第33話 秘境の温泉地とトラブルメイカー -4
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10. 温泉地の大ヒットとフィーネの困惑
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アリスの歌と美肌効果の相乗効果で、秘境の温泉地は瞬く間に「奇跡の美肌温泉」として口コミで広がり、大ヒットを記録した。連日、多くの観光客が押し寄せ、フィーネの商会には莫大な利益が舞い込んだ。
「フィーネさん!見てください!温泉地開発、大成功です!まさかの大黒字です!」
「うう……信じられない……」
フィーネは、収支報告書を手に、呆然と呟いた。莫大な利益に歓喜するフィーネだが、その原因がヒロインたちの「ポンコツ」な行動であることに困惑を隠せない。
「まさか、アキナちゃんの高所恐怖症で源泉が枯れて、リリアの方向音痴で洞窟が見つかって、エルミナちゃんが洞窟を破壊して、セラちゃんが魔力を吸い取って、アリスさんの歌で宣伝されて……」
「それが全部、美肌温泉に繋がるなんて……」
フィーネは頭を抱えた。その横で、他のヒロインたちは、自分たちの成果に満足げな表情を浮かべていた。
「やったー!美肌温泉、大成功だぜ!」
「アキナ、お肌ツルツルになったな!」
「ふふ、私の魔装具も役に立ちましたね!」
「イリス様、この美肌効果のメカニズム、論文にまとめられますね!」
「ええ、非常に興味深いデータだわ」
「無事……終わって……よかった……です……」
ルナは安堵した様子で呟き、リリアは腕を組み、呆れたようにフィーネを見ている。
「まったく、こんなに儲かったのに、まだ悩んでるなんて」
フィーネは、もはや自分の理解を超えた状況に、ただ立ち尽くすしかなかった。
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11. ギルドでの収支報告とエルザの腹黒い笑み
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冒険者ギルドの受付カウンター。
フィーネは、頭を抱えながら、今回の温泉地開発の収支報告書をエルザに提出していた。
「エルザさん!信じられますか!?温泉地開発、まさかの大黒字です!」
「私の苦労が報われました!」
フィーネは、喜びと疲労がない交ぜになった表情で訴える。エルザは報告書をちらりと見て、にこやかに微笑んだ。
「ふふふ……ええ、そうでしょうね。わたくしの目論見通りですわ」
「えっ、目論見通り!?」
「ええ。今回の温泉地開発は、初期投資と損害で大赤字でしたが、結果的に『美肌効果付きの温泉』が大ヒットしましたわ」
「フィーネ、契約通り、利益の50パーセントはギルドが頂戴いたしますわね」
「ご、50パーセントですって!?そんな、ひどい!」
「け、い、や、く、ですからね!」
「…オニ」
「んん? 何か言ったかしら、フィーネ?」
フィーネは絶句した。
莫大な利益が、半分もギルドに吸い上げられるとは。
フィーネはエルザの気迫に押され、思わず後ずさった。エルザの完璧な笑顔の裏に、獲物を狙う猛獣のような鋭い眼光が宿っている。フィーネは、エルザの腹黒さに、もはや何も言えなかった。
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12. 物語の結末とアリスの歌
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エルザは、満足げな表情で紅茶を一口飲むと、心の中で呟いた。
(まったく、これだから問題児は手放せないわ。おかげで厄介な依頼が一件片付いたわ。それに、この温泉地……冬には高値で売れるわね……)
エルザは、次の獲物を狙うかのように、鋭い視線をギルドの掲示板へと向けた。ギルドの奥からは、アリスの歌声が響いてくる。
「〜♪秘境の温泉地は大ヒット〜、美肌効果で客殺到〜、ポンコツだけど最強の絆で〜、世界を救う物語は続く〜♪」
アリスは、今回の冒険をすでに伝説として美化し、高らかに歌い上げていた。フィーネは、その歌声を聞きながら、胃を抑え、再び机に突っ伏すしかなかった。
彼女の胃の痛みは、大黒字の喜びと、エルザの腹黒さ、そしてポンコツな仲間たちのせいで、複雑な痛みに変わっていた。
物語は、彼女たちの騒動と共に、これからも続いていくのだろう。
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