけど!?
まあ落ち着け俺、こいつら定番ならザコだし、俺には武器もある、ワンチャンやれるんじゃないか?
「やれる訳ねえだろッッッバーーーカ!!あばよっ!!」
『ギャギャギャァァァ!!!』
剣道すらやった事無いんだぞ?剣の振り方なんて知らんわマジで!!
逃げるしかねえ!全力で!!
あっあっ、走るとパンツが食い込むっ。
……はい逃げられませんでした!街道っぽい開けた場所で追いつかれた!
「くそぉ、くそおぉ!!」
『グギャギャギャ!!』
痛っ!痛っ!やめろこらっ!!
俺がザコだと分かって、ゴブどもは遊んでやがる。
と言うかこいつらの武器が棒きれじゃなく刃物だったら、もう死んでるなコレ。
服もピチピチで動き難いし。
くそっ、せめて一匹だけでも何とか出来れば。
その時だった。
「大丈夫ですか!!加勢します!!」
「え!?あ!お、お願いしますっ!!」
旅装束姿の女の子が、こちらに駆け寄ってきた!
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