白井誠の手記
雷電社に関する郷土資料館や図書館の文献を通読した結果、群馬県某所に特有の雷神信仰を再認識することができた。
『降雷神信仰誌』では、大正・昭和初期まで続いた雷除け祭祀や雨乞い祭礼の記録、祠の図面や供物台帳、そして雷災や水害の被害例が具体的に残されている。境内絵図の詳細からは、雷を恐れつつも恵みを祈る人々の祈りと実践の痕跡がにじみ出ており、単なる迷信の枠を超えた生活・農業・災害対応のリアルな基盤として機能していたことが理解できた。
図書館で閲覧した『雷電社古文書集成』でも、元禄・天保期における雷電社への雨乞祀願や修繕台帳、さらには寄進文書・雷除祈祷録など、信仰行動が極めて系統的かつ長期にわたって維持されてきたことが分かる。この土地で雷神を祀る意味は「災厄消除」の一点でなく、「水・作物の収穫」「電気災害防止」など、現代にも通じる“自然との対峙”だったと再認識した。
印象的だったのは、どちらの資料でも「供物を欠かすと祟りがある」「石を祠から持ち出すと家族に異変が起こる」といった口伝の断片が、事実として何度も記されていたことだ。
しかし、現実には昭和以降に信仰は衰退し、現代では忘れ去られてしまっている。工場の立地や都市化によって祠が荒れ、祭礼が途絶えることで“不吉な出来事が増えた”という住民の証言は、現代の怪異体験や電気災害が、こうした地域信仰の消失と関係している可能性を示唆している。
これらの史料に触れたことで「夢と現実の狭間」に揺れる今の症状というのは、数世代にわたる地域史・民間信仰、土地と人間、その間に織り込まれた記憶層が呼び寄せた“雷神の影”なのではないか――そう感じずにはいられない。
2025年9月5日
白井誠
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