ep.26 紅葉狩り

「最初から本気を出していればこうはならなかった」

「そうだ」

 僕がそう言うと オレガノは頷いた。


「これは俺が力を出し惜しみした所為で引き起こした結果だ」

「その通りだ」

 オレガノはまた頷いた。


「殺してやる」

 僕はそう呟いた。


「暗黒大禍・第二形態セカンドフォーム

空気中にある無数の膨大な魔力が僕を中心に集まる。僕の身体は少し浮かび、魔力は僕に向かって流れ、包み込み、深い赤色の渦のような球体となった。そして球体は割れ地面に破片が落ちた。僕の宙に浮いていた足は地面に着いた。


 僕の姿は変わり、赤い鎧を身に纏い、深い赤色の見たことの無い古代の文字が刻まれた首輪を身に付けた姿となった。鎧の下には黒いコンプレッションウェアを着ていて、へそが見えるような鎧とインナーを身に付けていた。 赤い鎧には頂点二つが上にくる正六角形の形の胸の鎧の部分にマヤ暦占星術における太陽の紋章の中の一つ『赤い月』の紋章が浮かび上がった。鎧の胸の部分の形は平べったいのでは無く、膨らんでいて前に正六角形の形が出っ張っている形であった。


 そして両眼の下に黒い刻印が浮かび上がった。その刻印は目の下一センチ空けて、眉毛と平行な直線で耳元から鼻近くまで伸びている。そして直線の真ん中から耳垂みみたぶに向って一直線に黒い刻印が伸びている。まるで耳に向かってYの文字が横に倒れているかのような刻印だった。


 口の中の下顎の両方の第一大臼歯だいいちだいきゅうしは発達し、硬い物を簡単に噛み砕くかのような上に突き上げた牙になった。僕の眼の角膜の色は赤に変わり、瞳孔は黒く鋭く尖った。僕の目の光りは失われ冷たい目となった。


 手は指先から手首まで禍々しい深い黒色の化け物の手に、指先の爪はどんな物でも斬り裂く鋭利な爪で、足は化け物みたいな禍々しい黒い三本鉤爪のみで足の爪の部分に二本、踵に一本の鉤爪だった。足の鉤爪が地面に突き刺さっており、鉤爪のみで身体の体重を支えていた。鉤爪は人の頭を鷲掴みし、粉砕する事の出来るような大きな爪であった。先までの力とは別の次元の力となっているのを誰が見ても言える位、異質の力であった。


「それだよ!その力を待っていたんだよ!!その他者を一切寄せ付けない圧倒的な力を!!」

 オレガノは僕の姿を見て興奮していた。


「君の強みはその圧倒的な力だ。力を出し惜しみするのは弱者がやる事だ」

 オレガノは言い放った。


「さあ、その力を私に見せてくれ!!」

 オレガノは僕にそう言った。


「ん?何だ?………、ぐっ!」

 ヨミはオレガノに手を向けるとオレガノは吹っ飛んだ。


「はは、風魔法か…、攻撃に気づかなかったよ」

 ヨミはクロスの元へと歩いた。


「クロス。今、治してやるからな」

 僕はクロスに回復魔法を掛けた。クロスの傷は治った。


「父さん…」

 クロスは目覚め、僕を呼んだ。


「クロス、お前を戦いに巻き込んで悪かったな」

 僕はそう言い、クロスの身体の下に魔方陣を展開した。転移魔法でクロスを移動させた。


「君は自分の子供を人質に取られると弱くなる。そして君は泣いて殺すのは止めてくれと懇願する」

「君は結婚して子供を作るべきでは無かった」

 オレガノは言った。


「強いか、弱いかは今の僕と戦ってから決めればいい」

 僕はオレガノに言った。


「それはそうだな」

 オレガノは答えた。


「来い、ヨミ!!」

 オレガノは叫んだ。


「!」

 僕は足の鉤爪で地面を蹴りあげ、目にも止まらぬ速さでオレガノに向かって突進した。


「直線斬り!!」

「くっ!」

 オレガノは僕の攻撃を咄嗟に反応し剣で防御した。


「くっ…」

 僕は両手の拳を交互に振るった。オレガノは後ずさりしながら僕の拳を防御した。


「おらあっ!!」

 オレガノは僕に向けて剣で薙ぎ払った。


「!」

 僕は横に振られた剣を上体を反らしギリギリで避けた。そしてそのまま後方宙返りし、バランスを崩した身体の体勢を整え、そして間髪入れず地面を蹴り、オレガノに向かって飛び込んだ。


「があっ!!」

 オレガノの腹に渾身の一撃を打つけた。


「ぐぐぐぐ…」

 オレガノは先の攻撃の痛みで手に持っていた剣を落とした。


「容赦はしない」

「暗黒竜拳」

 僕は両手に深い黒色のオーラを纏わせた。


「くっ…、く、く、ぐっ!!」

 僕は何度もオレガノに向けて拳を打つけた。オレガノは防御するが一発の拳が防御をくぐり抜け身体にヒットした。オレガノは両手を地に突け、不安定な呼吸をしていた。


 バツン!!!

 僕はオレガノを勢いよく蹴り上げた。大きな鉤爪で勢い良く蹴り上げたので聞いた事の無い音が響き渡った。オレガノは遠くまで弾き飛ばされ地面に転がった。


「肉弾戦じゃ良い勝負にならないな…」

 僕はそう言い、オレガノの剣を手に取り、オレガノに向けて軽く投げた。剣は宙を舞いオレガノの側に落ち地面に突き刺さった。


「魔力固定」

 僕は黒い大剣を作り出した。


「剣術勝負といこうか」

 僕はオレガノに向かって走り剣を振り下ろした。オレガノは地面に突き刺さっていた剣を抜き、僕の剣を受け止めた。


「おらあっ!!」

 僕は身体の軸を回転させ、黒い大剣をぶん回した。


「ヨミ…。お前…、大技に頼りすぎて…、剣術が衰えているんじゃないだろうな…」

「うおらああああ」

 僕は痛い所を突かれ叫び、剣の斬撃をオレガノに浴びせようとした。


「これは恐ろしい剣だな」

 オレガノはヨミの気迫に押された。オレガノは息を整えた。


 ギギギギギ。

 剣同士が擦れあい、音が鳴る。


「回転斬り!!」

 そして僕は一旦、後ろに移動し、また前に行く時に身体を回転させ剣を横に振りぶん回し、より斬撃の威力を上げた。


「ぐっ!!」

 僕の剣を受け止める。僕がぶん回した黒い大剣の重さにオレガノは全身に力が入る。


「ヨミ!!」

「オレガノ!!」

 互いに何度も剣を交え、接戦となり鎬を削った。


「!」

 戦う中でオレガノに隙が生まれた。


「もう剣の勝負は付いた」

覇道羅刹はどうらせつ

 僕は剣を捨て、拳に魔力を込めオレガノの顔面に拳を打つけた。オレガノの仮面はひびが入りそして割れた。


「何で…」

 僕はオレガノの仮面が割れ、仮面は地に落ちた。そして僕はオレガノの素顔を見て驚いた。


「遠山先生!!」

 僕は信じられなかった。黒十字騎士のメンバーに呪いを掛け、イザベラを殺そうとし、僕の娘を殺そうとした奴が遠山先生だった事に…。確かに時間を司る魔法は古代魔法と呼ばれてて、おいそれと使える物では無い。だから時間魔法を使った時、気づくべきだった。僕は遠山先生がオレガノの正体だという事は有り得ないと勝手に決めつけていた。


「何で貴方が…」

「………」

 遠山先生は黙ったままであった。僕が遠山先生の顔を見ると遠山先生の髪は白髪で顔は老けていた。


「答えて下さい!!」

 僕は叫んだ。


「君にまだその答えを言う訳にはいけない。私を倒したら教えよう」

 遠山先生はそう僕に言った。


「冗談なんですよね。僕を驚かせるためのサプライズなんですよね」

 僕は現実を信じられなかった。


「残念ながらサプライズでは無いよ」

 遠山先生は答えた。


「先生、貴方は僕の恩人だ。だから僕はもう先生とは戦えない」

 僕は涙を流した。


「甘えるな!!」

 遠山先生はそんな僕に怒鳴った。


「私を殺さないとお前の家族全員死ぬぞ!!」

 遠山先生の鬼気迫る気迫に僕は押された。


「分かりました。僕は次の一撃で貴方を殺します」

「そうだ。それでいい」

 遠山先生は落ち着いた声でそう言った。


「狂気に満ち、揺らめく黒き業火に全てを喰らい尽くす災いをもたらす破滅の力。大禍津日神おおまがつひのかみと化す、我が力よ。我が呼び声に応え給え」

 僕は唱え始めた。


「運命に呪われし我が力。全てを破壊し尽くし新たなる世界を創り変え給え。攻撃不可避の呪術をこの大技に付与する」

 そして遠山先生も唱え始めた。そして両者とも最後まで唱え終えた。


「どんな理由があろうと俺は貴方を許せない。だからこの最強の一撃を貴方に打つける」

 僕はもう迷わない。俺の家族を守るために遠山先生を殺す。僕の黒い大剣に黒い炎が纏った。


「そうか。私もこの最強の一撃で迎え撃とう」

遠山先生は黒い大剣に有りっ丈の力を込めた。遠山先生の周りに青いオーラの色の稲妻が走った。剣の持ち手から刀身にかけて青い閃光が走る。遠山先生の黒い大剣は青いオーラが渦みたいに流れた。


「失われし究極魔法:世界を焼き尽くす炎ダークエンド・オーバー!!」

「古代究極魔法:イル・ネア・ブラスト!!」

 黒い炎と青い斬撃が打つかり合い、地を削り取った。


「オレガノォォォォォォォォ」

「ヨミィィィィィィィィィィ」

 僕らは叫んだ。そして辺り一帯を破壊し尽くした。



 オレガノとの戦いは終わった。


「先生…」

 僕は地面に倒れている遠山先生の傍に駆け寄り、片膝を突いた。


「折部君、君の力は最高だった。これで最悪は回避できる」

 遠山先生は掠れた声でそう言った。


「先生、何でこんな事をしたんですか?」

 僕の率直な疑問だったので聞いた。


「君には全てを話そう」

 遠山先生は話し始めた。


「私は遙か先の未来から来た。未来ではある男が世界を破壊し尽くし、世界の滅亡の危機が訪れていた。折部君の家族、私の息子達も戦うが敗れ殺された。私は過去へ何度もタイムトラベルし、未来を変えようとしたが上手くいかなかった」

 遠山先生はそう言った。


「僕は奴と戦って死んだのか?」

 僕は聞いた。


「いや、死んでいないよ。ただ、君は自分の力を大半、自分の子供に上げたから君は奴には勝てなかった」

 遠山先生は答えた。


「折部君、君の家族や友人を狙った理由を言ってなかったね。未来では奴は君の大切な人を狙い君を追い詰めた。君は大切な人を失い、戦意喪失して奴と戦うことを止めた。だから私は過去に戻り、君の心を強靱な物とするために君の大切な人を狙った」

 遠山先生は僕が知りたかったことを全て答えた。


「君にこれを渡す」

 遠山先生は僕に黒い球を渡した。


「これは?」

「これは古代の力を封印した物だ。この球を割れば君が封印した古代の力と記憶が元に戻る」

 遠山先生は答えた。


「遠山先生、貴方は古代の力を手に入れて奴と戦ってどうだったんです?」

 僕は聞いた。


「残念ながら奴には全く歯が立たなかったよ。私は古代の力を手に入れたけど完全には適合はしなかったからね」


「僕が古代の力を手に入れても奴には勝てないんじゃないですか」


「いや、勝てるさ。私は勘違いをしていた。君が家族を持った所為で弱くなったと思った。けれど違う、君が家族を大切な人を守ろうとするその強い思いがあれば、誰にも負けない力になるんだ」

 遠山先生はそう僕に言った。


「時間のようだね。僕の意識はもう直ぐ無くなり、死ぬ」

「いいんだ。もう私は疲れた。」

 僕が遠山先生の傷を治そうとしたが止められた。


「折部君…」

「何です?」

 僕は遠山先生の手を握り聞いた。


「君の大切な人を狙ってすまなかった。それから勝手な事を言うが聞いてくれ」


「私は…、もう、私の息子が死ぬところなんて見たくない。だから…、未来を変えてくれ」


「分かりました。必ず皆が笑って暮らせる未来にします」


「ありがとう、折部君…」

 僕はそう言うと遠山先生は安心したのか眠りについた。そしてもう二度と目は覚まさなかった。


 僕はその後、遠山先生に全てを話した。そして遠山先生の指示で未来から来た遠山先生の遺体を木々が生い茂る墓地に埋めた。遠山先生と話し合い、オレガノの正体が未来から来た遠山先生だと皆には言わない事にした。それから眠らせる呪いに掛かっていた黒十字騎士と王は目を覚ました。そしてこの戦いは終わった…。



 十一月の下旬になり、段々と寒くなっていく頃だが今日は暖かいのでみんなを集めて紅葉狩りをする事になった。紅葉の木に囲まれた場所に辿り着き、僕たちは紅葉の葉っぱの絨毯の上にレジャーシートを敷いて食事と飲み物を出した。皆座り、自分の飲み物を注いだ。


「今日は皆、集まってくれてありがとう」

 僕は始めにそうみんなに言った。


「円卓の騎士やオレガノと戦ったがみんな怪我無く無事で良かった」

「今日は無礼講だ。一杯食べて沢山飲んでくれ。皆、乾杯の準備は出来たかな?」

 僕は皆の顔を見た。準備は出来たようだ。


「皆のこれからの輝かしい未来に乾杯!」

「「乾杯!!」」

 僕がそう言うと皆で乾杯した。

 皆、豪華な食事を食べ始めた。


 僕が飲み物を飲んでいる時、ルナを見るとルナはいつもより元気が無いように見えた。


「ルナ、どうしたんだ?調子が悪いのか?」

 僕はルナに聞いた。


「調子は悪くない。いつかまた敵が現れて子供達が傷を負うかもと思うと気が気じゃなくて…」

 ルナはそう言った。


「ルナ、心配するな。次に敵が現れても俺が皆を守るから大丈夫だ。俺が一人で戦う」


「何言っているんだよ、父さん。僕達もいるよ」

 僕がそう言うとテオはそう言った。


「いや、決めたんだ。僕はもっと強くなって自分の子供の手を借りずとも戦うって」


「父さんは間違っている。何で俺らを頼らないんだよ。俺達は家族じゃないのかよ。助け合うのが家族だって教えたのは父さんだろ。父さん一人で抱え込むなよ!!」

「ロキ…」

 僕はそんな事を息子に言われるとは思っていなかった。


「………」

 僕は息子の言葉に涙が自然と流れた。


「ロキの言う通りだよ。父さん一人じゃない、僕達もいるんだ」

 ルークはそう言った。


「そうだよ、父さん」

 クロスはそう僕に言った。


「ありがとう、皆。まさか自分の子供に泣かされる時が来るとはな、ははは…」

 僕は流れてくる涙を服で拭った。


(俺は本当にいい子供に恵まれたな。俺一人じゃないか…。確かにそうだな。でもな俺は本当は子供に戦わせたくないんだ。子供に戦わせ殺される思いはもう御免だ。だから俺はもっと強くならないといけないんだ。例え、子供達の思いを無下にしたとしても…)

 僕は誓った。


 僕はふと上を見上げ赤く染まった紅葉を見た。風が吹き、赤い紅葉の葉がひらひらと落ちてきた。


「紅葉は美しいな」

 赤々と彩られた美しい紅葉を見て季節の美しさを感じた。

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