3-1


ロクサーヌ様と仲良くなって、ふと思い出したことがある。




ラノベでも源氏物語でも、私はロクサーヌ様に殺されたわけだが、私以外にも被害者がいたんじゃなかったっけ? 


六条御息所、もう一人祟り殺してたような気がする。


しかも、私の義姉だったような気が。




私は記憶をたどって、お兄様の家を調べた。


そして正月の喧騒が落ち着いてから、とある場所へと出かけることにした。




行先は勿論、隠れて住んでいる義姉。源氏物語でいうと「夕顔の君」のところ。






私のお兄様、トーノス・サウス侯爵。


深茶色の短髪にアクアマリンの涼し気な瞳。しっかり鍛えてあるけど細身の肉体は爽やかさと頼もしさが共存している。


源氏物語だと頭中将になるのかな。光源氏の親友でありライバル。


シャイアとの関係も、そんな感じ。




私の一つ年上で、現在23歳。


もともとは公爵家を継ぐ予定だったけど、シャイアが臣籍降下した時サウス公爵家の後継ぎが私に変更になったので、急遽新設した侯爵家の初代となった。


近衛の仕事もしていて、見目もいいので、ご令嬢方にも人気がある、らしい。


小さい頃からいじめられてきた私にとっては魅力はないんだけどね。




まあ、いじめると言っても急に近距離でかぶと虫見せられたり、一緒に遊んでたはずが忘れられて木の上に置いて帰られたりという、悪意のないやんちゃって言うか、傍から見たら可愛らしくもあるんだけど。やられた方は根に持つっていうか。


お兄様なりにかわいがってくれてたんだろうなあと今となっては思うけど、私の部屋にかたつむりニ十匹放してくれたことは一生忘れない。




そんなお兄様には現在、二人の妻がいる。




第一夫人となっているのがマリーチェロ様。22歳。


貴族学園時代の私の同級生で、今はマリーお姉様と呼んでいる。


幼いころからの約束でライト公爵家から嫁いで来た元公爵令嬢で、背が低い。アッシュグレーの髪と赤みが買った茶色の瞳。美人と言えるけど、顔がきつそうで性格もちょっと怖い。人に厳しく自分に厳しくって感じなので、まだ筋が通っているとは思うんだけど。




同じ公爵令嬢だったからか、何かと私をライバル視してきていたので、ちょっと苦手。


源氏物語でも出てきてはいたと思うけど、名前あったかなあ。右大臣の姫、みたいな感じだったかな。


お兄様との間に3歳になった娘が一人いる。




もう一人の妻が、ユーリナ様。


お兄様より二つ年上の25歳。ココナツ子爵家のご出身だ。


マリーお姉様が幼い頃からお兄様の結婚相手候補だったのに対して、ユーリナ様は学生時代にお付き合いを始めてからの結婚。


そういう事情もあって、年上にも関わらず第二夫人に収まっている。


この第一夫人とか第二夫人とか、単なる結婚した順番であって順位的な意味はないんだけどね。マリーお姉様は第一夫人が良かったんだって。なんでも一番が好きな人なのよね。




薄い紅茶色の髪に朝顔みたいな青い瞳。美人とは言えないけど、柔らかそうでおっとり微笑んでいる姿はなんだか癒される感じがする。


お兄様との間に、3歳になった娘が一人います。同い年の異母姉妹ね。




源氏物語の夕顔と言えば、鄙びた家に住む謎に包まれた姫君。


光源氏に声をかけたことがきっかけで二人は恋仲になるんだけど、ある日謎の死を遂げるのよね。


そして時がたって、夕顔の侍女と光源氏が偶然再会して、夕顔には大変美しい一人娘がいたことや実はライバル頭中将の妻だったことが判明して……みたいな感じだった気がする。




ちなみに謎の死の原因は六条御息所です。葵上と同じだね。




話をこの世界に戻そう。


何故ユーリナ様は隠れて住んでいるのでしょうか?


 


昔は、お兄様やマリーお姉様とユーリナ様は一緒にサウス侯爵本邸に住んでいたの。


夫人同士の仲も悪くないように見えたんだけど、私がシャイアと結婚したくらいでユーリナ様が出産の為故郷のココナツ子爵領に帰られて、それっきり戻ってきてないんだよね。


お兄様は娘が無事産まれた、しばらく子爵領で過ごしますって手紙を見てそれっきりにしてるみたい。




もうちょい気にかけてあげなよーと言いたいけど近衛の仕事忙しそうだし、ちょっと前にマリーお姉様のところに産まれた子どももいたしなあ、とも思う。


でもシャイアと競い合って女性に声掛ける暇はあるじゃんねえ。


ただ、出世頭な近衛兵なわけで、ココナツ子爵領まで行くほど休みは取れないかな。




と、お兄様を弁護したくなるところだけど、実はユーリナ様は皇都にいるの。




源氏物語的にもしかして、と探してもらったら見つけました。


サウス公爵家の使用人は優秀ね。




お兄様やマリーお姉様に知らせると面倒なことになりそうなので、まずは私が会いに行くことにした。




後書き

「夕顔」こと「VSユーリナ編」スタートです。


いずれ本編でも説明が入りますが、年が明けたので登場人物たちは1章2章からそれぞれ一つずつ年齢が上がっています。




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