俺の幼馴染はヤンデレだったが、それはもう昔の話

とおさー@ファンタジア大賞《金賞》

1章:俺の周りには幼馴染しかいない

プロローグ 

 ――クラス替えとは出会いと別れのイベントである。

 

 仲の良い友達と別れ、ほぼ初対面の相手やあまり相性が良くない生徒と同じクラスになる。

 そんな不運なこともあれば、はたまた気になっている異性と同じクラスになるという、幸運を掴む生徒もいる。


 どちらにせよ、学生にとっては最も大切といっても過言ではないイベントだ。

 そしてそれは俺にとっても同様だった。

 

 ――頼むから幼馴染と一緒のクラスにはしないでくれ。

 

 そう心から願っていた俺は、毎日のように神社に通う日々を送っていた。お小遣いを切り崩して、毎日五円玉を投入し続けていた。


 それくらい俺はクラス替えに必死だった。


 しかし現実とは非情なものである。

 恐れていた通り、なんと三人の幼馴染と同じクラスになってしまったのだ。

 つまるところ、考えうる限り最悪の結果だった。

 


 そんなわけで早速俺は、クラス替えの弊害を受けていた。


「確かに私は三年前、奏太くんを監禁したよ?」


「ああ」


「でもね! あれはほら、出来心というか、若気の至りというか、とにかく! 今はもうぜんっぜん監禁するつもりはないんだよ」


「……………………」


「ぜんっぜんないの。だから……お泊まり会に参加してくれないかな?」


 放課後のファミレス。周りには同じ高校の生徒がちらほらといる中、まるでたわいもない世間話をするように罪を告白し、さらっと流そうとしている女。


 彼女の名は宮崎音羽。同い年で、家が隣同士で、同じクラスの幼馴染だ。


 彼女は首元で切り揃えられた艶やかな黒髪をひらりと揺らし、ぐいっと顔を近づけてくる。そして念押しするように口を開いた。


「せっかくまた同じクラスになれたんだもん! これを機にもう一度仲良くしよう? ね? 今はもう、監禁するつもりはないから! 大丈夫!」


 彼女の瞳には曇りが一点もなくて、純粋でキラキラとした光を携えていた。しかしその澄んだ瞳の奥に鋭さが潜んでいることを俺は知っている。


 こいつはオオカミだ。狙った獲物にがぶりと噛みつき、丸呑みして自分と一体化することに悦びを感じる肉食動物。隙を見せたら最後、二度と太陽を拝めなくなってしまうだろう。


 だからこそ俺はいつでも逃げられるようにカバンを持つと、あえて声を張り上げて宣言する。


「罪を無かったことにできると思うなよ!」



「あと俺はな」



「もう二度と監禁されるつもりはないからな!」



 俺はこれまで三度、監禁されている。だからこそこれ以上オオカミに食われるわけにはいかなかった。

 

 ――普通の高校生活を送りたい。


 その夢を叶えるために俺は日々奮闘するのである。

 





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