第25話 料理対決と幻の調味料 -4
_______________________________
10. 料理の評価と審査員の反応
_______________________________
イリスの「伝説の料理」が完成し、審査員たちの前に運ばれた。料理は、見るからに異様な輝きを放ち、その匂いは、香ばしさの中にどこか魔力を感じさせるものだった。審査員たちは、恐る恐る料理を口にする。
「これは……なんだ……!?」
「味覚が……破壊される……!」
審査員たちは、顔を歪ませ、悶絶する。その味は、想像を絶するほどまずいものだった。フィーネは、その光景に絶望する。
「まさか……こんなにまずいなんて……!」
「私の計画が……大赤字が……!」
フィーネは頭を抱え、その場にへたり込んだ。しかし、イリスは冷静に分析する。
「ふむ。味覚の破壊は、想定内ね。
これは、味覚の常識を打ち破る、新たな芸術形式と捉えることができるわ」
「芸術……?」
「ええ。この料理は、既存の味覚の概念を破壊し、新たな味覚の可能性を提示しているのよ」
イリスの言葉に、審査員たちは困惑しながらも、どこか納得したような表情を浮かべ始めた。
「なるほど……これは、まさに前衛芸術だ!」
「我々は、新たな時代の味覚の誕生に立ち会ったのだ!」
審査員たちは、口々に叫び、拍手喝采を始めた。フィーネは、その光景に呆然とする。
「えっ……まさか、優勝……?」
アリスは、そんなフィーネの様子を見て、リュートをかき鳴らし、高らかに歌い出す。
「〜♪料理はとんでもなくまずかったけど〜、前衛芸術と絶賛され〜、まさかの優勝を勝ち取った〜!ポンコツだけど最強の絆で〜、世界を救う物語は続く〜♪」
フィーネは、その歌声を聞きながら、再び胃を押さえるしかなかった。
_______________________________
11. 優勝の喜びと幻の調味料の正体
_______________________________
まさかの優勝に、ヒロインたちは歓喜に沸いた。
フィーネは、大赤字を覚悟していただけに、その喜びはひとしおだ。
「やったー!優勝だー!」
「フィーネちゃん、やったね!」
「幻の調味料、ゲットだぜ!」
アキナが飛び跳ね、セラが目を輝かせ、アリスがリュートをかき鳴らす。フィーネは、幻の調味料を手に取り、その輝きを見つめる。
「これが……幻の調味料……!これで莫大な利益が……ぐふふ」
フィーネは、その調味料を舐めてみる。その瞬間、フィーネの顔から血の気が引いていく。
「な、なんだこれ……!味が……味がしない……!?」
「フィーネさん!?」
フィーネは絶叫した。イリスは、その調味料を解析し、冷静に告げる。
「解析完了。この調味料は、特定の魔力反応を持つ食材の『味』を一時的に消去する効果があるわね」
「えっ、味を消す!?」
「ええ。つまり、この調味料は……ただの味消しよ」
イリスの言葉に、フィーネは膝から崩れ落ちた。幻の調味料の正体が、まさかの「味消し」だったとは。
「はあああ!?味消し!?
こんなもの、どこで売ればいいんですか!私の利益がーっ!」
フィーネは絶望の叫びを上げた。他のメンバーは、その事実に困惑しながらも、どこか楽しそうにフィーネを見ている。
「味消しか!それはそれで面白いな!」
「実験のしがいがありますね!」
「へへん、最高のオチだぜ!歌のネタが増えるぜ!」
アキナが笑い、セラが目を輝かせ、アリスがリュートをかき鳴らす。フィーネは、その光景に、もはや何も言えなかった。
_______________________________
12. ギルドでの収支報告とエルザの腹黒い笑み
_______________________________
冒険者ギルドの受付カウンター。フィーネは、頭を抱えながら、今回の料理対決の収支報告書をエルザに提出していた。
「エルザさん!信じられますか!?幻の調味料が、ただの味消しでした!」
「まさかの大赤字ですよ!私の苦労が報われません!」
フィーネは机に突っ伏し、半泣きで訴える。エルザは報告書をちらりと見て、にこやかに微笑んだ。
「ふふふ……まあ、そうでしょうね。ですが、あなたたちのおかげで、ルチアナ姫様との新たな商談の糸口ができましたわ」
「えっ!?」
「王都の貴族たちの間で、あなたたちの『前衛芸術料理』が話題になっていますもの。次の大口依頼に繋がる可能性もございますわよ」
エルザの言葉に、フィーネは顔を上げて食い下がった。
「未来の顧客獲得!?こんな大赤字がですかーっ!」
「ええ。これは、未来の顧客獲得への先行投資ですわ。今回の活躍が、次の大口依頼に繋がるのですから」
エルザはそう言って、口元だけで笑った。その瞳の奥には、すべてが計画通りに進んだことへの満足感が宿っている。
ギルドの奥からは、アリスの歌声が響いてくる。
「〜♪料理はとんでもなくまずかったけど〜、まさかの優勝勝ち取って〜、幻の調味料は味消しだったけど〜、最強の絆で世界を護る物語は続く〜♪」
アリスは、今回の冒険をすでに伝説として美化し、高らかに歌い上げていた。フィーネは、その歌声を聞きながら、再び机に突っ伏すしかなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます