ep.24 イザベラは殺された

「どうして…」

 僕とリリアはイザベラの遺体のある部屋に入り、イザベラの遺体に被せられた白い布を取り、遺体を見た。イザベラの胸に大きな剣で突かれた痕があった。僕は再びイザベラの遺体に白い布を被せた。


「リリア、お前達はイザベラを殺した犯人を見ていないんだな」

「うん、見ていない」

 リリアは答えた。


「リリア、俺は時の石で昨日に戻る。何時に戻った方が良いとかあるか?」

「何時でも大丈夫。だけど戻れるだけ時間を戻した方が良いと思う。

「ああ、分かった。戻れるだけ時間を遡るよ」

 僕は答えた。


「ヨミ、貴方が時間を遡ったら私たちにイザベラが殺される事を皆に教えて。皆でイザベラを殺す暗殺者を迎え撃ちましょ」

 リリアは提案した。


「ああ。俺がイザベラの傍にずっといればイザベラは殺されないから安心しろ」

「ヨミ。お願い、イザベラを助けて」

「ああ。分かった」

 僕はそう言い、空間魔法で時の石を出し、念じ過去へ戻った。



 僕は過去に戻り、昨日の昼に辿り着いた。僕はゲートを使いイザベラの部屋に来た。


「どうしたの?ヨミ」

 部屋にいたイザベラは僕に聞いた。


「イザベラ、リリアを呼んでくれるか。二人に話がある」

 僕がそう言うとイザベラはリリアを呼んだ。二人はイザベラの部屋に来た。僕は二人にイザベラが夜中に何者かに殺される事を伝えた。


「どうすれば良いの?」

 リリアは僕に聞いた。


「僕がイザベラを警護するからイザベラは今から明日の朝まで僕の傍にいてもらう」

「イザベラは僕の言う通りに行動するんだ」

「分かったわ、ヨミ」

 イザベラは答えた。僕はイザベラにどう行動するか伝えた。


 僕はお昼をイザベラと一緒に取り、イザベラの傍にいた。


「まさか私が殺される時が来るなんてね」

 イザベラは自分の部屋の椅子に座ると息を吐き、そう漏らした。


「イザベラは自分の死は予知出来ないのか?」

 僕は疑問に思い、聞いた。


「私は自分の未来の予言は出来ないわ」

「そうか…」

 僕はイザベラの予言は万能だと思っていたが欠点が有るとは思ってもみなかった。


「今日はベッドでぐっすりと眠ることは出来そうに無いようね」

「イザベラ、俺がいるから今日は安心して眠っていい。敵は俺が蹴散らしてやるから安心してくれ」

「ありがとうね、ヨミ。貴方を信じるわ」

 イザベラを元気付けた。イザベラは僕の大切な人だ。幾度も僕らの危機を教えてくれて協力してくれた恩人だ。イザベラを必ず守ってみせる。僕はそう心に誓った。



 僕らは夕食を取り、各々寝る準備をした。

 夜中になり、寝る時間になったのでみんな自分の部屋で寝た。


 ギィィッ。

 イザベラの寝室の窓から窓を開ける音がした。フードを被り仮面を着けた男がイザベラの寝室へ窓から入って来た。そしてイザベラのベッドの横へ行き、黒い大剣で布団で膨らんでいる所に刺した。


「!」

 男は刺した時の感触に違和感を感じ、布団を引っがした。そうすると中には丸められた布団だった。


「残念だったな、イザベラはここに居ないよ」

 僕は中身を空にして入ったクローゼットから出てきて仮面を着けた男にそう言った。


「時間が戻っている。お前の仕業だな、ヨミ・レッドフィールド」

 仮面の男の声がボイスチェンジャーを使ったような声をしていた。


「イザベラを殺すのは失敗したがまたの機会にしよう、私は逃げる。さようなら、ヨミ・レッドフィールド」

「待て!」

 仮面の男は窓から逃げた。


「逃がさない」

 僕はゲートを使い仮面を着けた男の目の前に現れ、黒い大剣で斬りつけようとしたが、仮面の男は左腕でガードした。仮面の男の左腕から血が流れ落ちた。


「………」

 月明かりが僕らを照らす。僕と仮面の男は剣を構えた。


「おい、お前。何故、イザベラを狙う」

 お互いに剣が打つかる。


「イザベラの予言が邪魔だからだ」

 仮面を被った男はそう答えた。


「何を隠そう、お前達、黒十字騎士を襲撃したのはこの私だ」

 仮面の男は真実を言った。


「お前だったのか。皆を元に戻せ!」

 僕は吠え、互いに何度も剣を交え、鎬を削った。


 ギギギギギ。

 鍔迫り合いになった。


「ハードバースト!!」

 僕は叫び、魔力を黒い大剣に流す事で斬撃の威力を上げた。黒い大剣に赤いオーラが流れた。


「!」

 斬撃の威力は上がり、仮面の男の黒い大剣は折れた。そして仮面の男の首元に僕の剣が迫り来る。


「ハードバリア」

 仮面の男は迫り来る黒い大剣を青いバリアで弾き返した。僕はバリアの威力に弾かれ、後ろに移動した。


「お前は何者だ!」

 僕は叫んだ。


「ふっふっふっ。私の名はオレガノ。覚えておくがいい」

 仮面の男は笑い、仮面の男の頭の上に青い天使の輪が現れた。


「まさかお前は!!」

 僕は気がついてしまった。仮面の男の正体を…。


「ここまで追い詰められるとは思ってもみなかったよ。また会おう、ヨミ・レッドフィールド」

 仮面の男は目の前に黒い煙玉を投げ、辺り一面真っ暗になった。


「くそっ、逃げられた」

 もうここには仮面の男はいなくなっていた。



 僕はイザベラの家に戻り、リリアの部屋にいるイザベラの様子を見に行った。そして仮面の男の事を話した。僕は朝までリリアの部屋にいるイザベラを見守った。イザベラは安心したのかぐっすり眠った。


「おはようございます、イザベラ」

「おはよう、リリア」

 イザベラは日頃の疲れのせいなのか昼まで眠っていた。リリアは昨日の襲撃者の事をみんなに話し、この城の警備を厳重にし、城の守りを強めた。イザベラの傍に手練れの部下を配置した。


「ヨミは?」

 イザベラはリリアに聞いた。


「先、帰りましたよ」

「そうなのね」

 イザベラはそう言った。


「!」

 イザベラは先まで見た夢を思いだせなかったが急に思い出した。


「リリア!急いでヨミの所に行きましょ」

 イザベラは焦った。


「どうしたんですか?」

「早く行かないとヨミが!」

 イザベラはリリアと共にゲートでヨミの家に向かった。


 僕は昼までイザベラの傍にいたがもう大丈夫だと思い、自分の家にゲートを使い戻った。


「お帰りなさい」

 エリナは僕が玄関のドアを開けるとそう言った。


「ただいま」

「ヨミの分のお昼ご飯準備するから待ってね」

「今日はお腹空いてないからいいや」

「そうなんだ、分かった」

 エリナは答えた。


「どうしたの?大丈夫?」

 エリナは僕の険しい顔を見て聞いた。


「何でもない」

 僕はそう言い、みんなの集まるリビングに行った。

 レイジが僕の娘達とお飯事おままごとをして遊んでいた。


「レイジ、その腕の傷どうした?」

 僕はレイジの腕に包帯が巻かれているのを見て聞いた。


「ああ、これは一人で剣の特訓をしていたら怪我しちゃったんだ」

 レイジは答えた。


「ほう。レイジ、お前嘘つくの上手になったな」

「どういう意味?」

 レイジは聞いた。


しらばっくれてるんじゃねーよ!!テメエ!!」

 僕はそう言い、レイジの胸ぐらを掴んだ。


「お前がイザベラを殺そうとした犯人って事は分かってるんだよ!」

「何の事だよ」

 レイジは父さんが何の事を言っているのか分からなかった。


「お前は昔から俺の事を恨んでいるって言ってたよな。ルナの夢を潰したから。だからって俺の仲間とイザベラを襲撃するなんて冗談で済まされるもんじゃねえんだよ」

 僕は胸ぐらを掴んだ手を高く上げた。レイジは苦しそうだった。僕の娘達は泣き喚いた。


「何してるの!!」

 ルナは異常に気づき、僕の方へと来た。


「ヨミ、止めて。何してるの!!」

 ルナは僕を止めたが僕はレイジから離さなかった。


「何やっているんだよ、親父!!!」

 ルークもリビングに来て、僕を止めた。僕はレイジから手を離した。


「お、お前、冗談でしたじゃ済まされねえんだぞ!」

 僕は激高し、後から来た僕の子供達に止められた。僕はレイジから引き離された。


「遅かったようね」

 イザベラとリリアはリビングに入ってきた。


「何やっているんだよ、親父…」

 ルークは僕にそう言い、僕は昨日あった事をみんなに話した。僕は今まで何回も送った人生で青い天使の輪は誰にも譲渡した事が無く、だからレイジが最近身につけた力を知っていたからイザベラを殺そうとしたのはレイジだと思った。それと夜中の襲撃者に手傷を負わせた、レイジの怪我した場所と同じだったのを見て激高してしまった。


「自分の息子を信じられないなんて、貴方は間違ってる」

 ルナはレイジを抱きしめ僕にそう言った。


「じゃあ、イザベラを殺そうとしたのは誰なんだよ」

 僕は自棄糞やけくそに聞いた。


「………」

 みんな黙った。


「話を聞いてみるに黒十字騎士を襲撃しイザベラを亡き者にしようとしたオルガノと言う奴は計算高い奴だと俺は思う。父さんがレイジに激高するように仕向ける事で父さんの家族と父さんと引き離そうとしているんだと思う。だからレイジは犯人では無いよ」

 レオはそう言った。


「その通りよ、ヨミ」

 イザベラはそう言った。

 僕は皆にそう言われ納得した。


「レイジ。俺が悪かった、ごめん」

 僕は土下座しレイジに謝った。


「いいよ、父さん。僕も父さんに疑われるような言動を取っていたし」

 僕とレイジは仲直りした。


「さて、積もる話はおやつを食べながらでもしましょ」

「「わーい。おやつだぁー」」

 エリナがそう言うと子供達、みんな喜んだ。暗い雰囲気だったがその言葉に救われた。



 三日後…。


「起きて、ヨミ。起きて!!」

 僕はいつも昼まで寝るのだが昼になる前にルナに起こされた。


「どうしたんだ?ルナ」

 僕はルナに聞いた。


「レイナが、レイナが!」

 ルナは涙を流しなら慌てる様子に僕は目が覚めた。

 僕とルナはレイナの部屋に向かった。


「通らせてくれ」

 レイナの部屋の入り口に人だかりが出来ていたので僕はそう言い、部屋に入った。


「レイナ、大丈夫か?」

 僕はベッドで眠っているレイナに聞いた。


「レイナ!レイナ!!」

 僕はレイナを揺さぶるが反応が無かった。


「心臓は止まってはないだろうな」

 僕はレイナの胸に耳を当て心臓の鼓動を聞いた。


「心臓の鼓動が弱いな…」

 僕がそう言うとルナは泣いていた。


「皆、僕の傍から少し離れて!」

 僕はそう言い、みんな少し僕から離れた。


「力を半分、譲渡する」

 僕の頭の上に赤い天使の輪を顕現させレイナの心臓の上に手を当て力を少しずつレイナの中に注いだ。


「お父さん?」

 レイナの目が覚めた。みんなレイナが目を覚まし喜んだ。


「どうしたの?皆」

 レイナは聞いた。


「レイナが心配だから来たんだよ」

「そっか…」

 レイナは納得した。


「レイナ、お前は呪いを掛けられている。僕の仲間と同じ呪いを…」

 僕がそう言うとざわついた。


「レイナがこうなる前に誰かに魔法を掛けられた事はあるか?」

 僕は聞いた。


「分からない、急に身体の調子が悪くなって動けなくなったの」

 レイナは答えた。


 レイナは昨日から体調が悪くなり、ベッドに伏せっていた。医者のミアに診てもらったが病名は分からないが何かの病気にかかっていると言っていた。一応、薬は処方して貰った。僕はまあ、大丈夫だろうと思っていたがこうなってしまった。


「ヨミ、レイナはもう大丈夫なんですよね」


「………」


「ヨミの力を譲渡したから呪いも無くなったんですよね」


「いや、呪いは無くなっていないよ。それにこの呪いにかかった仲間と国王は眠っただけで済んだがレイナにはこの呪いに耐えきれる身体を持っていない」


「どういう意味ですか?」

 ルナは恐る恐る聞いた。


「レイナはこの呪いに耐えきれずに数日後には死ぬ」

 僕は事実を述べた。


「そんな…」

 ルナは両膝を地に突いた。


「なら貴方の力を全てレイナに譲渡すれば」


「いや、ダメだよ。力を全て譲渡するとレイナは力の大きさに耐えきらず死ぬよ」

 僕がそう言うとルナは神にも見放された表情をした。


「お父さん…。私、死ぬの?」

 レイナは今にも消えそうな声で聞いた。


「大丈夫だよ。レイナを助ける良い方法がある。だから安心して眠りな。起きた頃には解決しているから」

 僕はレイナの手を握り、そう言った。


「分かった。お休み、お父さん」

 レイナは起きていたために体力を消耗したのかすぐに眠りについた。


「父さん、レイナを助ける方法があるの?」

「ああ、あるよ」

 ロキにそう言われ僕はそう答えた。


 僕は空間魔法である本を取り出した。この本は僕が考えた魔術を書き記した物だ。僕は本を開き、使う魔法のページを開くとそのページの部分を本から切り離した。そしてルナに渡した。


「この紙に書かれているものは呪いを相手に移す事が出来る魔術だ。これは血の繋がりのある者同士でしか移す事が出来ない魔術だ」


「これを僕とレイナに掛けてくれ」

 僕はそう言った。


「何、言ってるんだよ。父さん!」

 テオは僕にそう言った。


「最近はいつもルナを傷つける事しか出来なかったから、たまには夫らしい事をしないとな」 僕はそう言い、自分の子供達の傍へ行った。


「父さん、本当にやるんだね」

 クロスは僕にそう言った。


「ああ」

 僕はそう答えた。


 僕の子供達が僕を中心に囲み僕を抱きしめた。


「お前達は僕の宝だ」

 僕も自分の子供を抱きしめた。それをエリナ達は見守った。


「レイナに呪いの魔法を掛けた奴は狡猾で陰でこそこそする卑怯者だ。お前達の手で奴を倒し、呪いを解くんだ」


「分かったよ、父さん」

 僕は子供達にそう言った。僕は次にエリナ達の前に行った。


「皆、僕の子供達を頼む」

 僕は妻達にそう言った。僕の妻達は涙を浮かべ頷いた。


「アリア、お前には僕の力の一部を渡す。手を出して」

 僕はそう言うとアリアは手を出し僕は握った。僕の頭の上に赤い天使の輪が現れ、そして消え、アリアの頭の上に顕現した。アリアの頭の上にあった赤い天使の輪は消え、無事、譲渡に成功した。


「アリア、この力でみんなを守ってくれ」

「分かった」

 アリアはそう言った。


「水月、お前がこの中で一番年上だ。みんなを頼んだぞ」

「分かっている、ヨミ」

 水月はそう言った。


「ルナやってくれ」

 僕はレイナの隣でベッドに仰向けに寝そべった。


(何、泣いてるんだよ)

 ルナは僕を見て涙を流していた。


「皆、頼んだぞ。オレガノを倒すんだ」

 ルナは魔方陣を展開させた。そして唱えた。僕の意識は消えた。



「んー」

 レイナは目が覚め上半身を起き上がらせた。


「どうしたの?皆」

 レイナは隣に目をやるとヨミは眠っていた。そしてみんなの様子から察するにレイナの所為でこうなったのは明白だった。


「私の所為だ。私の所為でお父さんが!」

 レイナは涙を流した。


「違う、違うよ。レイナの所為じゃないよ」

 ルークはレイナの手を握り、励ました。


 ルーク達はレイナが落ち着いた後、イザベラとフェリクス、阿修羅を呼び、オレガノと戦う作戦を練った。



「お父さん、何で逃げないといけないの?」

 フェリクスは自宅に戻ると、家族で逃げる準備を始めた。


「ねえ、お父さん!!」

 フェリクスの次女は言った。


「ヨミが戦えないんじゃ、敵との戦いには絶対勝てない。お前も逃げる準備を早くしなさい」

「呆れた。何でクロス君達は戦うのにお父さんは逃げるの?ゼノ君だって戦うのよ」

 フェリクスの次女は聞いた。


「ヨミの強さは俺が一番よく知ってる。だから間接的にとはいえ、ヨミを戦えなくした敵とは戦えない。戦ったって犬死いぬじにするだけだ」

「私達はここに残る」

 フェリクスの次女はそう言った。長女、三女、嫁もフェリクスの行動に戸惑っていた。


「私の言う事を聞くんだ!!」

「嫌だ」

 次女は反発した。


「お前達を見す見す、殺される訳にはいかないんだ」

 フェリクスはそう言い、次女に眠らせる魔法を掛けた。


「別の世界に逃げるぞ」

 フェリクスの普段とは違う様子にみんな従うしかなかった。


(悪いな、ヨミ。俺には恨まれても守らないといけない家族がいるんだ)

 フェリクス一家は四の世界に行った。

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