企画参加短編:『青:異常』

江口たくや【新三国志連載中】

第1話 可愛らしい小さな男の子、青頭巾ちゃん

 昔々、あるところに可愛らしい小さな男の子がいました。


 誰でもその子を見ると可愛がりましたが、特におじいさんが一番で、子供にあげないものは何もないほどの可愛がりようでした。


 あるとき、おじいさんは青いビロードの頭巾をあげました。その頭巾は子供にとてもよく似合ったので子供は他のものをかぶろうとしなくなり、それでいつも青頭巾あおずきんちゃんと呼ばれました。


 ある日、お父さんが青頭巾に言いました。

「ここに、ラムネケーキとキュラソーが一本ある。おじいさんのところへ持って行ってくれないか。おじいさんは、これが大好物でね。暗くならないうちにでかけなさい。行くとき、ちゃんと静かに歩いて、道をそれないように。転んでビンを割ってしまったら、おじいさんは何ももらえなくなって悲しんでしまう。ちゃんと挨拶をして、挨拶の前に前にあちこち覗き込んだりしてはいけないよ」

「よく気をつけるよ」

 青頭巾はお父さんに言うと、お父さんは青頭巾を優しく抱きしめました。お父さんは、寂しそうな顔で青頭巾を見つめました。

「おじいさんにこれを渡したら、おじいさんが食べ終わるまで、青頭巾ちゃんは食べてはいけないよ。これは、おじいさんへの贈り物だからね」

「はい。でも、そんなに心配しないで。お父さん」

「おじいさんが疲れて寝てしまったら、迷惑をかけないうちに帰っておいで」

「はい。大丈夫だよ。ぼくはお父さんの子供なんだから」

「よし。いい子だ。お父さんの言うことをちゃんと守るんだよ」

 お父さんは青頭巾の頬にキスをすると、頭を優しく撫でました。




 おじいさんは村から1.5キロ離れた森に住んでいて、青頭巾が森に入ったちょうどそのとき、狼に会いました。

「こんにちは、青頭巾ちゃん」

「ご親切にありがとう、狼さん」

「こんなに早くどこへ行くんだい、青頭巾ちゃん?」

「おじいさんのところだよ」

「その袋には何が入っているの?」

「ラムネケーキとキュラソーだよ。青くて綺麗でしょ? おじいさんの大好物なんだって」「青頭巾ちゃん、おじいさんはどこに住んでいるの?」

「森の奥。あと半分くらいかな。おじいさんのお家は、三本の大きな樫の木の下にあるんだよ。知ってる? はしばみの木がすぐ下にあるから、わかりやすいよ」

 と青頭巾は答えました。狼は、

 ――なんて柔らかそうで若い肉なんだ。なんておいしそうに艶めいているんだろう。美味そうだ。おれはうまくやって両方腹の中に収めてやらなきゃならん。

 と、心の中で考えました。

 狼はしばらく青頭巾のそばを歩いて、それから言いました。

「青頭巾ちゃん、見てごらん、このあたりの花はなんてきれいなんだろうね。ネモフィラ、デルフィニウム、あれはトゥイーディアだ。周りを見回してごらんよ。ほら、カワセミだ。森には小鳥たちもとてもきれいにさえずっているのに君はきいてないみたいじゃないか。君は学校へ行くみたいに真面目くさって歩いてるんだね 森の中は何でも楽しいのに」

 青頭巾は目をあげました。太陽の光が木の間からあちこちにおどっていて、花に陽の光が降り注いでいます。

「おじいさんに摘んだばかりの花束を持って行けば、それも喜んでくれるかな。まだ早いから、ちょっと寄り道しても大丈夫だよね」

 青頭巾は花をさがしに道から森の中へ走って行きました。一本摘むと、もっと向こうにもっときれいな花を花があるように見えてそのあとを追いかけ、だんだん森の奥へ入って行きました。




 その間に狼はまっすぐおじいさんの家へ走って行き、戸をたたきました。

「そこにいるのは誰だい?」

「青頭巾だよ」

 と狼は答えました。

「ラムネケーキとキュラソーをもってきてるんだ。戸を開けて」

「掛け金をあげてくれ。準備はできているのだが、私は今、手が離せなくて」

 とおじいさんは部屋の中から言いました。掛け金を上げると戸はパッと開き、狼は一言も言わないでまっすぐおじいさんの部屋に行くとおじいさんを一飲みにしてしまいました。

 それから狼はおじいさんの服を着て、帽子をかぶり、ベッドに寝てカーテンをひきました。

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